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パナソニック「AIR PANEL LED THE SOUND」開発者インタビュー。光と音のコラボで新たなライフスタイルを演出

音質と重量とのバランスに四苦八苦して生まれた最適解

Engadget JP Staff, @engadgetjp
2018年11月30日, 午前11:30 in ceiling light
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部屋の明かりというものは、設置する照明器具によってその部屋の性格だけでなく、そこで生活する人のライフスタイルさえも変えてしまうほどの力を持っています。昔なら蛍光灯がメインだったため、暖色系にするのか寒色系にするのか、調光できるようにするのか、どういうデザインのものにするかといった程度の選択肢でしたが、今やLED照明の時代。色は暖色から寒色まで自由に変化でき、明るさも調整できます。

そんなLED照明でも以前と大きく変わったのが、丸型にこだわらず自由度の高いデザインが取り入れられてきたこと。これによりさまざまな演出が可能となり、生活が大きく変化する可能性を秘めています。

今回紹介する照明は、さらにブラスαの要素である「スピーカー」を搭載させてしまった、パナソニックの「AIR PANEL LED THE SOUND」。パナソニック100周年事業のひとつに、引掛シーリングに設置するタイプのスピーカーが発売されていましたが、今回は照明とスピーカーのコラボが実現しています。

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光と音で室内空間を演出

AIR PANEL LED THE SOUND

「AIR PANEL LED THE SOUND」の特徴は、明かりとスピーカーがひとつになって、どちらもスマホでコントロールできるところ。横長タイプの本体に2枚のパネルが広がり、中心部の光とパネルによる柔らかい光とを組み合わせることで、さまざまな明かりを演出可能です。

本製品とスマホとをBluetooth®でペアリングし、専用のアプリ「あかリモ」を使って、自由自在に光のコントロールが行えます。細かく手動で設定することも可能ですが、「くつろぎ」や「だんらん」、「シアター」など、あらかじめ用意されているプリセットで、部屋のムードをガラリと変化させることもできます。

AIR PANEL LED THE SOUND

それに合わせてスピーカーからスマホ内の楽曲を流したり、ワイヤレス送信機「HK8900」※1をテレビにつないでテレビの音声を流したりと、音と光のコラボレーションを容易にできるのが本製品の魅力です。

搭載されているスピーカーは2基の3×9cmのコーン型フルレンジスピーカー。最大出力5W+5Wながら、バスレフポートを採用することで、低域から高域までバランスの良い音質が確保されています。このあたりはパナソニックが長年培ってきたスピーカー設計技術によるものでしょう。

近年、音楽を聴く環境は大きく変化してきました。昔ならラジカセやミニコンポといったオーディオ機器がリビングや部屋に1台はあったものですが、スマホで聴くことが主流となったため、イヤホンを使うことがほとんど。家族みんなで聴くという機会は激減しています。

そこで、この製品です。

設置するのは天井なので、スピーカーの設置場所を取ることはありません。スマホともワイヤレスでつながるため、いつでもどこからでも楽曲を流すことができ、家族みんなで聴けます。電源は引掛シーリングから供給されるので心配無用。天井から部屋中に音が広がるため、"ながら作業"でも心地よいサウンドが聴けるのです。

初の部門コラボでかなり苦労した開発秘話

そんな「AIR PANEL LED THE SOUND」について、パナソニックの商品企画 居相 徹 氏に開発のきっかけや苦労話などをうかがってみました。

AIR PANEL LED THE SOUND
▲パナソニック ライティング事業部 ライティング機器ビジネスユニット 住宅商品部 商品企画グループ コンシューマ商品企画課 課長の居相 徹氏


── そもそも「AIR PANEL LED THE SOUND」を開発しようとしたきっかけはなんだったんでしょうか?

居相 徹氏(以下、居相) 全社で100周年を迎えるにあたって、パナソニックにしかできないような製品を空間価値として考えていこうということになりました。いわゆるクロスバリューイノベーションという形で、垣根を越えていろんなものが混じり合いながら新しい価値をつくっていけたら、そんなところから始まっています。住宅内の色々な機器連携で何ができるかというアイデアのひとつとして、音と光の親和性というテーマが立ち上がり、オーディオと照明器具の融合が始まりました。

── これまで交流のなかった部門どうしが手を結び、新たな製品を生み出そうとしたわけですか

居相 はい。異なる部門がひとつの商品をつくるということで、その連携がとても大変でした。実際、開発してる場所も文化も違いますので。だからお互い戸惑うこともありました。その点については、我々商品企画より、開発陣の方がもっと苦労していたようです。例えば品質基準の考え方、それは当然照明器具と音響機器とでは違っていて、今回の場合は照明器具の基準を満たさなければならないということもあり、思いのほか大変でした。

