光回線が新型コロナで需要増、通信速度が遅くなる理由をOCNに聞いた(佐野正弘)

モバイル回線にどう対抗する?

佐野正弘(Masahiro Sano)
佐野正弘(Masahiro Sano)
2020年07月31日, 午前 06:26 in ntt
0シェア
FacebookTwitter
OCN

新型コロナウイルスの感染拡大で政府が緊急事態宣言を発令して以降、自宅で過ごす機会が増えたという人がほとんどかと思います。それゆえ自宅でニュースや動画配信などのインターネットサービス、仕事をしている人であればWeb会議などテレワーク関連のサービスをする機会が増えたかと思います。

そこで利用が急増しているのが固定のブロードバンド回線です。外出が減ったことでモバイル通信各社はデータ通信の利用が伸びなかった、あるいは減ったとする事業者が多かったのですが、逆に光などの固定回線の利用は大幅に伸びているようです。

今回、「OCN光」などNTTコミュニケーションズが提供する固定回線向けのサービスを運営している、NTTレゾナントのパーソナルサービス事業部に所属する阪田麻里子氏に、新型コロナウイルスの影響による光ブロードバンド回線の利用状況変化や、通信速度向上に向けた施策について話を聞きました。

OCN
▲NTTレゾナントの阪田氏

NTTコミュニケーションズの「OCN」といえば、NTT時代を含めれば25年近くにわたってサービスを提供している、国内では最大規模を誇るインターネットサービスプロバイダー(ISP)。個人向けとしては現在、光回線とインターネット接続をセットにした「OCN光」や、NTT東日本・西日本の光回線サービス「フレッツ光」向けのインターネット接続サービス「OCN 光 with フレッツ」などを主に提供しています。

そしてOCNの各サービスも、新型コロナウイルスの影響を受けトラフィックが大幅に増えているそうです。NTTコミュニケーションズが公開している情報によると、新型コロナウイルの感染拡大以前の2月末時点と、感染拡大後の6月末時点とでは通信トラフィックが20%近く増えているとのこと。特に平日の昼間や夜間の伸びが大きいですが、週末も大きく伸びているようです。

OCN
▲OCNの平日トラフィック。2月末と6月末との比較では、昼間帯で17%、夜間で18%トラフィックが増加している

OCN
▲同じくOCNの土日のトラフィック。昼間帯で15%、夜間帯で16%と、平日ほどではないが大きく伸びていることは確かなようだ

トラフィックが伸びたのには、昼間であればテレワーク需要の増加、週末であれば動画の視聴などさまざまな要因が考えられます。ただ阪田氏によると、OCNでは元々ピーク時の2倍の容量を確保しており、必要に応じて設備増強もしていることから、トラフィックが増えたからといってネットワークが遅くなるようなことは起きていないそうです。

ですがそれでも、自宅の光回線が「遅い」と感じた人も多くいるかもしれません。阪田氏によるとその原因は大きく2つあるそうで、1つはネットワークの接続方式とのこと。

ISPはこれまで光回線を使ってインターネットに接続する手段として、電話回線でインターネットに接続するのと同じ手順を用いた接続方式「PPPoE」を用いていました。ですが最近では「IPoE」という新しい方式を用いるサービスが増えています。

IPoEは有線LANと同じ仕組みを用いてISPから直接インターネットに接続する仕組み。PPPoEでは通信するのにフレッツ網内のネットワーク終端装置(NTE)を経由する必要があり、接続する人が増えるとNTEが混雑することで通信速度が落ちてしまうのですが、IPoEではそれが不要となり混雑しづらくなるので、本来の通信速度を発揮しやすくなるのです。

ただIPoE接続ではIPv6に対応したサービスにしかアクセスできず、IPv4にしか対応していないWebサイトは接続ができませんでした。ですがこちらも最近ではIPv4の通信をIPv6の通信に見せかける「IPv4 over IPv6」という技術を使うことで、IPv4のサービスが利用できるようになっています。

OCN
▲PPPoE方式とIPoE方式の違い。PPPoE方式では必要だったNTEが不要になるなど混雑しやすい要因が減ることで、通信速度向上が見込めるという

そうしたことからISP各社は最近、PPPoE方式からIPoE方式への移行を進める動きが強まっているとのこと。阪田氏も、「PPPoEの設備は通信速度を見ても現在の使い方にマッチしていない。増設は現実的に厳しい」と話しており、OCNでもIPoE方式への移行を積極的に進めているのだそうです。

