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バンダイナムコスタジオとEngadget 電子工作部によるIoTガジェット製作体験イベント「エンターテインメントのチカラで、未来を見せる」がいよいよ始動しました。7月18日(土)には「夢」をテーマに第一回を開催。ガジェット製作は引き続き8月9日(日)をゴールに進んでいます。

ここでは7月17日(金)にバンダイナムコスタジオで開催された「Day 0」、ゲーム体験&開発者トークセッションの模様をお伝えします。

バンダイナムコスタジオ x Engadget電子工作部ハッカソンでは、『パックマン』や『ゼビウス』、『ギャラガ』に『ディグダグ』などバンダイナムコエンターテインメント往年の名作ゲーム17タイトルのIP(キャラクター、グラフィックや音楽などの知的財産)を活用して、これまでにない新しいガジェットを製作します。そのためまずは対象になるゲームタイトルに改めて触れてみよう、オリジナルの開発者からビデオゲーム黎明期のお話を直にうかがい、創作のヒントを見つけようという企画が今回のDay 0です。

 

「カタログIPオープン化プロジェクト」×「ハッカソン」

会場はバンダイナムコスタジオ社内のカフェスペース。普段はバンダイナムコスタジオの社員が休憩などに普通に利用されているところです。入ってすぐにトークセッションの会場(登壇者と参加者の距離が近い!)、奥にはゲームタイトルが体験できるよう、ファミコン、PC Engine、PlayStationなど家庭用ゲーム機とディスプレイが用意されています。

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金曜日の19時という社会人にはちょっと厳しい時間にもかかわらず約30名の参加者を迎え、イベントはオンタイムで始まりました。

はじめにバンダイナムコスタジオ未来開発部の堤康一郎さんから今回のイベントの趣旨についての話がありました。そもそも、どうしてこのハッカソンイベントを開催しようとしたのかというと、エンターテインメントの世界にもオープンイノベーションの動きを取り入れようと考えたからだといいます。

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堤康一郎さん

ちょうど今年、バンダイナムコエンターテインメントは、バンダイ・ナムコ統合10周年記念企画として「カタログIPオープン化プロジェクト」を開始しました。この施策は、『パックマン』や『ゼビウス』、『マッピー』、『ギャラガ』から『源平討魔伝』まで古典的名作17作品のIP(キャラクター、グラフィックや音楽などの知的財産)を「オープン化」して、二次創作を盛り上げていこうというチャレンジングなもの。

この「カタログIPオープン化プロジェクト」と、短期間でガジェットなどを作成するハードウェアハッカソンを掛けあわせる試みとして、バンダイナムコスタジオ x Engadget 電子工作部イベントが発足しました。

テーマも第一回「夢」など敢えて漠然としたものにし、ハードとネットを組み合わせることで何が飛び出すかわからないところに期待している、ぜひクリエイティビティを発揮して欲しいとのことでした。

今回のハッカソンイベントにつきっきりでフォローしてくれる講師のバンダイナムコスタジオ未来開発部の高子佳之さん、NE戦略部の豊田淳さんからも挨拶。今回、「一緒に発見をしたい」という高子さんは、普段はソフトウェアや先端技術を中心とした新しい企画、製品開発が本業です。Engadget電子工作部の常連で経験豊富な豊田さんからは、テーマが夢ということから、こんなのこれまでなかった、といえるおもしろいものを作ってくださいという激励がありました。

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高子佳之さん​

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豊田淳さん​

 

ビデオゲーム黎明期の開発秘話が止まらない! 開発者トークセッション

いよいよ開発者トークセッションです。ゲストは、バンダイナムコスタジオから岡本進一郎さん、兵藤岳史さん、遠山茂樹さん、そして日本を代表するゲームデザイナーのひとり遠藤雅伸さん。遠藤さんのナムコ時代の代表作『ゼビウス』『ドルアーガの塔』はカタログIPオープン化の対象にもなっています。遠藤さん、現在は日本ゲーム文化への評価およびその底上げを目指した研究活動、執筆、講演なども活発です。