── そんな中で開発がスタートしたんですね

居相 住宅の照明の歴史として、明るさだとか省エネ性だとか、明かりとしての基本機能を追求する時代がありました。その後、一般住宅でも間接照明やダウンライトが一般化される中で、複数の明かりを組み合わせていかに上質な空間を作り上げるのかが、最近のトレンドとなっています。

さらに明かりだけでなく音や空気を組み合わせ、照明の枠を越えて、お客さまの生活をより快適に、こういった生活ができますよという提案みたいなところまで提供していきたい考えが背景にありました。

AIR PANEL LED THE SOUND

── 住空間全体を考えているわけですか

居相 まずは光と音、いままでは別々だったものを組み合わせることで、例えば食事のシーンだとかくつろぎのシーンだとかテレビを見るシーンだとか、さまざまな生活の中で、新たな提案ができるのではと。
今回の製品は、前年に発売した「AIR PANEL LED」がベースになっていまして、Bluetooth®接続で複数の照明器具を一括制御できます。そこへスピーカー搭載の製品を仲間入りさせることで、より上質な空間ができるのでは、と考えました。

── スマホで簡単にさまざまな光の空間を演出できるのは便利ですよね

居相 はい。お好みに応じてより細かい明かりの設定ができ、そこへ音も組み合わせた格好です。昔は結構立派なオーディオセットをどんと鎮座させて本気で聴くスタイルが主流でしたが、いまはもう、自分で選んでコンテンツを買うより、ストリーミングで"ながら聴き"みたいスタイルがすごく増えてきています。

それってどういう環境かなって考えると、例えばホテルのロビーだったりカフェだったり、そういった心地よい空間で、心地よい音楽が流れている状態なのかなと。それをひとつの目標値として、光と音で空間が満たされる、そんなイメージのコンセプトでスタートしました。

試作段階ではしょぼかった音がみるみる良くなった


── 音楽はよく聴きますが家で聴く機会は減っていると思います

居相 そうです。ぶっちゃけた話、スピーカーを置く場所って困りますよね。でも天井なら誰も触らない場所なので、スペースが有効に使えるという感覚でした。ところが、実際設置して聴いてみると、すごく心地いいっていうのがわかったのです。そこから発想が広がっていきました。

── 実際に聴いてみると、しっかりと音に広がりが感じられますね

居相 実は試作段階でありきたりのスピーカーを付けてみたら、"わさわさ"する感じだけであまり音が良くなかったんです。改良を重ね、空間全体に音が広がるような設計を目指していくことで、どんどん良くなっていきました。

通常のスピーカーは壁際や棚に置き、そこから真っすぐに音が広がっていきます。だから正対して聴くと非常にきれいな音が聴こえますし、この製品に搭載されるスピーカーより高性能なものは世の中にたくさんあります。ただ、リスニングポイントが限られてしまいます。

── たしかに映画ならともかく、音楽を鎮座して聴くことはあまりないですよね

居相 そうなんです。"ながら聴き"だと空間のどこにいても、一様に良い音が聴こえる環境のほうが好まれるだろうと感じ、天井に設置したスピーカーなら空間全体に音が広がると考えました。

── 音が広がる工夫というのはどういうところなんでしょう

居相 ひとつはスピーカーの角度。12畳までの空間で基本的にスピーカーは下へ向けなければならないですが、12.5度傾けることによって、ベストな音の広がりが感じられることがわかりました。

AIR PANEL LED THE SOUND▲下面に対して12.5度斜めに取り付けられたスピーカー。この角度が音の広がりをもらたしている

── その角度はいろいろ試されたんですか?

居相 そうですね。従来の製品で同じように天井に付けるものは、真下や真横に向いています。真横に向けると低音への影響はあまりないですが、高域音が反射音になってしまい、よく聴こえなくなってしまうんです。そうなるとスピーカーは真下に向いていたほうが好ましい。そのうえで、音の広がりが感じられるポイントを探すのに大変苦労しました。

── この製品の重要なポイントですよね

居相 打ち合わせのたびに音が良くなっていくので、オーディオ開発部隊の執念をすごく感じました。オーディオの開発部隊は相当なこだわりようです。

── それは心強いですよね

居相 今、国内で照明器具とオーディオの両方をやってるメーカーはほとんどないんです。その点で、パナソニックはどちらも作っていますし、それぞれ長い歴史があり、しっかりしたものが作れるというのが当社の優位点だと自負しています。そうなると、やっぱり性能も妥協できません。

── スピーカーも独自のものを開発されたんですか?

