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▲富士通クライアントコンピューティング(FCCL)が1月25日にオンラインで開催した、同社設立1000日を祝うイベント『FCCL DAY1000 Memorial Reception』より

広報にまつわる人との接し方を中心に、たくさんの失敗と格別な体験を時事ネタ交えつつお伝えしていく本連載。広報にまつわる人との接し方を中心に、たくさんの失敗と格別な体験を時事ネタ交えつつお伝えしていく本連載。13回目となる今回はいつもと少し趣向を変えてオンライン発表会にまつわるお話です。


こんにちは。前回は、日経パソコンさんと「富士通 対 NEC」とも言える企画から両者の経営陣や開発担当までの対談を通じ、企業文化の差とその面白さを感じたお話をさせていただきました。

さて、今回はそんな流れからちょっと脱線して……最近主流となってきた「オンライン発表会」について広報担当者にできるこだわりポイントをお話してみたいと思います。

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新型コロナウイルスの蔓延により、2020年春から各メーカーは発表会の開催を従来のリアル会場で行う形からオンライン形式への変更を余儀なくされました。いつ収束するかはわからず当面はオンラインでの発表会が続くかと思われましたが、ある程度の落ち着きが見えてくるタイミングもあるなど、状況は常に変化します。

この状況に担当者は「この発表会は本当にオンラインで良いのか? 時期的にリアルな発表会のほうが良いのではないか?」と頭を悩ませます。参加者のみなさんの安全を守る意味でも慎重に事を進めなければいけない半面、今までに経験をしていなかった新しい発表会の形式が広報担当者に重くのしかかるのです。

発表会には様々な準備があり、まさに広報の腕の見せ所。それでも、そのプロセスは長く遠い道のりがあります。まずは発表日の決定です。社内の発表商品の開発事情を鑑み、この頃という想定ターゲット週が見えたら作業開始。発表日を想定した日程付近の業界や他社の動向を当てずっぽでも予測し、一人でも多くの記者の方に視聴してもらうため、あらゆる手を使ってダブルブッキングが起きない状況を作ることから始まります。

最終的には発表会が終わった後、掲載状況の集計をする所まで発表会関連作業は続くのですが(この「発表会でのあるある」についてはまた、違う機会にお話しできればと思います)、オンライン発表会は従来の発表会とは明らかにプロセスと見え方(見せ方でもありますが、あえて見え方とします)が異なります。その中でも昨今のオンライン発表会でその重要性がより高まるキーワードが「ゲストスピーカーを誰にお願いするか」です。

現場を担当していた頃、発表会でつきものの「なぜここでこの人が話すの?」というシーンがあります。それはなんとなく不自然だったり、話の内容に脈絡がなかったり、いわゆる「この人を出しておかなければ」という社内の暗黙のルールでそうなることが大半です。敏感な記者の方は「しがらみがあって大変ですよね」とこっそりコメントしてくれます。よくあることではありますが、オンラインの時代になると風当たりも厳しくなります。

オンライン発表会になって記者の皆さんも移動時間がなくなり、また、すぐに執筆できるので、今まで以上にたくさんの原稿が書けるようになったとおっしゃる記者の方もいらっしゃいました。時間が有効に使えるというという点では発表会革命が起きたような新しい流れができたのだと思います。しかし、例えば2社のオンライン発表会が重なった時はどうされるでしょう? 従来ですと、別の場所で同時に行われる発表会への参加は物理的に無理なので、どちらかに絞る選択が出てきます。どちらかにするかは事前の案内を見て、「こっちの方が面白いネタがありそうだ」と思う会場に出かけていったのではないかと思います。

その点、オンライン発表会であれば同時に参加することも可能です。オンライン時代における最大の恩恵でしょう。ただ、発表会をする方からすると二股をかけられてしまうという悲しい事態に陥ります。そうなると、あとは画面の中だけの勝負。どうやって最後まで見てもらえるかの知恵比べですね。

今までの会場を借りて行う発表会は臨場感や目の前の演出効果も重なりイベント性が高まるため、発表会全体の演出がとても重要。エントランスから発表本体での演出、展示コーナーに至るまで様々なポイントがありました。その中でのゲストスピーカーのコーナーももちろん大事なパートの一つです。しかし、それがオンライン発表会となると、その重要さが大きく増します。

「誰に話してもらうか」がオンライン発表会での視聴離脱に大きく影響する。そういっても過言ではありません。

オンライン発表会は発表会の形態も大きく変えていきました。準備のプロセスにおいても今まで重要だったことがそうでもなくなり、新たな作業が重要になる事は多くの広報担当者が体験済でしょう。この新しいやり方の会得に日々奮戦。新しいことは骨が折れます。それは記者のみなさんも同様かもしれません。「うっかり見逃した」「迷惑メールに案内が振り分けられていて気がつかなかった」「始まると思ったらいつまでも始まらず、見逃したと思ったらYouTubeとZoomを間違えていた」など例を挙げるとキリがないほど、オンラインならではのトラブルがあります。これらは違う意味での見逃しなのですが、発表会を準備する広報の立場としては「見てくれたなら最後まですべて見て欲しい」と思うのが親心です。

