ジュピターテレコムの運営するMVNOのJ:COM MOBILEが、音声通話定額オプションの「かけ放題(60分/回)」を発表しました。料金は、月額1500円。プレフィックスをつかった中継電話サービスではなく、通常の通話アプリを使った音声通話に適用されるのが特徴で、1回60分であれば何度でも利用可能。提供開始は、12月2日からになります。

▲J:COM MOBILEは、1回60分までの通話が定額になる「かけ放題(60分/回)」の提供を12月2日に開始する

MVNOのサービスをリニューアルした際に、第2世代iPhone SEを実質0円で提供するなどして話題を集めたJ:COM MOBILEですが、音声通話定額は5分までの「かけ放題(5分)」しかありませんでした。こちらは、850円と料金がリーズナブルなものの、5分を超えた際にの通話料は30秒20円。仕事で使ったり、家族や友だちと長電話したり、コールセンターによく電話をしたりといったユーザーには、5分だと、時間切れになってしまう可能性が高くなります。

これに対し、ジュピターテレコムの石川雄三社長は、1回の時間が60分まで延びれば、おおよそ99%の通話を定額の範囲内でカバーできると語ります。大手キャリアのような完全定額であれば、100%をカバーできますが、料金は各社とも1700円。60分という制限をかけたことによって、200円安い「1500円という価格を実現できた」といいます。

▲大手キャリアの音声定額は1700円。J:COM MOBILEは60分に制限をつけることで、200円割安にした。画像はドコモのもの

リニューアル後は「若年層の割合が増加している」(ジュピターテレコム広報部)というJ:COM MOBILEですが、絶対値で言うと、まだまだ比較的年齢の高いユーザーが多いのが同社の特徴。訪問までしてくれる手厚いサポートが功を奏した格好ですが、低容量プランを契約しているユーザーが多いことを考えると、音声通話へのニーズは高いはず。新たに投入するかけ放題(60分/回)とも、親和性が高そうです。

ただし、冒頭で述べたように、かけ放題(60分/回)は、いわゆる中継電話サービスを利用していません。MVNOの場合、音声通話はMNOとの卸契約になっており、ユーザーに対しては定額のプランを提示していても、MNOには従量で料金が発生してしまいます。つまり、使われれば使われるほど、利幅が減ってしまい、場合によっては赤字になってしまう可能性もあるということです。

▲中継電話サービスを使っていないため、専用のアプリなどは不要だ

また、MNOからMVNOに提供される音声卸の料金は、比較的高額です。J:COM MOBILEがメインで販売するKDDIの卸料金は「非公表」(KDDI広報部)とのことですが、ドコモはMVNOに対して回線数ごとに30秒14円から20円の料金を設定しています。MVNO各社の音声通話がおおむね30秒20円になっているため、卸料金はドコモと大差がないと見られます。

仮に30秒14円だとすると、1分間で28円。1人のユーザーが無料範囲の60分ギリギリまで通話してしまうと、それだけで1680円になり、かけ放題(60分/回)の提供価格を上回ってしまいます。そのため、1500円で1回60分までという音声定額は、「今現在としての採算はかなり厳しい」(石川氏)といいます。

にも関わらず、この金額を設定できたのは、「卸料金を下げる方向にある答申も出ているが、それを先取りした」(同)ためです。実際、総務省の公表したアクションプランには、音声卸料金の一掃の低廉化がうたわれており、各社とも、料金を下げていくことが考えられます。値下げを先取りして、思い切った定額プランを打ち出したというわけです。

▲かけ放題(60分/回)を提供できた理由は、音声卸の料金値下げが見えてきたためだと語った石川社長

MVNOの音声通話定額といえば、日本通信の「合理的かけほプラン」が思い出されるところですが、こちらも、同様に卸価格の値下げによって実現しています。合理的かけほプランは、アクションプラン策定前に登場していますが、これは、総理大臣裁定でドコモとの戦いに日本通信が勝利したためです。

▲日本通信の「合理的かけほプラン」も、音声卸料金の値下げを踏まえて投入されたもの。こちらは、3GBのデータ通信とセットで2480円だ

厳密に言うと、音声卸の金額が下がることは決まっていますが、いくらまで下がるのかは決着を見ていないため、見切り発車と言えば見切り発車なのですが、合理的かけほプランもデータ通信3GBとセットで2480円に設定されており、音声通話部分は大体1700円程度。極端に安いわけではありませんが、大手キャリアとほぼ同じぐらいの価格で提供できています。

LINEなどの音声通話アプリが普及する中、音声定額サービスがどこまで必要なのかは議論が分かれるところですが、サポートセンターなどのコールセンターや職場、学校などに電話する機会はまだまだあり、ゼロにはしづらいのが実情と言えるでしょう。音声卸の料金が下がることによって、中継電話サービスを介さない音声通話定額を導入するMVNOは、今後も広がっていくかもしれません。

▲総務省のアクションプランでは、音声卸料金の値下げにも言及されており、定額オプションを導入するMVNOが増える可能性もありそうだ