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空港の周辺で聞こえる騒音は、その大半がジェット機のエンジンによる轟音です。しかし航空機の翼、特に主翼における騒音も実は相当量発生しています。

航空機の翼で発生する騒音は、揚力面と操縦翼面の上で起こる複雑な気流によるもので、特に空気密度が高い低高度を飛行している際に最も大きくなります。翼が発生する騒音は近隣の住民を不快にするのは当然として、大きな音が出るほど抵抗も大きくなるため燃料消費を大きくする問題もあります。なお、多くの空港では航空機が発生する騒音の大きさに応じて着陸料を設定しているため、騒音が大きいと運用コストも高くなります。

NASAは、固定翼輸送機における革新的なエネルギー効率と環境適合性を研究するAdvanced Air Transport Technology (AATT)プロジェクトの一環として、航空機の翼が発生する騒音を最低限にとどめるための研究を行っています。

NASAの技術者は今年1月、翼からの騒音の発生のメカニズムを詳しく調べ、低騒音化する方法を得るためQuiet-High-Lift version of the Common Research Model(CRM-QHL)と称する新しい翼をデザインし、1/10スケールの亜音速風洞実験を実施しました。

テストモデルは航空機を縦に真っ二つに割った形状をしており、その断面を下にして風洞の床に配置されています。もう少しわかりやすく説明すれば、半分に割られたかまぼこ状の航空機の胴体から垂直に主翼がそそり立った状態で、この翼にフラップやスラットといった可動機構を本物と同様に再現、さらにジェットエンジン、格納式の車輪なども取り付けて、本物と違わぬ測定データを得られるようになっています。

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そして新しい翼のデザインアイデアは、形状記憶合金で構築されるスラットノイズ低減の概念の有効性を評価、実証することです。「形状記憶合金は、スラットが引っ込められたときにデバイスが収納するのに必要な比較的大きな変形を受けることを可能にします」と研究者は述べ「低騒音スラットは、空力、構造、音響性能を評価する小規模なテストと計算技術を使用して開発されました」と説明しました。

研究者は、1/10モデルによる実験結果の確認が終了すれば、さらに大規模な風洞実験に移行し、将来的に航空宇宙産業に採用可能な技術へとこの研究を発展させていく予定だとしています。

簡単な問題はすべてすでに解決されているとされる翼のデザインに関する研究ではあるものの、研究者によれば「計算技術と実験技術を組み合わせることで、まだ進歩を続け」られるとのことです。この研究が実用化に至れば、航空機の低燃費低騒音化がいまよりも進むことになりそうです。

Source:NASA