NASA/ESA/STScI
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2017年に太陽系外から飛来し、またたく間に過ぎ去っていった謎の物体”オウムアムア”について、アリゾナ州立大学の研究者は、それが持っていた特異な特性の少なくとも1つはオブジェクトがまとっている窒素の氷の作用によるものだと主張しています。

天体観測史上初めて太陽系外から飛来した物体は、最初にハワイのPan-STARRS1天文台によって発見され、すぐに世界中の天文台がそれに注目し、様々な観測を行いました。オウムアムアは太陽の重力によって双曲線軌道を描くように通過していったため、おそらく二度と我々の前に姿を表すことはないと考えられます。そして、天文学者たちがそれを観測できたのはごく僅かな期間だけでした。

そしてその飛び去る速度は、単に重力にだけで説明できるものではないことから、彗星によく見られる”ロケット効果”が働いていると考えられました。ロケット効果とは彗星が太陽に近づいた際にの主成分である氷が気化して噴出し、彗星を加速させる現象です。オウムアムアでその現象らしきふるまいが見られたということは、それが氷でない小惑星のような物体でもあり得るという初期の示唆につながりました。

しかし、2018年10月にハーバード大学の天文学者Avi Loeb氏が発表した査読前の論文で、その物体の振る舞いがソーラーセイル(光子を受けて推進する太陽帆)であり、エイリアン文明によって意図的に地球近傍に送り込まれた探査船だとする、センセーショナルな結論を披露し、世界中に注目されることになりました。Loeb氏は今年はじめにその仮設をさらに進化させまとめた書籍を刊行、ベストセラーとなっています。もちろん、多くの科学者はその結論に同意せず、物体の色や光の反射率、サイズが人工物としては不自然だとして、異文明説は否定されています。

アリゾナ州立大学の研究者は「誰もがエイリアン文明に興味があり、太陽系外から飛来した物体が人々にそれを思い起こさせることは避けられなかった」としました。そして「しかし科学においては、結論に飛びつかず、我々が知っているすべての物事に照らし合わせて、矛盾しない自然な説明を導き出すことが重要です」と述べ、数年かかったものの、オウムアムアのロケット効果が窒素氷であることを理解したと述べました。

2020年に発表された別の論文では、オウムアムアがもとは大きな天体の一部で、その親となる天体との潮汐力で引き剥がされ星間空間に放出されたとの研究結果が示されました。そしてその元の天体が、冥王星に似た特徴を持っていた可能性があるとしています。冥王星は、海王星の衛星であるトリトンと同じように、凍った窒素で覆われています。

そして今回の論文では、オウムアムアもやはり固体化した窒素で構成されており、それが水の氷とは違うロケット効果の推進力を説明できるとしました。研究者らは様々な氷の種類、水をはじめアンモニア、水素といった様々な物質を当てはめて試算し、窒素氷がその計算に一致したとしています。さらに光の反射率についても、冥王星の表面を覆う窒素氷の反射率とオウムアムアの光反射率が近いことがわかりました。

研究者らは、オウムアムアの研究が太陽系とは異なる惑星系に関するあらたな理解をもたらしたとしています。そして、チリに建設される大型シノプティック・サーベイ望遠鏡のような新世代の天文台が稼働するようになれば、太陽系にやってきて通り過ぎていく物体をもっと多く発見し、「それがどのような材質で出来ているか、窒素氷の塊であることが珍しいのか当たり前なのかといった統計を取れるようになることが期待される」としています。「またその故郷となる惑星系が太陽系と同じような歴史を持っているのかどうかについても多くを学ぶことができるはずだ」としました。

Source:AGU
via:Ars Technica