格安SIMでかけ放題どう実現? 通話定額にこだわる理由は──日本通信・福田社長インタビュー(石野純也)

合理的かけほプラン投入

石野純也 (Junya Ishino)
石野純也 (Junya Ishino)
2020年07月16日, 午後 12:02 in news
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「This is good for the market」……日本通信の三田聖二会長が、心の中でこんなつぶやきをしそうな新サービスが始まります。

音声通話の完全定額を含んだ「日本通信SIM」の「合理的かけほプラン」がそれです。料金は2480円。ここに、完全定額の「かけほーだい」と、3GBのデータ通信が含まれます。1GBあたりの料金は250円で、3GBから30GBの範囲で、ユーザーが自由に設定でき、使ったぶんだけ支払う方式です。

とはいえ、データ通信が安いMVNOはほかにもあります。日本通信SIMが新しいのは、電話がかけ放題になるところ。他のMVNOや日本通信自身も使っている、中継電話サービスではなく、通常の音声通話が定額になるのが特徴です。そのため、「○○電話」のようなアプリをインストールしたり、利用者登録をしたりする必要もありません。

このサービスの背景には、6月30日に下された総務大臣裁定があります。日本通信は昨年、ドコモとの交渉が不調に終わっていたことを理由に、総務大臣裁定を申請。その結果が出て、音声通話の卸価格が下がる見通しになりました。裁定を受けた実際の卸価格はまだ出ていませんが、裁定日にさかのぼって適用されるというルールを使い、サービスを投入した格好です。では、なぜ日本通信は今、音声定額にこだわったのか。代表取締役社長の福田尚久氏にお話をうかがいました。

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日本通信SIM投入の狙いや背景を語った日本通信の福田社長

──まずは、日本通信SIMに関して特徴をお話ください。

福田氏:今まではb-mobileのブランドでやってきましたが、今回は日本通信ブランドで出すことになりました。日本通信という漢字を使うこともあり、プランも合理的かけほプランという名称です。これがどういうことかというと、うちが追求しているのは合理性です。料金が安いのは、あくまで結果として安くなっているだけで、高い方が問題だと考えています。鉄道、水道、電気はみんなそうですが、公共性が高いものは、合理的な値段で提供されています。その合理性を全面に出した方がいいということで、この名称になりました。

 料金は、かけほーだいと3GBのデータ通信を含めて2480円です。合理性の1つとして、1GBあたり250円でおかわりすることもできます。最大30GBまでいけますが、上限はユーザー自身で設定できるようにしていて、10GB以上使いたくないときは10GBとしていただければいい。実際のボリュームゾーンである7GBでは、3480円になります。

音声定額のかけほーだいと、3GBのデータ通信がセットになったプラン。データ通信は30GBまで増やすことができる

──通話定額にこだわった理由も教えてください。

福田氏:総務省の統計値を見ると、2/3強が携帯電話からの発信で、1日3時間以上の通話をしています。全体の数字を、実際に使っている8000万人ぐらいの数に直して計算すると、3時間強になります。なんだかんだいいつつも、まだまだ音声通話は使われています。ただ、キャリアのユーザーは、何らかの音声定額に入っていることが多い。ほとんどの方が従量課金だったらMVNOでも勝負のしようがありますが、そうではなかったため、MVNOが選択肢に入ってきませんでした。

店頭で、1カ月あたりどのぐらい使っているのかと聞かれても、答えられる人は少ないでしょう。そうなると、MVNOは高くなることもあれば、安くなることもあるとし答えられません。それが最大の問題で、販売店も提案ができなかったんですね。ですから、勧められてMVNOにしてはみたものの、思っていたより料金が高くなってしまったという方も実際にいます。むしろ、キャリアにいたままの方が安くなるという方もいます。請求額を見ると、ある一定の比率は1万円を超えています。

ですから、これなら確実に安くできるということをいえる料金プランを作りたかった。音声通話の卸料金についても原価ベースということになったので、こうした提案がでえきるようになりました。

──裁定には、「代替性があれば接続でもいい」とあることから、ドコモはプレフィックスを交換機側で付与する接続を押しています。この点で、まだ合意ができていないのではないでしょうか。

福田氏:あれは大臣裁定における将来の話で、そこについては肯定も否定もしていません。接続は、例えば他のキャリアから受け取る着信料を高く設定することで、かつてのソフトバンクのように、そこで儲けることができますが、それはそれでいかがなものかと思います。社会全体として見たとき、それが本当に合理的なのか。確かに着信料を高くすれば、対ユーザーの料金は下げられるかもしれませんが、そういったやり方はちょっと違うのではないでしょうか。

総務大臣裁定では、有効性が認められた場合、接続での提供に関する再協議を請求できるとの記載がある

──卸価格は安くなったとしても、ドコモから提供される際には従量課金になると思います。裁定では音声定額の提供も求めていましたが、そちらは却下されたなかで、なぜ今のプランを提供できたのでしょうか。

福田氏:それは、卸価格が原価ベースだからです。定額使い放題だと、コストは使う人がいれば発生します。これは飲食店の食べ放題も同じで、一部の人は支払った以上に食べていますが、コストが低ければ平均値を見て定額プランが作れます。うちが定額の卸を求めたのは、卸価格が原価ベースになっていなかったからです。原価ベースを認めないなら、その代替案として定額をくださいと求めたのであって、裁定事項1(卸価格の値下げ)が認められれば、2(定額の卸)はどちらでもいい。1が認められた時点で、自分たちで料金プランは作れます。

