内閣府が公表している「高齢社会白書」によれば、2040年には65歳以上で一人暮らしの人が、女性では4人にひとり、男性では5人にひとりにまで増えるとのこと。孤独死を防ぐために今後注目を集めそうなのが、IoTを活用した見守りです。

NTTレゾナントが昨年3月に販売を開始した「goo of things でんきゅう」(以下、「でんきゅう」)も、高齢者の見守りを目的にしたデバイス。その名前の通りSIMが内蔵された電球で、ソケットに取り付けるだけでオン、オフの情報をクラウドに送信できます。見守る側は専用アプリからその情報をチェックできるしくみ。簡単にいえば、窓に明かりが灯ったのを見て安否確認をするのと同じことが、遠く離れていてもできるというもので、長時間つけっぱなし、24時間点灯なしなどの異常も知らせてくれます。

NTT Resonant goo of things Yuriko Ota
▲そもそもWi-FiがなくてIoT製品が使えない、設置&設定が大変という見守りIoT製品の2大悩みを解決する「goo of things でんきゅう」。ソケットに取り付けるだけでOK

そんな「でんきゅう」が最近AIによって進化を遂げ、新サービス「でんきゅうAIレポート」として提供開始されたとのこと。そもそもなぜ電球で見守りなのか、AIで一体何がわかるようになったのか、開発に携わったNTTレゾナント パーソナルサービス事業部 CA部門 主査の山岸貴道さんに聞きました。

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▲NTTレゾナント パーソナルサービス事業部 CA部門 主査の山岸貴道さん

──NTTレゾナントがなぜ、高齢者向けの見守り製品を手がけることになったのですか?

山岸:弊社では、モノを接続して新たな価値を作っていくIoTの自社ブランドとして「goo of things」を立ち上げました。IoTにはいろいろな切り口がありますが、我々は「新たな家族のつながりを創ること」をコンセプトに掲げています。その第一弾として昨年から、働く世代に向けた2つの製品、高齢の親を見守る「でんきゅう」と、子供を見守る「goo of things いまここ」という位置情報サービスを展開しています。

高齢者の見守りを手がけることになった背景には、日本の社会課題として独居老人が増えていることがあります。私自身もそうですが親と離れて暮らしている場合、親が高齢になって心配でも、できることはせいぜい電話をかける回数を増やすことぐらいですよね。もし見守りができるツールがあれば、そうしたコミュニケーションの課題も解決できる。安否確認ができるから余計な心配をしなくて済むというだけでなく、行動をゆるやかに把握できるようになることで、コミュニケーションにも役立ててもらえると考えています。

──見守りのためのIoTデバイスとして電球を選んだ理由を教えてください。

山岸:ドアのセンサーからカメラまで、これまで様々な見守りデバイスを検証してきました。その中で電球を選んだのは、とにかく設置が簡単だからです。高齢者の世帯だと家にWi-Fiがないというケースも少なくないですが、「でんきゅう」にはSIMが入っていて、通信環境もすでに内蔵されているので、電源さえ供給できればつながります。つまり電球を変えるだけでいいんです。

もうひとつの理由はプライバシーに配慮できることです。高齢者だけを対象にしたものではありませんが、以前カメラを取り付ける実証実験に協力を求めたところ、半分ぐらいの世帯が置きたくないという反応を示しました。海外ではまた違うのかもしれませんが、日本市場ではこういったゆるやかな見守りの方が、ニーズがあるんじゃないかと考えました。

最後にコストの問題ですね。「でんきゅう」はデバイス代が9800円(税別)で、月額料金が580円と、いろいろある見守りデバイスの中でも導入してもらいやすい価格を実現しています。これもシンプルな電球だからこそです。

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▲トイレに設置した「でんきゅう」から情報を取得。1か月分の点灯情報から行動パターンの変化を抽出して、日常生活機能の低下レベルを推定する

──今回、新たにスタートした「でんきゅうAIレポート」はどういうものですか?

山岸:これまでのように電球のオン、オフ情報だけでなく、さらにそのデータをAIを用いて分析して、日常生活に支障をきたすような健康状態に陥るリスクをご家族に通知します。単なる安否確認だけでなく、もう少し踏み込んだ情報を提供するのが、「でんきゅうAIレポート」という新しいサービスになります。

──電球のオン、オフ情報から、どのような日常生活機能低下のリスクがわかるのですか?

