第1回au未来研究所ハッカソンリポート:身に付ける未来のコミュニケーションツールを作る(前編)



au未来研究所とEngadgetがタッグを組んで10年後のコミュニケーションツールを作り出す"研究開発"をする「au未来研究所ハッカソン」が始まりました。※第3回のハッカソン参加者を募集中です

au未来研究所で研究するのは「衣食住」。第1回目はそのうち「衣=身に付けるもの=服、アクセサリー、メイク、着る、履く……」をテーマにスマホと連動する開発ボード「konashi」を使ってIoTガジェットを作ります。現役大学生から営業職まで幅広いスキルの26人からどんなアイデアが生まれるのでしょうか。

「衣食住」のIoTガジェットを作ろう

au未来研究所ハッカソンは 2日構成のIoTガジェット作成イベントです。Day 1はハッカソンのレクチャーを受け、アイデア出しをします。アイデア出しで開発ボードを使ってどんなガジェットを作るかを決定。2週間後のDay2までにプロトタイプを形にし、プレゼンをおこないます。



第1回の技術サポートおよびアイデア出しの講師は、小林茂さん(情報科学芸術大学院大学[IAMAS]産業文化研究センター[RCIC]教授)、松村礼央さん(karakuri products 代表。東京大学先端科学技術研究センター 人間支援工学分野 特任研究員。工学博士)、ユカイ工学の青木俊介さん(ユカイ工学代表)が担当。イメージインプットはKDDI研究所の新井田統(にいだ・すまる)開発マネージャー(ヒューマンセンターデザインプロジェクト)と上向俊晃(うえむかい・としあき)研究主査(工学博士、HCD=Net認定 人間中心設計研究家。ユーザーインターフェースグループ)が担当しました。また、Day1では濱野智史さん(批評家、リサーチャー、アイドルグループ「PIP」総合プロデューサー)もau未来研究所の特別研究員ゲストとして来場、中間発表について講評しました。

 

"スマホの次" を探る:未来のコミュニケーションツールとは




au未来研究所は、通信手段のスタンダードになったスマホの次、10年後の未来で使えるコミュニケーションツールを発明するオープンラボラトリー。KDDI研究所の付帯組織として生まれ、生活者や外部の専門家と共創するのが目的です。

これまでの研究成果はアニメ『もう一つの未来を。』と、未来の携帯電話アイデア「PHONE VENDING MACHINE」。PHONE VENDING MACHINEは携帯電話を携帯しない未来を予測し、その未来での携帯電話は「必要なときだけ、必要なウェアラブルデバイスを自動販売機で購入するもの」であり、ずっと手元においておくものではないと定義しました。

 

第1回Day 1:「衣=身に付けるガジェット」とは何か



au未来研究所ハッカソンはモノづくりに興味のある人なら誰でも参加可能なイベントです。例えば開発ボードを触ったことのある人が集まってガジェットを作ったら、詳しい人だからこそ新しいアイデアが出てこないかもしれません。事務局が重視しているのは「できるだけ幅広いバックグラウンドを持った参加者とハッカソンをする」こと。今回もWebフロントエンドやインフラ系エンジニア、現役大学生、衣服について勉強している大学院生などが参加しています。

Day1概要の説明に続いて参加者が1人ずつ自己紹介していきます。どんな仕事をしているかを話す人、興味があることを話す人、自慢のガジェットを披露する人などなど。自己紹介後にグループ分けし、アイデアのヒントになるような会話をしてもらえるようにランチタイムを取りました。 

13時15分〜15時半:アイデア出しからアイデアスケッチを通してアイデアを具体的に表現する



Day1の作業スタート前に、具体的な作業の進め方とハッカソンにおける注意点を小林さんが説明します。


モノづくりの行程には段階があり、製品化までたどり着くには多くの時間と労力が必要です。今回のハッカソンはグループごとに0(潜在状態)だったアイデアを掘り起こし、まとめてスケッチすることで具体化。Day2で1の段階であるコンセプトモデル(プロトタイプ)を発表することが目標です。

