OPPO Masahiro Sano

2018年に日本市場に参入した後発のスマートフォンメーカーながら、2020年には携帯大手のKDDIやソフトバンクにも端末を供給するなど、急速に存在感を高めている中国のオッポ。それだけ日本で急成長を遂げた背景には何があったのか、オッポの日本法人であるオウガ・ジャパンの専務取締役である河野謙三氏に話を聞きました。

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▲取材に応えるオウガ・ジャパンの河野氏

BCNの調査によりますと、同社は3四半期連続でAndroidのSIMフリースマートフォンでシェア1位を獲得。ここ最近、SIMフリースマートフォン市場を中心に、好調な実績を残しているようです。それをけん引しているのは同社のミドルクラスのスマートフォン「Reno A」シリーズであり、日本市場に合わせFeliCaや防水などのカスタマイズを施し、なおかつ有名タレントを起用した大規模なプロモーションで注目を高めたことが知られています。

そして2021年6月から7月にかけ、その最新モデル「OPPO Reno5 A」が発売されており、こちらも販売は非常に好調に推移しているそうなのですが、河野氏によるとOPPO Reno5 Aの発売に際しては不安があったと話しています。

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▲「Reno A」シリーズの最新モデルとなる「OPPO Reno5 A」。防水・FeliCaの搭載に加え、新たに5Gに対応した一方、価格は税込4万円台に上がっている

それは価格です。実はReno Aシリーズは、初代の「OPPO Reno A」から前機種の「OPPO Reno3 A」に至るまで、いずれも税込で3万円台の価格で販売されていたのですが、OPPO Reno5 Aの価格は税込で4万3800円と、初めて4万円台の価格を付けているのです。それでも機能・性能を考慮すればコストパフォーマンスは高いように見えるのですが、過去の経緯から「価格に対するジレンマ、恐怖心があった」と河野氏は答えています。

オッポが日本市場で注目されるきっかけとなったのは参入直後の2018年、防水やFeliCaなどのカスタマイズを施したことで話題となった「OPPO R15 Pro」を投入して以降でしょう。OPPO R15 Proは同社の日本市場への本気度を示すモデルとして注目された一方、価格は約7万円と、SIMフリー市場向けとしては高額の部類に入ることからあまり売れず、「(オウガ・ジャパンの)経営を揺るがすレベルで苦しくなった」と河野氏は話しています。

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▲「OPPO R15 Pro」はオッポ初となる、FeliCa・防水のカスタマイズを施したスマートフォンだったが、7万円台とSIMフリー市場向けとしては高額だった

それが3万円台のReno Aシリーズを販売したことで急回復を見せただけに、なおさら今回価格を上げることにはかなりの不安があったとのこと。とはいえReno Aシリーズを立ち上げるに当たっては、10億円を超える投資と延べ200人以上の人材を日本市場のために投入したそうで、会社としてはかなりの不安があったようです。

そのReno Aシリーズは、先にも触れた通り日本向けのカスタマイズだけでなく、テレビCMなど積極的なプロモーション施策も成功を収めた要因となっています。なぜReno Aシリーズでプロモーションを積極化したのかという問いに、河野氏は日本市場参入後に経験した2つの失敗が影響していると話しています。

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▲オウガ・ジャパンは「OPPO Reno A」の投入を機として、タレントの指原莉乃さんを起用したテレビCMを積極的に実施している

1つは先に触れた通り、価格などさまざまな面で真のユーザーニーズをつかみ切れていなかったことですが、もう1つは「日本市場にコミットすると言いながら、コンシューマーしか見えていなかった」ためだと河野氏は話しています。河野氏によると海外でのスマートフォン販売はEコマースが主体で、購入の基準もスペックによるところが大きいそうですが、日本市場では販売店で実際に触れてから購入する人が多く、「店頭で見て触って購入した結果と、スペックが結びつく訳ではない」(河野氏)のだそうです。