山岸:「でんきゅう」を生活動線上の重要な場所、たとえばトイレに取り付けた場合、オン、オフの情報からその方の生活サイクルが把握できます。同居の方がいるとまたデータも変わってきてしまうので、あくまでも一人暮らしの方が対象ですが、生活サイクルが把握できればそれが乱れたときに検知することができます。これを認知症発症の予見に生かせないかということを、ずっと考えてきました。

今回、介護施設を展開するユニマットRCさんの協力で、認知症の診断を受けている方、受けていない方に「でんきゅう」を使っていただき、その情報をNTTグループの「RakuDA」というデータ分析自動化技術で解析して、学習モデルを作りました。さらにAIによる学習と評価を重ね、トイレの利用状況の変化から日常生活機能の低下レベルを推定できるようにしました。この推定の結果、要注意の場合には専用のアプリにアラートが表示されるしくみです。

「でんきゅうAIレポート」の判定結果とコメントは、ユニマットRCさんと一般社団法人 熊谷健康政策研究所所長で九州大学名誉教授の熊谷秋三先生に監修していただいてます。ただ誤解がないようにしたいのは、これで認知症がわかるわけではないということ。判定ができるのはあくまでも「日常生活を送るのに支障をきたすような健康リスクの有無」です。判定結果をコミュニケーションに役立てていただき、高齢者の日常生活の維持や向上につながるようなサービスを目指しています。

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▲判定は「要注意」「特に異常なし」の2段階。今後は「要注意」の場合に、日常生活機能改善に向けたアドバイスも表示されるようにする計画だ

──今回、ユニマットRCと組むことになったのは、どのような経緯からですか?

山岸:今回の取り組みにあたって、複数の介護事業者さんとディスカッションをしたのですが、その中のひとつがユニマットRCさんでした。

介護事業者さんには人手不足という課題があり、現場では1人のケアマネージャーさんが多くの高齢者の方を担当されている。その中で効率性と質の高いサポートを両立する方法を、常に模索されています。また施設やサービスを利用する方だけでなく、ご家族とのコミュニケーションの質をいかに高めていくかという課題もあります。そうした課題に「でんきゅう」をどう活用いただけるか話し合う中で、今回のサービスの発想といいますかコンセプトが生まれ、そこから一緒に試行錯誤を重ねてきました。

──2月からは「でんきゅうAIレポート」の一般向けの提供も始まるとのことですが、今後このサービスをどう展開していく予定ですか?

山岸:月額料金が980円と従来の「でんきゅう」よりも高くなるので、ニーズは分かれると思います。すでに一部の介護・不動産事業者向けに先行してサービスを提供していますが、介護事業者さんや高齢世帯の定期巡回を行っている地方の自治体などでは、やはりより詳しい情報がわかった方がいいという声をいただいています。一方で、不動産会社さんなどは安否確認ができれば良いというケースもある。個人で利用される方も親の年齢だったり状況によってニーズは分かれるでしょうが、より詳しく把握しておきたいという声は一定数あると思っています。

さらに次のステップに向けたニーズとしていただいているのは、データの分析結果を深掘りするだけでなく、その気づきをもとにどう行動すればいいのか、アクションまで提案してほしいということ。21年度中には、日常生活機能の改善に向けたアドバイスまで提供できるようにしたい。そのためにもよりしっかりとしたエビデンスが取れるような、取り組みを進めていかなければならないと考えています。

──最後に「goo of things」として、今後どのようなデバイスに取り組んでいきたいですか?

山岸:もっと生活に溶け込んでいくもの、使っている方が意識せずに使えるものを目指したいですね。デバイスが見えてしまうと、使う側もやはりどこかで違和感を感じてしまうと思うので。使っている方が本当に気づかないくらい生活に溶け込むもの。まったく意識することなく、その裏でコンピューターが自発的に動いてくれるような、そういう世界観を大事にしていきたいと思います。

関連:

●goo of thingsでんきゅう

概要:https://got.goo.ne.jp/denkyu/

商品ページ:https://simseller.goo.ne.jp/item/NEWZKH0000000000GOT0100.html

●goo of thingsでんきゅうAI

概要:https://got.goo.ne.jp/denkyuai/

商品ページ:https://store.goo.ne.jp/products/qzx0021116