リアルの発表会で途中退席するのはなかなか勇気がいる事なので、あまり途中で抜けていく方はみられませんが、オンラインだと顔が見えない分簡単に離脱できます。仮に離脱しなくても、別の発表会と重なっていた場合はもう一つの発表会に気持ちを集中することもできます。そんな「トイレタイム」ならぬ視聴離脱ポイントがこの部分なのです。

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▲FCCLの齋藤社長

商品の発表会という性格上、性能・機能やコンセプトについてが背骨の部分です。事業部や商品開発の力により内容を精査していきます。そして視聴する記者の皆さんもこの部分を見ない人はいないでしょう。その流れで祝辞やコメントをゲストの方に話してもらうコーナーを設けるのですが、先に挙げたように「誰に」話してもらうかが非常に重要になります。この部分は発表会にとって一つのSTORY。商品ではなく発表の考え方や企業の姿勢が間接的に伝えられる部分です。

このゲストの話の内容が記事ネタになるのか、単なる祝辞となるのかで記者さんの関心が大きく変わると思います。

ゲストでお話して頂ける方。突き詰めれば発表会でコメントを頂けること自体がありがたく、関係されるどの方にでもお願いをしたいという気持ちはあります。ただ、限られた時間での発表会。どうしても話して頂く方を絞らなければいけません。その人選も各部門ごとのしがらみがあって難航し、また決断にはかなりの時間を要します。

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その時に最初に考えるのは「この人の言葉がどれだけ視聴している記者のみなさんの執筆に役に立てるか」ということ。それでも、関係者は面白い話がたくさんできる人ばかり、誰にお願いするかは永遠の課題のように悩まされます。

そして二番目に大事に思うのが「主催者(例えば主催者の社長)とどれだけの関係やエピソードを持っているか」ということ。単にビジネスの関係ではなく、深くお付き合いして頂いている方はその人のお言葉にも色艶が出てくると思いますし、何よりもメディアのみなさんが「この人が!」と関心を持ってもらえるのではないかと思います。

この「この人が!」というのにはいろいろな意味があります。わかりやすいのは誰でも知っているIT業界の有名人、一般社会においての著名人、等です。ですが、実は面白い話をしてくれるのは主催者と意外な接点のあった人だったり、その企業の商品と非常に関わり合いが深い人だったりします。誰もが知らない話が飛び出ることによって見ている皆さんの関心をさらに深く呼び起こす事もあるでしょう。

最後に三番目のこだわりが「どんなお話をしてもらえるか」という点です。「祝辞をお願いします」とだけお願いするならば「皆さんこんにちは。○○の○○です。本日はおめでとうございます。本日は持ち時間も短いということで、私の挨拶も短めにして~」と始まるくだりになりかねません。ここは危険な離脱タイム。そのお話を頂く方にも事前に主催者とのストーリーを思い起こしてもらい、こんなことがあった、こう思っているなど、気持ちを作り上げてもらってからメッセージを頂くことが大切です。

これらの3点を心がけてゲストの方へお願いをするととても気持ちの良いお言葉を頂けますし、記者の皆さんにとっても聞いていて意味のある時間となると思っています。

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発表会を日々の日常に置き換えれば会社の朝礼のようなもの、今日はこんなことをしていきます、という宣言の場なので、立て付け上「この人に話してもらえたら」と思う人にお話を頂けない事もあります。

その中で広報としてできることは一つ。この「しがらみで本来話してもらいたい人に話をもらえない時に、なんとしても話してもらえる環境を作る」という事に限ります。そこに全力を尽くしましょう。主催者ではなく、その時のゲストの方が代弁してくれる言葉には本当に説得力があります。その時の発表会において理想のゲストスピーカーに言葉を頂く機会を作れるかは、発表内容をより深く記者の皆さんに伝えるとても重要な事なのです。そのために社内の説明に非常に多くの時間を取られること、とりあえずなんとなく頭を下げてクリアしなければいけない時もあります。

オンラインという発表会形式は最初から最後の1秒まですべて見て欲しい。そんな魂を込めた発表会。最後まで記者の皆さんに見てもらうために広報担当者は眠れぬ日々を過ごすのでしょう。

さて、次回はPCのコモディティ化によるビジネス形態の変化と異業種とのコラボレーションについて、今までとは違う悩みや広がる可能性を見つけたときのことをお話させていただこうと思います。それではまた。

PC広報風雲伝連載一覧


秋山岳久

PC全盛期とバブル真っ只中からPC事業風雲急時代までPCメーカーで販売促進・広報と、一貫してメディア畑を歩むものの、2019年にそれまでとは全く異なるエンタテイメントの世界へと転身。「広報」と「音楽」と「アジア」をテーマに21世紀のマルコポーロ人生を満喫している。この3つのテーマ共通点は「人が全て」。夢は日本を広報する事。齢55を超えても一歩ずつこの夢に向かい詰めている現在進行形。