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popIn Aladdin――存在が意識されない究極のデバイスへ

デバイスはバックグラウンドに溶け込んでいく

佐々木俊尚
2018年11月22日, 午前11:57 in Android
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究極のユーザインタフェイス(UI)は存在が意識されないUIであると言われているのと同じように、究極のデバイスというのは存在が意識されないデバイスである。その意味で、このpopIn Aladdinは、存在しないデバイスへと一歩近づいている。

外部の配線がなく、シーリングライトと液晶プロジェクタが融合している。天井の照明をオン・オフするのと同じ感覚でリモコンを使って液晶プロジェクタを操作し、しかもNetFlixやYouTube、Spotifyなどのアプリを自在に呼び出すことができる。

設置の「気軽さ」に驚く

従来の家庭用プロジェクタは使うたびにいちいち出し入れしなければならず、電源の取り回しや投影の微調整なども必要だったのに比べれば、この気軽さには驚く。
popIn Aladdin見た目は完全にシーリングライト

家庭用プロジェクタとの比較だけではない。テレビ受像機と比べるとどうだろう。テレビには大きな液晶画面とベゼルがあり、リビングルームの中での存在感は非常に大きい。しかしpopIn Aladdinは天井にまるで「潜んでいる」ようで、部屋の中に入って見渡しただけでは、この製品に気づく人は少ないだろう。

popIn Aladdin
「どこにもいない」のに美しい映像を放つ

しばらく前から、日本でもスマートスピーカー市場が盛り上がってきている。Amazon EchoやGoogle Homeなどの製品が有名だが、これらのスピーカーは今もなお「スピーカー然」としていて、そこに製品として存在している。だから私たちはAmazon Echoに向かって「アレクサ」と呼びかけて指示を与えている。

しかしアレクサに話しかける時に、いちいちスピーカーに向き合う必要はもはやないはずだ。たとえば私の仕事部屋ではAmazon Echoはデスクの背面にある書棚に収まっている。音声で指示する時に、いちいち後ろを振り向いたりはしない。宙に向かって「アレクサ」と呼びかけるだけだ。

popIn Aladdin
精度の高い音声認識機能を搭載

Amazonは最近、Plant Prefabという住宅建設企業に出資して話題になった。Amazon Echoの端末があらかじめビルトインされた住宅を作ろうとしているのではないかと言われている。いずれはアレクサのような音声認識技術は住宅と一体化し、建物の中のどこにいても「アレクサ」と一声かければ、どこからともなく返事が戻ってくるということになるだろう。

アンビエントコンピューティングの第一歩

これはアンビエントコンピューティング(環境化したコンピュータ)の第一歩でもある。デジタルが住環境と一体になっていけば、コンテンツや検索結果、各種の環境操作など私たちが望んだものがすぐさま得られるようになり、デバイスそのものはバックグラウンドの中に溶け込んで見えなくなっていく。

popIn Aladdin
スマホ感覚でコンテンツを楽しめる

映像や音楽のコンテンツもアンビエント化していく。コンテンツのサプライ側は、NetflixやSpotifyなどのストリーミングが普及したことで事実上無限になり、コンテンツは一気に環境となった。しかしこれらのアンビエント化したコンテンツを楽しむためのデバイスはまだ確固とした存在感を持っている。デマンド側はアンビエントになっていないのだ。

popIn Aladdinを使ってみると、それは液晶プロジェクタであるのにもかかわらず、頭上のデバイスの実体を感じさせない。大画面の映像がどこからも投影されていないのに、忽然とリビングの壁面に現れたような錯覚を覚えるのだ。これはまさに、アンビエントの感覚である。

popIn Aladdin
対面型と同化型の融合が新しい可能性を拓く

アンビエントに関連して、デバイスには「対面型」「同化型」があると私は捉えている。従来からある情報通信デバイスの大半は、人とデバイスが向き合う対面型だ。人は目の前にデバイスがあることを意識し、スクリーンをマウスやキーボード、タッチなどで操作する。しかしスマートスピーカーやウェアラブルデバイス、VR/ARなどのデバイスの多くは対面型ではない。ユーザーがデバイスと一体になり、自分の身体の延長であるように使う同化型なのだ。

歴史を振り返ると、アナログ時代の道具というものはほとんどが同化型だった。スコップも鉛筆も箸も刀も、みんな同化型である。対面型は、表示部分があるものに限られていた。具体的には方位磁石や定規、そろばん。だから、レンズを使って視野を拡張する双眼鏡やフィルムカメラが同化型だったのに、液晶モニタが装備されたデジカメは対面型に変わったのだ。

popIn Aladdin
「姿」が見えるのは、スマートなリモコンのみ

過去のデジタル化は、表示部分を追加することによって同化型のデバイスにも対面を持ち込んだ。しかしアンビエント化される未来には、デバイスは存在を意識しない同化型へと回帰していかなければならない。その視点から捉えてみると、液晶プロジェクタを装備し大画面を見るという対面型でありながらも、そこに同化的なUXを持ち込んでいるpopIn Aladdinという製品の立ち位置はきわめてユニークであり、映像デバイスの新しい可能性を示唆しているように思えるのである。



popIn Aladdin
佐々木俊尚
毎日新聞社、アスキーを経て、フリージャーナリストとして活躍。公式サイトでメールマガジン配信中。著書に『レイヤー化する世界』(NHK出版新書)、『キュレーションの時代』(ちくま新書)、『家めしこそ、最高のごちそうである。』(マガジンハウス)、『自分でつくるセーフティネット』(大和書房)など。

関連キーワード: android, ceiling light, popinaladdin, projector
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