ソニーネットワークコミュニケーションズのMVNO、NUROモバイルは、1月6日から、「NEOプラン」に新サービスの「あげ放題」を追加しました。アップロードのデータ容量を無制限するサービスで、料金は無料。既存のユーザーには自動的に適用されます。

▲NUROモバイルが新たに導入した「あげ放題」。アップロードのデータ容量が無制限になる

NEOプランは、NUROモバイルが若年層をターゲットに打ち出した20GBプラン。料金的には大手キャリアのオンライン専用プランとほぼ横並びの2699円ですが、このプラン専用の帯域を用意しており、一般的なMVNOよりも通信品質が高いことを売りにしています。MVNOの水準で見ると料金は割高ですが、そのぶん、品質も大手キャリアに照準を合わせてきたプランと言えるでしょう。

「NEOデータフリー」として、LINE、Twitter、Instagramをゼロレーティングの対象にしているのも、同プランの特徴。ターゲットとする年代層のユーザーが頻繁に利用する通信がデータ使用量にカウントされないため、一般的な大手キャリアの20GBプランよりも使えるデータ量は多くなります。さらに、12月からは3カ月に1回15GBのデータ容量が付与される「Gigaプラス」にも対応して、容量での差別化も図っています。

▲NEOプランは、11月に導入された20GBの中容量プラン。専用帯域やSNSのゼロレーティングが特徴

毎月のように新サービスが追加されているNEOプランですが、あげ放題が追加されたことで、大手キャリアのオンライン専用プランとの違いがさらに明確になった印象を受けます。特に、モバイル回線で動画の配信をしているようなユーザーには、非常に割安な料金プランになりました。

“データ容量無制限”をうたう料金プランは大手キャリアにもありますが、いずれも割引適用前は7000円台前半。上りのデータ容量だけが多いユーザーにとっては少々割高。このようなユーザーにとって、あげ放題はうれしい新サービスではないでしょうか。

▲下りも含めた使い放題のサービスは大手キャリア各社が提供しているが、料金は7000円台前半。上りのみ無制限でいいユーザーには、割高になっていた

アップロードのデータ使用量がそこまで多くないユーザーにとっても、あげ放題の恩恵はあります。これまで上りの通信に使っていたぶんがカウントされなくなることで、下りのデータ容量が増えるからです。

モバイル回線は下りのトラフィックが圧倒的に多いのが一般的なため、下りに使えるデータ容量が一気に倍増するというわけではありませんが、20GBでギリギリだった人にとっては、ある程度余裕ができる可能性は高そうです。

MVNOのサービスという観点で見ると、アップロードの無制限化は大手キャリアから借りた帯域の有効活用ができるという点で合理的です。上記のように、モバイル回線は下りと上りが非対称的で、大きく下りに偏っています。そのため、ユーザーの規模に合わせた帯域を用意すると、上りの回線がスカスカになってしまいます。実際、お昼休みなど、ダウンロードが1Mbpsを切ってしまうような時間帯でも、アップロードはいつもと変わらない速度が出ていることが多々ありました。

▲MMD研究所が20年3月に発表したMVNOの通信速度調査。混雑時の速度低下が問題視されていた時期のデータだが、上りは各社安定していることが分かる

接続料が下がり、各社が帯域を増強した現在では、お昼休みとはいえ、1Mbpsを下回るほど極端に速度が低下することは少なくなりました。結果として、元々余裕があった上りの帯域は、さらにガラガラに近い状態になったと言えるでしょう。帯域が限られているため、使い放題のサービスを提供しづらかったMVNOですが、上りに関しては話が別です。

NUROモバイルが上りの無制限サービスを提供するのは、これが初めてではありません。同社は、Xperia向けの専用オプションとして、「Xperia限定プレミアム帯域オプション」を展開していました。これは、文字通り、一部のXperiaユーザーに専用帯域を提供するサービス。現行のNEOプランに近いコンセプトですが、ここにはアップロードが無制限になる「アゲ放題」も含まれていました。上りのトラフィックを増やすためのサービスは、以前から模索されていたというわけです。

▲NUROモバイルは、17年にXperia限定で「アゲ放題」を導入していた。写真は発表時のもの

あげ放題以外の事例では、トラフィックのほとんどが上りになる監視カメラ用回線を法人向けに提供するなどして、トラフィックの平準化を図っているケースがあります。IoTやM2Mなど、“機械の通信”で上りに特化したサービスは、さまざまなMVNOが提供しています。一方で、動画配信やオンライン会議など、コンシューマー向けのアプリケーションも出そろい始めています。そんな状況に合わせ、帯域の有効活用という発想をコンシューマー向けに応用したのが、あげ放題と言えそうです。

▲法人用で上りに特化したサービスは存在する。画像はIIJのIoT専用プラン

一方で、モバイルネットワークはその利用形態に合わせるため、上りより下りに多くの帯域が割り当てられています。例えば、ドコモの場合、5GだとSub-6はキャリアアグリゲーションで下り最大4.2Gbpsまで速度が向上していますが、上りは218Mbpsにとどまります。ミリ波接続時でも上りは480Mbpsで、下りの半分も速度は出ません。そのため、アップロードし放題を目的にしたユーザーがあまりに増えてしまうと、基地局側の混雑を助長してしまうおそれもあります。

ただし、これは大手キャリアの規模感で同様のサービスを提供したときの話。相対的にユーザー数が少ないMVNOであれば、ネットワークに与える負荷はそこまで大きくはならないでしょう。その意味で、あげ放題はMVNOならではのサービスと言えます。大手キャリアの値下げで、生存領域が小容量のサービスに狭まってしまったMVNOですが、NUROモバイルのような工夫の余地はまだまだありそうです。