居相 そうですね。音質面もですが、実は天井の配線器具である引掛シーリングは、簡易施工の場合の重量制限が5kg以下になっています。この製品のベースになった照明だけの「AIR PANEL LED」が既に4kgあったので、単純計算だとオーディオ部分で残り1kgしか使えないという制約がありました。

── 音質面を考えると、それは結構厳しい要求ですよね

居相 高性能で軽量なネオジウム磁石を使ったり、ハウジングの部品を軽量化したりと、いろいろダイエットをした結果、4.9kgというギリギリになんとか収まりました。

── 照明側はダイエットしていないのですか?

居相 ベースモデルが決まっていたので、照明側で軽量化できる部分はほとんどない状態。そのためスピーカー側での頑張りが必要でした。あと、重量だけでなく、サイズでもかなり制限を受けています。スピーカーは大きければ大きいほど音が良くなるのですが、天井になじんで、インテリアとしてもシンプルなものが好まれる傾向にあるので、さりげなく目立たないようにしています。

いかにスピーカー自体をコンパクトにしつつ音を良くするかも結構苦労しました。低音を出すために、バスレフポートを最適な形状と長さに設計するところも工夫したポイントです。BGMとして聴くには非常に高い評価をいただいております。

AIR PANEL LED THE SOUND
▲スピーカーにネオジウム磁石を採用し、低音が響くようにバスレフポートも。高音質化を果たしている

── コンパクトでなおかつ良い音を追求するというのは大変なことでしょう

居相 それから、ミキシングを通して音の調整をしました。入力された音を左右へ完全に振り分けるのではなくオーバーラップさせることで方向性をわからなくし、ステレオでの音の広がりが感じられつつ、どこで聴いても同じように良い音で聴こえる工夫もしています。

想定外の需要があったテレビとの接続

── なるほど、そういった努力の賜物というわけですね

居相 あと、当初は心地よいBGMと明かりというのがコンセプトだったのですが、実はテレビの音をこのスピーカーを通して見ると、臨場感や包まれ感があってすごくいいことに気がつきました。特に映画やライブ、スポーツ観戦などには効果的です。そこで、テレビと接続するユニットも合わせて開発しました。

── ワイヤレス送信機「HK8900」※1がそれですね

居相 そうです。イヤホンジャックに、この送信機を接続することで、テレビの音をスピーカーに飛ばせます。このユニット、発売後に新たな発見がありまして、お年寄りに大変好評だったんです。

AIR PANEL LED THE SOUND
▲テレビの音を飛ばせるワイヤレス送信機「HK8900」※1。同梱版も用意されている

── テレビの音が聴こえやすくなると?

居相 もともとは共働きの夫婦をメインターゲットにしていたのですが、意外とシニアの需要が多いことがわかりました。あと、空間全体に音が広がることで、リビングにあるテレビをつけたままキッチンで調理作業をしていても、このスピーカーだと音が広がるので、リビングにいるのと同様にしっかり音が聴こえるというメリットもあります。

── 意外な効果があるんですね

居相 そうですね。個々のライフスタイルに合わせ、さまざまな使い方ができる製品になっています。ただ、実際に体験していただかないと、その効果がわかりづらい部分もあります。実際に体験会を開いてアンケート調査をしてみたのですが、それほど興味なかった人でも体験後に欲しいという回答が得られました。スペックだけでは測れない部分があると思うので、それが今後の課題ですね。

AIR PANEL LED THE SOUNDAIR PANEL LED THE SOUND
▲Bluetooth®用のアンテナ。白いほうがサウンド用で、透明な方が照明用

パナソニック独自の導光パネル技術

── 照明に関しては、両サイドにある透明な板が特徴的ですね

居相 はい。導光パネルと呼ばれているものですが、かなりノウハウをもった部材になっています。弊社の導光パネルには、微細プリズム方式と、シルクスクリーン方式の2種類があり、AIR PANEL LEDのものは微細プリズム方式です、微細プリズム方式は、透明のパネルに細かい凹凸をつけることでこのパネルから光を照射する方式。この方式のメリットは、プリズムの角度によって光の向きをある程度制御できる点です。

もうひとつのスクリーン方式というのは、透明の板に印刷を施すことで、その印刷面に光を反射させる簡易的なもの。こちらは反射だけなので、光の制御ができません。テレビやパソコンのバックライトや、あまり明るさが必要ではないプロダクトに使われています。しかし、照明器具としてとなると、発光効率が高い微細プリズム方式のほうが有効になってきます。