それだけ日本市場では店頭での体験価値向上が求められていることから、販売店での体験価値を高めるバリューチェーンの構築に力を入れる必要があったとのこと。そして消費者だけでなく、販売店にも明確にブランドメッセージを伝える上でも、テレビCMの力が必要だったと河野氏は話しています。

とはいえ、規模が大きい訳ではい日本市場に向けて独自の取り組みをするとなると多額のコストがかかるだけに、外資系企業としては容易ではないのも確かなようです。例えばReno AシリーズはFeliCaだけでなく、防水性能にも対応していますが、オッポはそれまで世界的にも防水性能を持つスマートフォンを開発したことがなく、開発当初は品質管理テストの歩留まり率が非常に悪かったとのこと。本社からは「そこまでして防水が必要なのか」とまで言われたそうです。

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▲もともとオッポは防水対応端末の開発ノウハウがなかった影響もあり、初代「OPPO Reno A」はIP68ではなくIP67と、実質的には耐水・防塵性能にとどまっていた

そこでオウガ・ジャパンとしては、「相手のためになるならそれをやり遂げる」というオッポの本分の1つに触れ、防水性能があることが消費者にとって「安心して長く使える」といった意識付けとなっているとの説得を繰り返し、実現にこぎつけたとのこと。河野氏は「本分として正しいことであれば爆速でやる」と話しており、日本の動向を知る日本法人としての取り組みも、躍進には大きく影響している様子が伺えます。

河野氏は「OPPO Reno5 Aは、実は安いと思っていない。日本のスマホは高すぎると思っている」と話し、世界的に高いシェアを持つオッポの購買能力を生かして「グローバルスタンダードの価格を入れていきたい」としています。ですが一方で、日本市場では法改正で減少しているとはいえ、現在もなおiPhoneを中心に高額なハイエンドモデルが多く販売されている状況です。

そしてオウガ・ジャパンでも、オッポのフラッグシップモデルである「Find」シリーズを日本に展開しており、最新モデル「OPPO Find X3 Pro」もKDDIのauブランドなどから発売されています。それゆえ特に携帯大手向けの市場開拓をしていく上では、Findシリーズをもっと積極展開してもよいのでは?という印象も受けます。

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▲「Find」シリーズの最新モデルとなる「OPPO Find X3 Pro」は、10億色の表現ができるディスプレイとカメラ、そして最大60倍の顕微鏡カメラを搭載するなど、高い性能と特徴的な要素が多く盛り込まれている

ですが河野氏は、この点について「市場価値を無視して携帯電話会社寄りにプログラムを考えて売り込むことはやりたくないし、そういうことをやるメーカーではない」と答えており、無理にハイエンド寄りの製品投入にシフトする考えはないとのことです。

河野氏は今後も日本市場に向けて体験価値を重視した取り組みに注力し、「早くオッポに変えていればよかったという声を聞きたい」と、さらなるシェア拡大に意欲を示しています。ですが現状、シェア拡大ために欠かせないのは、携帯大手3社の中でまだ入り込めていないNTTドコモへの端末供給ということになるでしょう。

河野氏はこの点について、あくまで「NTTドコモの考え方次第」と答えています。ですがオウガ・ジャパンでは進出して3年のうちに大手のうち2社に端末を供給している実績から、製品の品質やサービスでは「日本の携帯電話会社が求める水準をクリアできている」と河野氏は話しており、供給への自信も示していました。

オッポが3年前に日本進出を発表し、携帯大手への端末供給を実現するとした時、その発表会場で記者からは「本気なのか?」という声が少なからず挙がっていました。河野氏はこの3年間の経験から、日本進出当初から携帯大手に製品を供給するのは「無理だった」と話していましたが、3年間で日本市場を学び、それを実際の成果へと結びつけたことが現在のポジションを獲得するに至った要因となっていることは、確かだと言えそうです。

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▲2018年1月、日本参入に向けた発表会を実施した際に登壇した河野氏。当時は参入に疑問の声も多く挙がっていたが、3年間の学びが現在の躍進へとつながっているようだ


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