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2020年9月に発足した菅政権肝いりの政策となっている携帯電話料金の引き下げに関して、その実現に向けて早速、武田良太総務大臣が動きを見せているようです。武田大臣はすでに携帯大手のトップと意見交換をしたとの報道がなされていますが、2020年10月8日にはさらに消費者からの意見を聞くべく、携帯電話利用者との意見交換会を実施しました。

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▲武田総務相は2020年10月6日に携帯電話利用者との意見交換会を実施。主婦やシングルマザー、フリーランスなど5つの消費者団体と意見を交わしたようだ

武田大臣は2020年10月6日の記者会見で、「ひとり親家庭や主婦、地方在住、お年寄り、フリーランスの関係者の各界各層の方々の意見をしっかりと受け止めながら、的確・公正な市場競争が生まれるような環境を実現できるように今から励んでまいりたいと考えております」と話していたようです。そうしたことから意見交換会には、主婦やシニア、シングルマザー・ファーザー、フリーランスなど5つの団体の代表者が、消費者の代表として参加して意見を述べていました。

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▲意見交換会に登場した武田総務相。携帯電話料金引き下げに向け「国民にとって安く、分かりやすく、納得感のある料金・サービスの実現に向け先頭に立って取り組む」と話していた

筆者も当日、この意見交換会の取材に向かったのですが、内容は非公開とのこと。会の終了後、総務省の担当者からどのような意見のやり取りがあったのか説明がなされ、“消費者の代表”とされる人達が携帯電話の料金やサービスに対して、どのような不満を挙げているのか知ることはできたのですが、その内容を見ますと「携帯電話料金が高すぎてとても困っている」という意見は実はあまり多くなかった、というのが筆者の正直な感想です。

もちろん、「コロナ禍でZoomなどの利用が増えたため、通信費の負担が増えている」「低所得者が親子でスマートフォンを持つと1万円を超え、支払いを延滞すると信用情報にも引っかかる」など、料金に直接関連する意見もいくつか挙げられていました。ですが前者に関しては料金プラン変更や格安なサービスへの見直しなどで解消できる可能性がありますし、後者に関しては通信費ではなく端末代の分割払いの問題と混同していることも考えられ、現行の環境を大きく変える必要はあまり感じられません。

それよりむしろ目立ったのは、1つに料金プランの仕組みが複雑で分かりにくいという声。実際「最初安いと思って加入したが、キャンペーン終了すると料金が高くなってしまい、家計管理が難しい」「自分がどういうプランに入っているか分かりにくい。消費者に分かりやすい体系にして欲しい」などといった意見が挙げられていました。

携帯電話の料金が複雑だという声は古くからあるもので、なのであれば楽天モバイルのように、料金プランをシンプルにすれば解決するのではないかと思う人もいるかもしれません。ですが携帯電話業界の歴史を振り返ると、「複雑だ」と批判を受けて料金プランをシンプルにしても、消費者の多様なニーズに応えるべくプランや割引を増やし、結果としてまた複雑になってしまう、ということを何度か繰り返しているのです。

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▲楽天モバイルは月額2980円で使い放題というシンプルさを打ち出しているが、競争が激しくなるにつれ、今後もその料金体系を維持できるかは分からない

武田大臣は料金の複雑さや分かりにくさについて「印象的だった」と高い関心をよせていたようです。ですが料金の複雑化は、市場競争によって各社が少しでも料金を安く見せようとするがゆえに起きてしまうもの。市場競争を促進するという観点に立つと、実は非常に悩ましい問題だということも知っておくべきでしょう。

そしてもう1つ、筆者が非常に気になったのはスマートフォンのリテラシーの低さに起因する声です。「スマートフォンが前提となっており、対応できないと連絡するのも難しくなる」「スマートフォンを使ってオンラインで手続きができない事例がある」など、シニアを中心にスマートフォンを使いこなせないと困るといった意見が出たのは予想できたのですが、それ以外にもリテラシーに起因する不満がいくつかありました。

具体的には、「スマホのコンテンツで動画が自動的に再生され、知らない間にギガを食ってしまう」「無料通話アプリを使わないと通話料が安くならないが、その使い方が分からない」といったもの。スマートフォンに詳しい人であればこうした問題は起こりえないだけに、リテラシーの低さが無駄な通信費を生んでいるといえるでしょう。

さらにいえば、MVNOやサブブランドなど低価格の通信サービス自体は知っているものの、「格安スマホをどうやって契約したらいいか分からない」「(MVNOは)Wi-Fiを組み合わせてうまく使いこなす人もいるが、リテラシーが低い人だと厳しい。MVNOを勧められて契約したが、(大手のサービスに)戻した人もいる」など、やはりリテラシーに起因する問題から低価格サービスへの乗り換えがうまく進んでいない様子も見て取ることができました。

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▲MVNO利用者やスマートフォンに知識のある人なら馴染みのあるSIMだが、その使い方や存在自体を知らない人も、実は非常に多い

スマートフォンもアプリもMVNOもSIMもよく分からない……という消費者が非常に多いということは、日頃からスマートフォンの情報を追っている人達からすると実感しにくいかもしれません。ですが筆者がこれまで、主婦やシニア向けなど幅広いメディアの仕事を受けてきた経験からすると、こうしたスマートフォン利用者のリテラシーに関する問題が非常に大きいことは肌感覚として実感できるものです。

そして、この問題を解決するために求められることは、消費者のスマートフォンに対するリテラシーをいかに向上させるかであり、料金を安くすることではないことは明らかではないでしょうか。

そして現在、携帯電話ショップでスマートフォンの使い方相談に(長時間であっても)無料で対応する、シニア向けのスマートフォン教室を無料で実施するなど、携帯電話会社がその対応を一手に担っており、それが大きなコスト負担にもなっています。裏を返すと携帯電話会社が消費者のリテラシー向上にかけているコストを減らす、つまりサポートを有料化するか、あるいは行政やボランティアによるスマートフォン教室を全国で展開するなどの取り組みが進めば、必然的に携帯電話料金は下がっていくかもしれません。

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▲携帯各社はシニア向けのスマートフォン教室を無料で実施しているが、そのコストは我々の毎月の通信料から捻出されている

武田大臣には消費者の真のニーズとペインポイントを見極め、その上で料金引き下げを実現しやすくする環境作りに向けた議論を求めたいところです。


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