弊社の場合はパネル自身の透明度をすごく大切にしており、透明感のあるものが光るところにこだわってものづくりしてます。ただ、これを実現するには相当大変なんです。

AIR PANEL LED THE SOUND
▲導光パネルの技術説明。微細なプリズムがパネルに刻まれている

AIR PANEL LED THE SOUND
▲導光パネルのパネルの写真。光らせると刻まれているプリズムがわかるが、見た目は透明

── CDのプレスと同じですね

居相 そうです。3〜4年ずっとこういうことやっているので、かなりノウハウが蓄積されています。他社と比べての優位な点と言えるのではないでしょうか。

── なるほど、だからパネルが透明なのに光るわけだ

居相 透明にすることで、存在感自体がなくなっていくので、よりシンプルかつスタイリッシュなデザインが実現できます。いままでの丸型シーリングライトから脱却し、デザイン的なイノベーションができたかなと思っています。

── 光の演出としてかなり効果がありますよね

居相 はい。片側だけ照らすこともできるので、たとえば、ホームシアターで臨場感求めて部屋を暗くしてご覧になられる方も多いと思いますが、テレビの画面は輝度が高く、映画館のスクリーンよりもまぶしいので、目が疲れてしまいます。そこでテレビの背面に光を当てることで、壁とこの画面とのコントラスト比が縮まるので、目が疲れにくくなる効果があります。

AIR PANEL LED THE SOUND
▲導光パネルのみ光らせることもでき、この光がテレビの背面にある壁を照らすことで、画面とのコンサラストを抑制できる

── 確かに雰囲気的には暗い中で見られるので臨場感も味わえますね

居相 BGMを聴くときとかは、家族の集いみたいなので、あえて真ん中だけ点けて、両サイドはつけないことによって、中心感が生まれます。キャンプファイアで、火を囲むようなイメージですね。そういうほんわかとした雰囲気もつくれます。さまざまなシーンをこの照明だけでつくれてしまうのです。

AIR PANEL LED THE SOUND
▲光の色も暖色系にして、センターだけ光らせると、家族との団らんを演出できる

── LEDならではの演出ですよね。白熱灯から蛍光灯になって、いまはLEDが主流となり、デザイン的な照明器具が続々と登場しています

居相 そうですね。自由度がすごく高まりましたよね。蛍光灯はモジュールがあるので、デザインの方向性が固まってしまいます。LEDは小さいチップの集合体なので、組み合わせしだいでさまざまなことが可能になりました。LEDの光は直接当たると結構まぶしいのですが、この導光パネル技術を使うことで柔らかい光に変える効果もあります。ただ、それだけでは、部屋中を明るくするのは難しいので、センターの明かりも足して、それらを組み合わせ、使い分けて、いろんな生活シーンに合わせた明かりがつくれます。柔軟性がかなり広がったと思います。

── それだけ自由度が高くなったということは、昔に比べて照明づくりが楽しくなったのでは?

居相 やることはかなり増えましたが(笑)。蛍光灯は照明器具として作れる範囲って決まってるわけです。しかしLEDは自由なだけに、どう料理するか、そこを考えるのが重要になりました。そのためゼロベースの開発とかも結構多いので開発自体の難易度も上がっています。導光パネルもそのひとつですね。

── 今後目指したい製品は考えていますか?

居相 空間を構成する要素は、ほかにもあります。なので音と光だけにこだわらず、さまざまな複合価値みたいなものを目指していきたいですね。ただ組み合わせたらいいものができるわけではありません。どういう提供価値があるのかというところから新しいものを考えていければ。それこそ、家一軒丸ごとできるのが弊社の優位性でもありますので。

── 確かに住宅建材や住宅メーカーもありますしね

居相 そのとおりです。なので、そういうのを活かしながら新たな価値をつくっていけたらと思う一方、今回の音と光の連携という製品もまだまだやることいっぱいあります。IoTへの対応というのも、その課題のひとつですし、もっと違った光と音のあり方みたいなこともまだあるので、今後は検討していきたいと思っています。

AIR PANEL LED THE SOUND

住まいの中で照明は重要な存在です。その照明がイノベーションにより新たな提案をもたらす「AIR PANEL LED THE SOUND」は、今後の主流になるかもしれません。スマホのアプリで操作できる「LINK STYLE LED」は、アッパーライトやフロアライトなどのラインアップがあり、組み合わせて一括コントロールが可能。より演出的なライティングで過ごせるので、合わせて組みわせるのがオススメです。

自宅への導入はもちろん、実家にプレゼントして両親への親孝行にも使えるのではないでしょうか。

※1 HH-XCC1288A、0888Aのみワイヤレス送信機が同梱されています。

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