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日本通信はドコモに定額プランを卸すことも求めていたが、こちらは総務大臣裁定で却下されている

──厳密にいうと、卸価格に適正利潤を乗せられることになっていたかと思います。これで想定より高くなるということはないのでしょうか。

福田氏:多少のズレはもちろんあると思いますが、接続料(アクセスチャージ)が出ているので、そこから原価はある程度推計できます。差があっても、大きな影響はないぐらいだと思いますね。ガイドライン的に決められていて、適正利潤といってもあくまで設備投資の際に必要な資金調達のコスト程度なので、極めて小さくなるはずです。

──ドコモにとっての収益性という観点で考えると、卸価格を下げるよりも、むしろ定額の方がよかったのではないでしょうか。

福田氏:有識者会議では、音声定額は定価でいいといっていました。音声定額のユーザー向けの価格が1700円なのであれば、うちにも1700円で卸してくれればいいということです。確かに、その価格で卸すのであれば、収益的な痛手は少なかったのではないかと思いますが、抵抗されてしまったので、大臣裁定になりました。

──実際、このプランになって、音声通話はどのぐらい使われると見ていますが。

福田氏:それはまだ分かりません(笑)。ただ、うちはPHSのころからデータ定額を提供してきましたが、勉強になったこともあります。定額使い放題にしたとき、1人あたりで見ると、最初の月と6カ月後では、使い方が変わってきます。契約直後は大量に使うのですが、なかなかそれは続かない。これが高速なデータ通信だと逆になってしまいますが、128Kbpsでの使い放題だと、たかが知れています。それと比べたとき、音声については1人あたりの1日の時間は24時間と決まっています。半分は寝ていることを考えると、計算はしやすいですね。音声通話しながら、YouTubeは見ないですから(笑)。

今の投資はほとんどがデータ通信側で、それがずっと続いているので、総額のコストを見ても、データ通信の負担が大きくなっています。一方で音声通話はVoLTEに代わったことで、回線交換でもなくなりました。年末年始の発信規制もなくなりましたが、そのぐらいキャパは十分だということです。そこに規制がある時代なら、原価計算をしても高くなったのかもしれませんが、今は違います。

──日本通信も、プレフィックスを使った「b-mobile電話」を用意しています。これでダメだったのは、なぜでしょうか。

福田氏:アプリでも発信するのはいいのですが、かかってきた電話に折り返そうとすると、通常の音声通話になってしまいます。それが面倒で、せめて1つのアプリでいけないかということはずいぶんやりましたが、できませんでした。また、あの類のものは普通の音声通話に比べると、やはり音質が落ちます。ピーク時に音質が落ちるということがところどころあり、それだと、特に法人関係には受け入れられません。

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日本通信も中継電話サービスの「b-mobile電話」を提供していたが、使い勝手の面で課題があったという

──b-mobile電話はプレフィックスの番号を見る限り、ソフトバンクのサービスを使ってますよね。

福田氏:はい。秒課金でやらせていただけている関係もあって、ソフトバンクを使っています。ただ、あれよりも新サービスの方が安くなるので、こちらに切り替えていきたいと考えています。

──既存のSIMカードを使っているユーザーに、音声定額を適用するということはあるのでしょうか。

福田氏:やろうと思えばできますが、これはうちのプライオリティの問題です。新サービスができ、お客様に移ってくださいといって、色々なところで案内を出しても、なかなか移ってもらえません。そのため、どうしても後回しになってしまいますが、ご要望があれば、どんどん変えていきたいと考えています。

ただ、ユーザーセグメントを考えると、電話をそれなりに使う人は、そもそも今現在、MVNOのSIMをあまり使っていません。それは、定額がなかったからで、うちの平均的な通話時間も非常に短い。普通に使っていたら、高くなってしまいますからね。今のユーザーは、タブレットなどの2台目、3台目の方や、電話はLINEしか使いませんという方です。その人たちが移るかというと、ゼロではないとは思いますが、やはりセグメントは別だと考えています。

──今のユーザーとは違う、もっと電話を使う層を呼び込みたいということですね。

福田氏:例えば、親のケータイをこれで安くするというのもあると思います。普通の使い方をして安くなることが大事で、親世代ならデータ容量も足りるのではないでしょうか。お子さん用に、上限をセットして使うというのもあると思います。

──今後は、日本通信SIMとしてプランを広げていくような感じなのでしょうか。

福田氏:2つの方向性があります。キャリアには1000円違いで10分定額になるプランもありますが、あれが本当に必要なのかはまだ分かりません。そういうものを投入するかどうかはまだ決めていませんが、それが1つ。もう1つは、ある程度、大容量のプランです。大容量といっても、キャリアのように使い放題にするつもりはありませんが、20GB、30GBの料金をどう作るかです。別ラインで入れる方法もありますし、今のプランに10GBオプションのようなものを作る方法もあります。

最初にあれも、これも入っていると、ターゲットが不明確になってしまいます。ですから、今はデータ量がそこそこで、かけほーだいに入れる安心感を全面に打ち出していきたいと思っています。

 
 
 

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