遠藤さんが遅れているとのことで、まずバンダイナムコエンターテインメントのレジェンド、岡本進一郎さん、遠山茂樹さん、兵藤岳史さんの自己紹介から始まります。

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左から兵藤岳史さん、遠山茂樹さん、岡本進一郎さん

岡本さんは1979年入社。『ポールポジション』シリーズ、『ゼビウス』、『スターラスター』、『ワルキューレ』シリーズ、『ナムコミュージアム』、『テイルズ オブ』シリーズ、『ゴッドイーター』など、伝説的なゲームを数多く手がけたプロデューサー。ナムコ時代の遠藤雅伸さんの先輩、上司にあたります。レジェンドな経歴にもかかわらずさらっと終わった自己紹介に「はや!」との声が上がると、「ぼくはヤン・ウェンリー派だから」とひと言。

遠山さんは遠藤さんと同期の1981年入社。デザイナーとして『ゼビウス』『サンダーセプター』『スターラスター』のキャラクターデザイン、『ファイナルラップ』『ウイニングラン』のロゴと筐体デザイン、『スティールガンナー』の筐体デザインに始まり、ステアリングホイールと銃が両方付いている『ラッキー&ワイルド』、特別筐体の大人数シューティング『ギャラクシアン3』、ゲームデザイナーとして、『ガンバレット』、実際に自転車を漕ぐ人力飛行機ゲーム『プロップサイクル』、『パニックパーク』の企画なども手がけています。

ナムコのロボットやテーマパークといった立体物の設計も多く、オープン化対象の『マッピー』がゲームになる前、オリジナルにあたるマイクロマウス競技用ロボット『マッピー』も手がけています。最近はバンダイナムコエンターテインメントの事業であるゲーム開発のメソッドを他分野に活かす活動にも参画しており、さまざまな企業のコンサルティングや、小学生向けの教科書の開発にも携わっています。

兵藤さんは1983年入社。オープン化対象では『バトルシティー』『バベルの塔』を担当。『さんまの名探偵』などの企画・開発に携わったほか、管理部門で海外展開やローカライズなどの監修を手がけました。ほか『テイルズ オブ ファンタジア』『テイルズ オブ デスティニー』『スパローガーデン』『Pac-Man World』『Dead To Rights』『タイムクライシス プロジェクトタイタン』など。現在はアジア展開に従事しているとのこと。


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登壇者の自己紹介の段階で、往年のゲームタイトルに湧く参加者


遠藤さんが先輩や同期と並ぶという珍しい機会なので、せっかくなら「遠藤さんが来る前に、新入社員・遠藤はどうだったかという話」から始めようとしていると、ちょうどそこに遠藤さんが到着するという素晴らしいタイミング。さすがです。

いざ遠山さんが当時の資料を取り出すと、話はいっきに『ゼビウス』開発当時の話に。『ゼビウス』の遠藤さんがみずから「すげえ!」と歓声を上げるほどの貴重な資料が披露され、登壇者から口々に「懐かしい」という声が。

ゲームデザインもグラフィックも高い評価を受ける『ゼビウス』ですが、現在知られているあのグラフィックは遠山さんのリファインを経て描き変えられたもので、それ以前には別の初期グラフィックがあったとのこと。自機ソルバルウはまずドット絵が作られ、そこから参考用にイラストが起こされたのち、当時デザイン課の新人だった遠山さんに渡されたといいます。

遠山さんのセンスでリファインされたデザインがすばらしかったことから遠藤さんと岡本さんのあいだで「超カッコイイよね!」と盛り上がり、全体の再デザインを決定したものの、「誰もやってくれなかった」ため遠藤さんがみずから遠山さんのデザインを手でドットに起こしてあのグラフィックが完成しました。

資料には遠藤さんも初めて見たという機体の裏側の絵もあり、そこでも歓声が! 。この裏側のイラストは最近になってモデラーさんから造形資料として問い合わせがあり、じゃあと当時のタッチを真似て描いてあげたとのこと。





遠藤さん曰く、「同期の中で実力を認めていたのは遠山君だけ」。ほかの同期は同列とは思っていなかった......と語りつつ、「〜というくらいだから、(新人時代の遠藤さんは)使いにくかったんだよね?」コメント。当時の上司だった岡本さんからは、「開発チームが微妙な雰囲気だから、ちょっと中に入ってなんとかしてよ」と頼まれたことが合流のきっかけだったとのエピソードも明かされました。

そこまで高く評価を受けた遠山さんですが、当時はデザイン課で所属が違ったため開発部屋には入れてもらえず、実はゲームをプレイせずに描き、入り口のところで絵を受け渡しただけという切ない話も。