アイデアに不正解はありません。聞いたことのあるような内容でも古いと感じることでも正解です。グループで作業、共有することで発展し、決められた制約の範囲内で時間を過ごすことで自由な発想を生み出すきっかけを作ります。


作業スタート。「衣」のテーマをベースにしたガジェットを「だれ:どんな人が使うのか」「いつ:どんな時に使うのか」を思いついた順に付せんへ書いていきます。この時大事なのは思いついたら深く考えないで書き出していくこと。



どんな人に、どんな時に使ってほしいのか。使ってもらいたいのかを最初に考えると、アイデアにリアリティが生まれます。



利用シーンと想定ユーザーの書き出しが終わったら「だれ」が「いつ」のマトリックスが書かれた用紙にふせんを貼り付けて分類。あいまいな内容はこの段階で修正し、この中からアイデアの基礎となる「だれ」と「いつ」をグループで2つ選びます。



選んだ2つの利用シーン、利用ユーザーに合うガジェットのアイデアを1つずつイラスト化します。この時、光ったり動く場所をオレンジに、影になるところをグレーに塗ることで完成時の形や動きをより具体化します。また、「どこ:どんな場所で」は自分で考えたものを加えて説明書きを作ります。




イラスト化ができたらグループのメンバーに説明してアイデアを共有します。共有が終わったら壁やボードにイラストを貼り出し、各自が良いと思うアイデア3つにふせんを貼ります。貼られた付せんが多い、少ないに限らず、結果を確認してなぜそのアイデアが良いと思ったのかをディスカッションして、アイデアを統合したり発展させます。

30分のディスカッションを経て、グループで採用するアイデアを1つ選びます。

16時〜17時半:サンプルコードでkonashiを動かす。konashiでできることを確認し、アイデアからプロトタイプのイメージをふくらませる



konashiを実際に動かし、プロトタイプの動きや機能のイメージを掴みます。まずはkonashi.jsをインストールしたiPhoneまたはiPadをkonashiの連動デバイスにします。



次に、GROVEシステム(電子部品を統一した外形の基板に実装し、決められたケーブルで接続するだけで使える状態にモジュール化した製品のこと)を採用したkonashi GROVE拡張ボードとkonashiを組み合わせて準備。GROVE拡張ボードにスイッチ、ボリューム、光センサー、LED、バイブレーター、タッチセンサーを着脱しながらコードコミュニティサービスjsdo.itに公開されているサンプルコードを順に実行していきます。



konashiのGROVE拡張ボードにはインプット/アウトプット用のPIOの0〜7、AIOの0〜2があります。基礎編で以下の5つをテストしました。
  • デジタル入力、出力を体験する(ボタンでのON/OFF、LEDを光らせる、タッチセンサーでON/OFF、バイブレーターを震わせる)
  • アナログ入力でPWM出力を変化させる(ボリュームつまみまたはLEDで画面のメーターを変化させ、LEDの明暗を制御する)
  • アナログ入力に対して閾値を設けて出力を制御する(光センサーに当たる光を調整して画面のメーターを変化させ、LEDの明暗を制御する)
  • 電波強度を計測する
  • サンプルコードをカスタマイズする




ボリュームつまみをひねる、戻すの動作で電流を変化させています。スイッチやセンサーを変え、コードを実行するだけで簡単に動作するkonashi。LEDが発光したり、バイブレーターがぶるぶると震えたりしただけで、会場は大興奮です。

17時半〜18時:アイデアスケッチとkonashiの動作を元にコンセプトスケッチとペーパープロトタイプを完成させる。「どのような動き」で「どのようなサービスやシステムを使うのか」を細かく定義




プロトタイプ制作に入る前の最終段階であるコンセプトスケッチとペーパープロトタイプを完成させます。アイデアスケッチで決めた「だれ」「いつ」「どこ」に加えて「どんなもの/サービスで」「なぜ」「どのようにして使う/経験するか」「何を組合せて」「どのようにしてつくるか」の5要素を定義することで、スムーズに以降の作業を進められます。また、ペーパープロトタイプを作ることでぼんやりしていたガジェットの形を具体化でき、良い点と改善点が明確化します。