そのための施策として2020年6月11日に打ち出されたのが、従来個人向けには有料サービスの「OCN v6アルファ」契約者のみに提供していたIPoE接続を、OCN光などの標準サービスとして無料で提供すること。利用するにはルーターなどをIPoE接続に対応したものに変える必要があるものの、通信速度向上が見込める上に「PPPoE接続で必要だったIDやパスワードの入力が不要になる」(阪田氏)などのメリットもあるとしています。

阪田氏によると、OCNでも以前よりPPPoEのトラフィック対応に苦しんでいたことから、IPoE接続の無料化に向けた準備を進めていたとのこと。ですが新型コロナウイルスの感染拡大によってトラフィックが急増したことを受け、より早い段階でサービス提供をする必要があるとの判断に至ったのだそうです。

そしてもう1つ、通信速度を遅くしている要素は設備だと阪田氏は話しています。PPPoEからIPoEへと接続方式が変化しているように、固定通信の分野もさまざまな技術革新が進んでいるのですが、固定通信に用いている自宅のWi-FiルーターやLANケーブルなどは、一度導入したら買い替えることなく長年同じものを使っている、という人は少なくないことでしょう。

モバイル通信であれば、大抵の人は1〜3年程度でスマートフォンを買い替えることから、そのタイミングで新しい通信技術の恩恵を受けられるようになります。ですが固定回線はモバイルのように機器を定期的に買い替える習慣がないため、古い機材がボトルネックとなって通信速度が向上しないのだと阪田氏は説明しています。

とはいえケーブルの接続やWi-Fiの設定変更など、多くの手間がかかる固定回線の機器を入れ替えるのは大変だというのも事実。IPoE接続の無料化に関しても、機器を変える手間やコストを考えると「今のままでいいや」と判断してしまう人が少なからずいるのではないでしょうか。

そうした固定回線ならではの問題に対応する上では、やはりISP側が新しい機器への変更をいかにサポートしていくかが求められるでしょう。阪田氏も今回のIPoE接続無料化に当たっては、OCNの案内ページでNTTレゾナントが運営する「NTT-X Store」への導線を設けて対応機器販売をするほか、電話などのサポートなどでも導入に向けた対応をしていきたいと話しています。

OCN
▲「NTT-X Store」ではIPoE対応ルーターの特集なども組まれており、これらと連携することでIPoE対応ルーターの導入を促進していく方針とのこと

ただやはり、新技術導入のため機器の入れ替えに手間がかかるというのは、固定回線が抱える大きな課題といえます。「SoftBank Air」や「UQ WiMAX」などに代表されるモバイル通信を固定ブロードバンドとして活用するサービスは、そうした固定回線の弱点を狙ったものでもありますし、今後5Gが広範囲に普及すれば、理論値の最大通信速度だけを見れば固定とモバイルの差がかなり小さくなることから、一層モバイルにシェアを奪われてしまう可能性も出てくるでしょう。

OCN
▲ソフトバンクやUQコミュニケーションズなどはモバイル回線を用いた固定Wi-Fiルーターの販売にも力を入れており、固定回線のように工事や配線などが不要で導入できる手軽さを売りとして販売を伸ばしている

阪田氏は光回線はワイヤードならではの安定性が強みと話す一方で、「(通信速度などの)数字が本当にどこまで必要なのか。数字だけが上がるよりも、より顧客に適したサービスを提供できればと考えている」とも話していました。快適な通信環境を提供するのはもちろんですが、それだけにとどまることなく、固定回線ならではの特徴を生かせるサービスをいかにユーザーに提供していけるかが、固定回線の今後を占う上では重要なポイントになってくるといえそうです。

(訂正:2020/7/31 19:10)初出時にPPPoE方式では必要だったONUが不要になると記載しておりましたが、正しくはNTEです。訂正しお詫び申し上げます。なお、この訂正に伴う見出しの変更はございません。


TechCrunch 注目記事新型コロナのソーシャルディスタンスを支援するビデオチャットアプリ8選

 

新型コロナウイルス 関連アップデート[TechCrunch]

 

関連キーワード: ntt, network, news, gear
0シェア
FacebookTwitter