さらに、当時の新入社員向けに配られた遠藤さんの手書き冊子コピーや、メイキング・オブ・ゼビウスの冊子が登場するなど、往年のゲーム好きにはたまらない展開になっていきます。当時はPCでゲームを作る時代ではなく、グラフィックデータ作成には専用機材が必要でした。記録媒体はデータカセットや紙テープ。紙テープでは1バイト単位でテープに穴があけられるようになっていたため、遠藤さんはテープの穴を眺めてどういうキャラクターか読めるようになった(!)といいます。

グラフィックに関していえば、当時のドット絵ならでは、の表現の工夫も多かったようです。もともと平坦で丸かったアンドアジェネシス(ボスキャラ)が現在の八角形になったのも、丸をドット絵にすると不連続にギザギザが出てしまって美しくないため。平らな円盤ではなく高さのある立体的な形状になったのも、荒いドットの制限で見にくくなってしまうことを避けて大きな構造を見せるためだったといいます。「本当にこれ(八角形のアンドアジェネシス)を描いてくれて、感動しながらドットを打っていた」(遠藤さん)。

こうして遠山さんのデザイン採用が決定してからは、遠藤さんが一度ハンドレンダリングしてからドット絵に。これは、レイトレーシングの本を片手に勉強しながら進めたそうです。レイトレーシング自体、この当時はまだコンピュータ処理で、という流れにはなっておらず、すべて頭の中でやっていたといいます。いわゆるプリレンダ手法が広く使われるようになるよりはるか昔に、手で実現していたともいえます。「有機コンピュータだね」と岡本さん。「かっこいいな!」(遠藤さん)

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 中央が遠藤雅伸さん。モニタは初期案のアンドアジェネシス。最初は丸かった。

当時から、自分のエモーションに忠実だったという遠藤さん。年上の先輩相手でも、自分の意見を引くことはなかった、「世代間の違いですね」と言い放つことも多かった、いまになって思うと、仲が悪かったというのじゃなくて「ゲームについて熱かったのだ」といいます。当時の遠藤さんが「考え方が古いよ」「いや、それは好みの問題だと思うね」などと意見を戦わせていたのは、たとえば『パックマンの父』岩谷徹さん(1977年入社)。


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ロボットやエレメカなど実体物の制作では大ベテランの遠山さんからは、「ビデオゲームでは100ドット動いて止まるようにするのは簡単だけれど、ロボットで100センチ動いてピタリと止めるのは非常に難しい」など、迷路脱出競技用のロボットだったマッピーの製作エピソードもお話いただきました。

トークセッションはざっくばらんな雰囲気で盛り上がり、続いて翌18日(Day 1)に向け、チーム分けに進みます。

大変なことにならないとおもしろいものはできない

後半は、チームごとに集まり、それぞれ自己紹介やゲームへの思い、ゲームとのかかわりなどチームミーティングが始まります。実際に、クラッシックIPが体験できるようになっているので、ゲームをプレイしながら、盛り上がっていました。

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会場には先ほどのゲスト4名以外にもバンダイナムコの開発者が来て、開発者本人がその場で開発秘話を語りながらゲームプレイをするという、ゲームファンにはたまらないシーンも多々見られました。

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『スターラスター』のプログラマ湯原さんによる自作自演解説


印象的だったのは、参加者が名作ゲームの開発者と直接話ができる貴重な機会にもかかわらず、まずは、今回のハッカソンイベントでチームとして共創するメンバーとの時間を大事にしていたことでした。もちろん、自己紹介やお互いの思いをある程度共有し合った後は、ざっくばらんな懇親会の風景に移行しましたが、当初はストイックなミーティングが続き、このイベントにかける思いが伝わってきました。

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また、トークセッションでは「大変なことにならないとおもしろいものはできない」(遠藤さん)という印象的な言葉も出てきました。Day 1からDay 2までの3週間で、新しいエンターテインメント、何が、どういうものが生まれるでしょうか?




大内孝子(おおうち・たかこ):フリーライター/エディター。主に技術系の書籍を中心に企画・編集に携わる。2013年よりフリーランスで活動をはじめる。IT関連の技術・トピックから、デバイス、ツールキット、デジタルファブまで幅広く執筆活動を行う。makezine.jpにてハードウェアスタートアップ関連のインタビューを、livedoorニュースにてニュースコラムを好評連載中。著書に『ハッカソンの作り方』(BNN新社)がある。

 
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