モトローラ・モビリティ・ジャパンは2020年10月26日、新しいスマートフォン2機種を発表しました。新機種の1つ「moto g9 Play」は、6.5インチディスプレイと4800万画素のカメラをはじめとした3つのカメラ、5000mAhのバッテリーを搭載しながら、2万4800円という低価格を実現するなど、従来の「moto g」シリーズを踏襲したお得感の高いモデルとなっています。

そしてもう1つの新機種「moto g PRO」は、6.4インチディスプレイに3つのカメラ、そしてスタイラスペンを搭載しているのが大きな特徴で、価格は3万5800円。主としてビジネス向けの利用を主体に販売される端末とのことで、製品保証を2年に延ばすなどより安心して利用できる仕組みに力が入れられています。

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モトローラが2020年10月26日、「moto g PRO」(左)と「moto g9 Play」(右2機種)の2機種を新たに投入。moto g PROは従来にない新しいカテゴリの製品になる

折しもモトローラ・モビリティ・ジャパンは、2020年7月1日に松原丈太氏が新たな代表取締役社長に就任したばかり。今回の新製品はある意味、松原氏の体制になって以降の本格的な新製品投入といえるでしょう。そこで松原氏に、新製品投入の狙いや日本での今後の取り組みなどについて話を聞いてみました。

2020年7月1日にモトローラ・モビリティ・ジャパンの新社長に就任した松原氏

松原氏が社長に就任した理由には、モトローラ・モビリティとして「日本が最重要エリアと判断し、チームを増強している」ことが背景にあるとのこと。前社長のダニー・アダモポウロス氏(現在はモトローラ・モビリティの、アジア太平洋地区主要市場のスマートフォンビジネスリーダー)は日本以外のエリアも担当していたことから、より日本市場にフォーカスした体制を取るため松原氏が就任するに至ったようです。

モトローラ・モビリティ・ジャパンはこれまで、ミドルクラスの「moto g」シリーズを中心に、SIMフリー端末の売れ筋となるコストパフォーマンス重視のラインアップに注力していた印象があります。ですが松原氏は、「それらとは全然違う、業界を活性化する面白い端末や、日本の顧客ニーズに合った端末にもチャレンジしていきたい」と話しています。

その松原氏の新体制による新しいチャレンジの第一弾となるのが、主としてビジネス向けとなるmoto g PROといえるでしょう。松原氏はビジネス向けの端末にフォーカスした理由について、「グローバルからすると、日本ではスマートフォンの法人向け市場開拓がまだ進んでいない」と答えています。

実はモトローラ・モビリティは、以前より法人向けのスマートフォン販売に力を入れてきた企業の1つでもあります。そうしたことから松原氏は、moto g PROの提供によって、日本でも法人向けの販売を強化していきたいとのこと。moto g PROはペンを搭載していることから、「指先だけでは難しいスマートフォン上での編集作業も、スタイラスペンがあれば重宝する」と、ペン操作による利便性がビジネスユースに刺さると考えているようです。

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「moto g PRO」は3万円台ながらスタイラスペンを内蔵し、ビジネス向け端末と位置付けられているが、ドルビーのステレオスピーカーを搭載するなどコンシューマー向けに適した機能も用意されている

しかも同社はパソコン、ひいてはITビジネスに強みを持つレノボの傘下にあります。そうしたことからレノボの法人営業チームと連携しながら、国内でもmoto g PROによって、幅広い業種に向けたビジネス向けスマートフォンの可能性を探っていきたいとしています。

 一方のmoto g9 Playは、やはり高いコストパフォーマンスを求める消費者に応える狙いが大きいとのこと。2019年の電気通信事業法改正によるスマートフォンの値引き規制などもあって、「消費者に端末価格が見えるようになり、値段と機能に対する目がよりシビアになってきている」と松原氏は話しており、コストパフォーマンスと機能のバランスが取れた製品は出し続けたいとしています。

「moto g9 Play」2万円台ながら大容量バッテリーとトリプルカメラを搭載するなど、コストパフォーマンスの高さが特徴となるモデルだ

実際現行モデルとなる「moto g8」シリーズも、価格と機能のバランスが評価され順調に売り上げを伸ばしているとのこと。最近では従来より安価な「moto g8 POWER LITE」「moto e6s」を投入していますが、こちらも市場ニーズの多様化が進んだことの影響を受け、人気が出ているようです。

ただ同社のラインアップは近い価格帯に機能・性能が異なる複数の商品があるため、選びにくい印象があるのも確か。実際moto g8シリーズを見ても、「moto g8」「moto g 8 PLUS」「moto g8 POWER」「moto g8 POWER LITE」と4つのモデルが存在しており、それぞれ違いがあるとはいえベースの性能や価格は比較的近いことから、消費者が違いを見出しにくい感があります。

