「ahamo」など携帯3社の安価な新料金プランによって、窮地に立たされたMVNO。先週はそのMVNOから、相次いで新料金プランが打ち出されて注目を集めました。

最初に動いたのがオプテージが運営しているMVNO大手の1つ「mineo」で、2021年1月27日に新料金プラン「マイピタ」を発表しています。これまで同社の料金プランは、500MBから30GBまでの6つが用意されていた上、回線を借りている3社に応じて料金が違うという複雑な内容だったのですが、それを1GB、5GB、10GB、20GBの4つに絞り、どの会社の回線を選んでも同じ料金にするなどシンプル化して料金を引き下げたのが大きなポイントとなります。

MVNO Masahiro Sano
▲オプテージの「mineo」は新料金プラン「マイピタ」を発表。多岐にわたっていた料金プランを1〜20GBの4プランに絞り、シンプル化を図っている

その内容を見ると、例えば音声通話付きの5GBプランは月額1380円と、従来の3GBプラン(月額1510円から)から容量追加がなされて200円以上の値下げがなされていますが、より大きな料金の引き下げがなされているのが10GB、20GBのプラン。とりわけ20GBプランは1980円と、従来プラン(月額4590円から)より半額以上の値下げがなされているのに驚かされます。

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▲マイピタの詳細。音声通話付きの料金プランは5GBで月額1380円、20GBでは月額1980円と大幅な値下げを実現している

そして翌2021年1月28日には、ジュピターテレコムも「J:COM MOBILE」の新料金プランを発表。こちらもmineo同様、1GBから20GBの4プランを用意。料金水準も5GBプランが1480円、20GBプランが2480円と、やや違いがあるとはいえmineoに近しい水準に設定しているのが分かります。

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▲ジュピターテレコムの「J:COM MOBILE」も新料金プランを発表。こちらも1GBから20GBの4プランで、5GBプランは月額1480円、20GBプランは2480円となる

これにはもちろん、NTTドコモの「ahamo」やKDDIの「UQ mobile」の新料金プランなどの提供で料金水準が大きく下がってもなお、それらと差異化し競争力を維持できる水準の料金を実現する狙いが大きいといえます。ですがそもそも、MVNOが回線を借りる際に支払う接続料が劇的に変わっていない現状、料金を引き下げると経営の方が心配になってくるのも事実です。

ですがオプテージ側の代表取締役社長である荒木誠氏は、経営効率化に加え、今後音声通話の卸料金の低廉化がなされることを見越してこの内容でも黒字を達成できるとしています。またジュピターテレコム代表取締役社長の石川雄三氏も、新プラン提供にあたっては、今後の接続料や音声卸料金の引き下げを見越した上で、ギリギリの線で料金を設定したとしており、赤字覚悟というわけではない様子も見えてきます。

実際、MVNOである日本通信とNTTドコモによる紛争を受け2020年6月30日に実施された総務大臣裁定で、音声通話の卸料金は「適正な原価に適正な利潤を加えた金額を超えない額で設定する」という日本通信側の主張が認められたことから、今後MVNOが音声通話の回線を借りる際に支払う音声卸料金の大幅な引き下げが見込まれているのは確か。各社はそれを見込んで料金引き下げに動いたといえるでしょう。

ただそれでも、両社の20GBプランの料金引き下げ幅は大きくかなり思い切った措置を取ったように見えるのですが、そこにはビジネス面での工夫もあると考えられます。元々MVNOの主力は小容量プラン。mineoが具体的な数値を公表していたのでそちらを例に挙げますと、主力プランは3GBプランで契約数が6割を超えている一方、10GBプランの契約者は3.3%、20GBプランに至っては1%未満と極めてごく少数でだとしています。

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▲mineoの契約実態。主力の3GBプランが6割以上を占める一方、20GBプランは1%未満という状況だ

それゆえ各社は主力の3GBプランを5GBに増量するなどお得感を出したとはいえ、値下げ幅は最小限にとどめ損失を抑えたといえます。一方で20GBプランは元々契約者が非常に少ない上、ahamoなどが登場すればどのみち競争力がなくなることから、いっそ料金を大幅に引き下げて「5GBでは容量が不安」という人が上位プランに乗り換えやすくする、アップセルを狙い売上を伸ばす戦略に切り替えたといえるでしょう。

実は同様の施策は、かつて携帯大手が取っていたものでもあります。実際ソフトバンクは2016年に提供した「ギガモンスター」で、データ通信量20GBのプランを(基本料を除いて)従来の半額以下にしたことが話題となりましたが、これはまさに大容量プランのお得度合いを高めて下位プランの契約者を移行させ、売上を伸ばすことを狙ったもの。今回のMVNO各社の施策と非常に近しいものであることが分かるでしょう。

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▲ソフトバンクが2016年に「ギガモンスター」を発表した際は、5GBのプランに1000円を追加するだけで20GBの大容量通信ができることをアピール、上位プランへの契約を促し売上を高める狙いがあった

そうした戦略上の工夫によって大幅に料金を引き下げたように見せていますが、主力プランの引き下げ額が小幅にとどまっていることが、やはりMVNOの苦境を示しているといえます。荒木氏も混雑時の通信品質などでは依然差があることから、テレコムサービス協会MVNO委員会が総務省に緊急の措置などを求めた要望書には賛同の意向を示しており、環境が大きく変わらなければMVNOが苦しいことに変わりはないといえそうです。

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