最後の難関がこのコンセプトスケッチです。アイデアをあいまいにせず、自由な発想は大切にしっかりとグループディスカッションを重ねて1つのスケッチを作り上げます。

複数の候補があるため、それを1つに絞ることも、絞った後に追加の5要素を満たさないなど問題も出てきます。困っている班には講師やアドバイザーがディスカッションをスムーズにするためのヒントを出したり、どんなことに躓いているのか確認しながら答えが出るようにガイドしていきます。





笑顔でディスカッションする班も、白熱して真剣な顔になっている班も、30分の持ち時間ぎりぎりまで作業を続けます。ついディスカッションに熱中してしまい、スケッチとペーパープロトタイプの作成が手付かずの班が出てきました。



複数の候補を整理して1つにまとめながら、コンセプトも明確にするのはかなり難しい作業になったようです。0(潜在状態)から2週間後のDay2で1の段階であるコンセプトモデル(プロトタイプ)を発表するまでには見えないながら多くのステップがあります。

Day 1:中間発表でチームのアイデアを共有。方向性と実現性を検証していく

18時:アイデアスケッチとペーパープロトタイプを共有してフィードバックや追加アイデアからプロトタイプ制作の準備をする

各チームが選んだアイデアを発表し、講師とau未来研究所の皆さん、au未来研究所特別研究員濱野さんから出た技術的なアドバイスやアイデアを受けます。中間発表で共有された各班のアイデアはDay2の最終発表記事までのお楽しみです。

中間発表への講評と「動く」プロトタイプの完成を目指して、具体的なアドバイスがありました。



濱野さん:各班のアイデアスケッチを見て回ったら、恋愛を題材にしたアイデアが多く見られた。少子化社会において、ときめき・恋愛を支援するIoTはとても素晴らしいものだ。ただ、発表されたアイデアの中にはどんな時に使うのかまだ具体的ではない、あるいはどこでも使えそうでぼんやりしているものがあった。もう少しシチュエーションを絞るとより良いアイデアになるだろう。

また、想定していない需要を狙う「余裕」を作っておくのも良い。例えば本来ビジネスマン向けのポケベルは、なぜか高校生にウケて一気に広がった。そのような想定していない需要はあるはずなので、その広がりを感じるような内容にしてはどうだろうか。

上向さん:発表されたコンセプトスケッチの中に、今まであまり見たことがない物を活用するアイデアがあった。人の感情を表現するアイデアだが、人には表のモードと裏のモードがある。身に付けるガジェットだからこそ、その2つのモードに配慮することが大切になることもあるだろう。見せること、見せないことを明確に定義すると広がりが生まれるかもしれない。

小林さん:断片的なアイデアとしては面白いものが沢山ある。また、チームごとに最後に1つだけ選んだが、それ以外にも面白くなる可能性のあるアイデアが沢山出ていると思う。もう少し膨らませて統合することができればかなり面白いものになりそうなので、一発芸的なもので満足せずに、さらに深いものにするべくがんばってほしい。

青木さん:今回のテーマである「衣」は、すなわち何かの動作が起きた時"直感的で体に覚えさせる”手段になるのかもしれないと可能性を感じた。その手段はバイブレーターで振動させるたり、引っ張られる動作や、LEDによる光なども考えられる。少し手段を検討してみてはどうだろうか。

松村さん:面白いアイデアが多く、楽しかった。皆さんのコメントにもあるが、まだコンセプトが落とし込めていないもの、逆に可能性が狭まっているものがあった。また、「これならばこんな使い方も面白いのでは」と発想が膨らむものもあり、2週間後どのように変化しているのか期待している。
Day1からの作業は、Day2で動くプロトタイプを作ること。完璧なサービスモデルを思いつくことも重要だが、まずラフで単機能もいいので作って実際に体験してみるということも念頭に置きながら進めると良いかもしれない。

2週間後の9月13日までに持ち帰ったアドバイスやアイデアをFacebookグループでディスカッションしながらプロトタイプの完成まで作業を進めます。Day2で身に付ける新しいIoTガジェットのプロトタイプはデビューできるのでしょうか。※第3回のハッカソン参加者を募集中です
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