松原氏は、同社が多様なニーズに応える上で、その時に最も適した製品を投入する方針であることからこうしたラインアップになっていると説明していますが、今後ラインアップをどのように整理していくか「検討している所」と答えています。一方で、従来はグローバルでの新機種発表から日本への投入まで時間がかかっていたことから、今後はよりスピーディーに新製品を投入していきたいとしています。

となると、折り畳みスマートフォンの新機種となる第2世代の「razr」の日本投入が注目される所ですが、松原氏は具体的な明言は避けたものの「出したいですね」とは答えていました。従来のモデルとは異なり高額になるためビジネス面では難しい部分もあると考えられますが、「そうしたことを恐れて縮こまっているよりは、チャレンジしてマーケットの反応を見てみたいと思っている」と、新たな取り組みには前向きな姿勢を見せていました。

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もう1つ注目されるのが、松原氏が日本のニーズに合った端末を提供したいと話していたことです。日本独自のニーズと言えば防水・防塵性能やFeliCaの搭載が考えられますが、特にFeliCaなどはハードウェアのカスタマイズを伴いコストがかさむことから、海外メーカーの多くが搭載を敬遠しているのも事実です。

そうした日本市場向け機能の対応について、松原氏は「テクノロジーも進化しており、徐々に土壌は整いつつある」と回答。明確な時期や内容は言えないとはしながらも、近いうちに何らかの日本市場に合った機能・性能を備えた端末をいくつか出したいと、意欲を見せていました。

また従来とは異なる新たなカテゴリへの挑戦を見据える上では、販路に関しても注目される所です。モトローラ・モビリティ・ジャパンは従来の課題だった販路の狭さを克服しつつあり、最近では多くの量販店やMVNOが同社製品を取り扱うようになっています。

松原氏も販路開拓は最重要課題の1つとしており、「量販店やMVNOだけでない、もう少しスペシャルな所へのチャレンジをしていきたい」と話していましたが、となると気になるのは大手キャリアへの端末供給ではないでしょうか。松原氏は「キャリアとはコンスタントに話をしているが、モトローラが消費者から支持を頂ける製品を出し、そうしたブランドになっていくことが大事」と回答するにとどまっていますが、値引き規制でキャリア側も低価格の端末を必要としており、参入のハードルは下がりつつあるだけに、同社の参入は大いに期待される所です。

モトローラはレノボ傘下となる以前には、キャリア向けに端末を供給していた実績がある。写真は2012年にKDDI(au)から投入されていた「MOTOROLA RAZR IS12M」

ただ最近では、オッポやシャオミなど中国の新興メーカーが、低価格で高機能の端末を投入することで日本市場も急速に存在感を高めています。松原氏はそうした企業らと切磋琢磨して業界を盛り上げていきたいと話す一方、「モトローラは(それら企業とは)異なるバックグラウンドとブランドバリューを持つメーカーだと思っている」とも答えていました。

モトローラ・モビリティは前身のモトローラの設立から92年の歴史があり、確立したブランドを持つことからそのバリューを生かして差異化を図っていきたい考えのようです。ただ若い世代にはモトローラブランドの馴染みが薄いだけに、製品だけでなくプロモーションにもさまざまな工夫が求められる所ですが、松原氏は「これぞモトローラ、という世界観を表現できる端末を出し、節目節目でプロモーションをかけて認知を高めていけたらと思っている」と話していました。

低価格帯スマートフォンでの競合は増えつつあるが、競争が松原氏は歴史のあるモトローラのブランドを生かして差異化を図る考えを示している

そしてもう1つ、今後の戦略を考える上で重要となるのは5Gへの対応です。モトローラ・モビリティは米国などでいち早く5G対応デバイスを投入していますが、国内向けにはまだ5G対応端末を投入していません。現在の主戦場であるSIMフリー市場では、MVNOの5G対応が進んでおらずニーズが少ないという事情もあるでしょうが、アップルが「iPhone 12」で5G対応を打ち出したことで、国内でも5Gが再び盛り上がりつつあることから、今後の5G対応が大きく問われる所です。

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そうしたことから松原氏は、「コロナ禍で国内の状況が変化しており、今後の状況を判断しているタイミングだが、5G端末は間違いなく来るもの。端末メーカーの1つとして5Gをリードしていかなければいけないことから、近々に出したい」と回答。そう遠くないうちに5G端末を投入する意向を示しています。

モトローラ・モビリティは米国での5Gサービス開始に合わせ、「moto z」シリーズ向けの5G対応moto modsを提供するなど、いち早く5G対応端末を投入した企業の1つでもある

モトローラ・モビリティの日本戦略はここ数年来、売れ筋モデルにフォーカスするなど競合他社と比べかなり手堅く、慎重な印象が強かったというのが正直な所です。ですが松原氏の発言からは、日本市場に向けよりコミットして多彩な製品を積極投入しようという意気込みが見られました。それだけに今後、同社のラインアップ拡充にはかなり期待が持てるのではないでしょうか。