nuro Junya Ishino

大手キャリアから回線を借りる際の接続料や、音声通話に対応するための基本料が大きく下がったことを受け、1月から4月にかけ、MVNO各社が新料金プランを導入しました。会社によって料金プランの中身はまちまちですが、共通した傾向として挙げられるのは低容量の料金プランをグッと値下げしたこと。MVNOの主戦場で、かつ大手キャリアとの競合が少ない低容量プランを強化して、存在感を取り戻しつつあります。

ソニー傘下のnuroモバイルは、中でもリニューアルした新料金プランが当たった1社と言えるでしょう。7月15日に開催された発表会では、新料金プランの「バリュープラス」導入以降、新規契約者が大幅に伸びていることが明かされました。前年同期比での伸び幅は実に4.7倍。データは6月までの第1四半期ぶんを集計したものですが、「7月以降も非常に好調に推移している」(MVNO事業室室長 神山明己氏)といいます。サブブランドなどに押されていたMVNOですが、その勢いを取り戻していることがうかがえます。

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▲4月に新料金プランのバリュープラスを導入したnuroモバイル。写真の手前が神山氏

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▲新料金プランの導入で、新規契約者は4.7倍まで増加した

nuroモバイルが好調な背景は、やはり料金そのものの安さにありそうです。改めて解説すると、バリュープラスの最低料金は3GBで792円。LINEMOがMVNOや楽天モバイル対抗の「ミニプラン」を3GB、990円で導入しましたが、それよりも200円ほど安い料金を打ち出せています。また、「繰り越しができ、ギガ(データ容量)をプレゼントする機能もある」(同)ため、LINEMOとは単純な価格以外での差別化も図れています。

料金の安さは、上位のプランになればなるほど際立ってきます。料金は5GBで990円、8GBで1485円と元々安い上に、この2つのプランには「Gigaプラス」があるからです。Gigaプラスは3カ月に1回、それぞれ3GB、6GBのデータ量が追加される特典。有効期限が3カ月のため、実質的に毎月1GB、2GBのデータ容量が増える形になります。契約から3カ月経てば、5GBプランは実質6GBプラン、8GBプランは実質10GBプランになるというわけです。LINEMOの新プランはもちろん、他のMVNOと比べてもお得感のある料金と言えるでしょう。

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▲バリュープラスは、料金の安さが魅力。MVNO他社と比べても一段安い価格が設定されている

実際、nuroモバイルが実施したアンケートでも、「料金が納得できる価格であること」や「自分に合った容量のプランがあること」が上位に挙げられていて、バリュープラスが評価されていること分かります。旧プランと比べ、NPS(推奨度)も大きく上がり、ほかの人にオススメしたいサービスになったと言えそうです。3GB、792円という料金はMVNOの中でも一段安く、特に価格にセンシティブな層がnuroモバイルに移っていることが伺えます。

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▲サービス選択肢に重視することと、サービス内容が合致していたことが好評の理由だという

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▲旧プランと比べ、NPSの数値も大きく改善した

あまりに料金が安いと、確保している帯域とのバランスが悪化し、速度低下が懸念されますが、品質向上のため、nuroモバイルではAIによる自動帯域割当を実施しているといいます。ソニーで培ったAIの技術を生かし、確保している総帯域の中からnuroモバイルぶんの帯域を自動的に決めているとのこと。もちろん、総帯域が決まっているため限界はありますが、「従来よりも効率のいい帯域運用を行い、できるだけ価格に還元をしながら、コストと品質をバランスさせている」(同)といいます。

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▲ソニーのAIで通信量の増減を予測し、それに基づいて帯域を自動で割り当てている

そんなnuroモバイルが、次のステップとして強化するのが音声通話や5Gです。まず、音声通話に関しては、ドコモが提供しているオートプレフィックスに対応する予定を明かしています。対応時期は年内。オートプレフィックスとは、中継電話サービスを使うためのプレフィックスを交換機側で自動的に付与する仕組みのこと。現状では、スマホの端末側に入れたアプリでプレフィックスを付与してMNOの設備を迂回していますが、オートプレフィックスに対応すると、このアプリが不要になります。

簡単に言えば、nuroモバイルの提供している「nuroモバイルでんわ」がスマホの標準的な電話アプリで利用できるようになるということ。ユーザー側の視点で見ると、普通に電話をかけるだけで通話料が半額の30秒11円になるのがメリットと言えるでしょう。現状、オートプレフィックスに対応しているのはNTTコミュニケーションズのOCNモバイルONEだけですが、nuroモバイルもここに名乗りを上げた格好になります。

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▲ドコモ回線にオートプレフィックス機能を導入。nuroモバイルでんわアプリが不要になる

ただし、オートプレフィックスは、当初、ドコモ回線限定の機能になります。au回線やソフトバンク回線については、「キャリアから案内があってから具体的に検討する」(サービス設計課課長 亀井健男氏)と、まだ目処が立っていない様子。ドコモ、au、ソフトバンクの3キャリアから回線を選択できるnuroモバイルですが、しばらくの間は、ドコモ回線とそれ以外で音声通話の使い勝手に差が出ることになりそうです。

もう1つの5Gに関しては、秋までに対応する予定。MNOとの接続点がボトルネックになりやすいMVNOの場合、超高速通信の恩恵を受けられるシーンは限定的になりますが、そのぶん、nuroモバイルでは5Gに対応するための追加料金を不要にしています。5Gの料金に関してはIIJmioが無料、mineoがオプション料金を取るなど、大手MVNOの間でも対応が分かれていますが、nuroモバイルは現状の5Gで追加料金を取るのが難しいと判断したようです。

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▲5Gは秋までに対応する予定。料金は無料だ

新料金プランで勢いに弾みをつけたnuroモバイルですが、選択できる端末が少ないのは課題の1つと言えるかもしれません。元々バリエーションが少ないうえに、在庫切れが起こっているため、端末ごと回線を変えたいユーザーのニーズにこたえきれていません。同社は、かつてXperiaと専用帯域をセットにした「プレミアム帯域」を提供していましたが、グループ内で端末を開発しているソニーのMVNOならではの取り組みにも期待したいところです。