NASA/Johns Hopkins APL/Naval Research Laboratory/Guillermo Stenborg and Brendan Gallagher
NASA/Johns Hopkins APL/Naval Research Laboratory/Guillermo Stenborg and Brendan Gallagher

NASAのParker Solar Probeは太陽の外部コロナを観測するため太陽系の中心へ向かった探査機ですが、2020年7月に行った金星フライバイの際に、その惑星の上層の大気内(高度約832km)を飛び、この灼熱の惑星から放射される自然の電波放射とみられる現象を受信していました。NASAは、この電波に関する研究結果を発表しました。

研究によると、太陽は活動周期(11年)ごとに磁場が反転し、北極と南極が入れ替わりますが、これによって金星の大気がどのように変化するかがわかったとのこと。また太陽表面の活動も周期的に活発化し、オーロラや電波障害など、地球にも影響を与えます。

Parker Solar Probeは金星の電離層を通過した際に搭載する磁場測定器”FIELDS”を使い、7分間のあいだ自然に発せられる低周波電波を受信しました。NASA ゴダードスペースフライトセンターのグリン・コリンソン氏は最初は金星からの新しいデータが得られたことに関して喜んでいましたが、翌日になってそれがガリレオ探査機が木星およびその衛星の電離層を通過したときに受信した電波に非常によく似ていることに気づきました。

さらにチームは、今回のデータを1992年にNASAのパイオニア・ヴィーナス・オービターが観測したデータとも比較しました。当時は太陽の活動が最も強くなっていたのに対して、今回は太陽活動がもっとも落ち着く時期を6か月ほど過ぎた時期で、この頃は薄くなった金星電離層大気成分が宇宙へ逃げて薄くなると考えられ、電波の受信はその影響を受けていることがわかりました。

コロラド大学ボルダー校の大気宇宙物理学研究所(LASP)の研究者ロビン・ラムスタッド氏は、「複数のミッションで同じような観測結果が続々確認されるということは、電離層の減少が実際に起こっていることを確信させてくれます」と述べています。

金星の電離層が太陽活動の極小期に薄くなる理由を解明することは、金星が太陽にどのように反応しているかを知る上で重要であり、かつては地球とよく似ていた金星が、どのようにして現在のような灼熱で有害な大気を持つ世界に変貌していったのか解明することにもつながります。

なお、NASAは金星で受信した電波信号を音声に変換したものを公開しています。

この研究では約30年の歳月が費やされ、金星へのミッションから最新の太陽へのミッション空のデータも利用されました。Parker Solar Probeの本来の目的は太陽の観測ですが、金星へのフライバイは太陽に接近する途中で探査機を減速させるために行われました。Parker Solar Probeのプロジェクト・サイエンティストを務めるNour E. Raouafi氏は「それでも、金星のような神秘的な惑星に接近するからには、そこで科学データを収集し、独自の洞察を得る機会を逃すわけにはいきません」と述べました。

コリンソン氏はこの研究をヒッチハイクに例え、探査機の金星フライバイに”便乗して”地球の双子の惑星の新しいデータや景色を手に入れようといていたと述べ、「いま金星を見るためには、このようなちょっとした機会が重要なのです」と述べています。

Source:NASA, Geophysical Research Letters