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広報にまつわる人との接し方を中心に、たくさんの失敗と格別な体験を時事ネタ交えつつお伝えしていく本連載も21回目。本連載ではこれまで何度もパソコンの進化について語ってきましたが、ようやく自分もユーザーとしてパソコンを使い始めたというお話です。


昨今のオンライン生活の拡大にともない、広報のスタイルにも変革が起きています。誰にでも言える共通項として「時間が増えた」ことが挙げられます。そんなときにはこれまでできなかったことを今こそ! そうです、スキルアップによって広報活動を広げていこうと思うわけです。

時間が増えたといっても「そのぶん仕事が増えた」と思う広報担当者がほとんどでしょう。これまでも発表会の準備をするのは一大イベントでした。商品発表スケジュールやその内容を精査することはもちろんですが、役員のスケジュール確保にレビュー、ここまでは社内の仕事ですが、そこから会場を押さえ、多少なりとも演出を用意して……という企画の部分が加わってきます。それはそれは大変な作業でした。

昨今はコロナの影響もあって、時間もお金もかかるこの一大行事ができなくなります。大きな仕事が減ったと思うかもしれませんが、それは大きな間違い。なぜなら、すぐさま「オンラインで発表をしよう」という流れになるから。

「発表会はオンラインで」と簡単に言いますが、たいていの人には初めてのこと。やり方やその作法に到るまで経験値がありません。

ならば、まずはやってみようとなるのですが、発表会場を使わないのだからということで社内の予算は当然大きく削減されます。確かに会場費がかからないのはコストダウンになりますが、配信をするという新規の作業が生まれているのに。

世の中ではイベント業が大打撃を受けており、今まで舞台やイベントを制作していた人たちがこぞって「映像配信」に参入しています。Blackmagic Design社もプロ仕様ながら手の届く価格帯で様々な映像機器を投入しています。こういった新しい映像機器が投入され、それを使ってビジネスをしたい人が増えてくる。そういった環境も後押しし、「映像を使ったプレゼンテーション=オンライン配信による発表会やそれに関するPR手法」の土壌が育成されてきたのです。

リアルで発表会ができないならオンラインで発表会を

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そういった状況なので、「さあ、それではさっそく代理店にどうすればいいか提案してもらおう」というのが迅速で間違いのない対応なのかもしれません。

でも、時間ができてワークスタイル変革といっている今、そのやり方を考え直してみても良いのではないでしょうか。例えば、自分でもできるかもしれないと考えてみること。考えるのはタダですから。考えてみてちょっと触ってみて、危なそうだったら撤退して今までと同じやり方を進むのも良き判断です。1つ判断を加えることで、自分自身の知識もそこそこ上がるはずなので、「オンライン発表会の仕組みと発生する作業」というものを考えてみるのも良いかもしれません。

そういうことならと、私たちも早速「オンライン発表会の仕組みと発生する作業」に頭を使ってみたのです。これはいち早くやることが重要でした。最初なら失敗も許されるだろう……甘い考えもちらほら。「誰もやっていないから多少は許される」というのがFM TOWNSから続いているチャレンジャーの歴史。その歴史の1つとして何事にも自分たちで挑戦してみることが大事なのです。

オンライン発表会というのは「見ている人の気持ちを考えて行うこと」に尽きます。リアルでやる発表会をそのままオンラインにすれば良いわけではありません。同じ発表会とはいえ、ある意味別物です(ここは話が長くなりそうなのでまた別の機会に)

力不足だった動画編集ソフトと格闘した時代

前回、テレパソのお話をさせていただきましたが、今では当たり前すぎて、この人何を言っているの? と思われたことでしょう。(でも「昔はパソコンに画像が、しかも動画が出るって画期的なこと」だったのです。最近の若い人に説明することもしばしば)少しその頃のお話をさせていただきます。

テレパソから進化は進み、映像編集ソフトなどの登場により観るだけでなく自分で動画の編集ができる時代が来ます。その頃はビデオカメラの出荷台数もどんどん伸びてきていて、「ビデオカメラで撮影した動画をパソコンで編集しよう」というアピールをしていました。映像コンテンツの活用法として評価されたのを覚えています。

私自身、これにはものすごく思い入れが強く、初期の頃からいろいろ試していました。動画編集の技術を覚えるというのも仕事の一つということで、動画編集セミナーに行かせてもらったりもしました。

しかし、フリーソフトがまだ普及していなかった頃ですので、ソフトも限られたものしかありません。新たにソフトを買うほどの真剣さはなく、まずは触れてみる程度にパソコンにプリインストールされているソフトで制作を行っていましたが、現実には動画データ自体が重いこともあり、簡単には映像コンテンツを作ることができませんでした。

当時は動画編集と言えば圧倒的にApple。クリエイティブはMac、ビジネスはWindowsという、世界観の棲み分けがなされていたと思います。この頃のWindows陣営はビジネスをしっかり訴求したかったのですね。「編集にも使えるよ」というレベルからのスタートでしたのでハードルがたくさんありました。

なんとか動画を作っても、そのエンコードにものすごく時間がかかり、数分の動画を完成させるのに丸々一晩かかることも珍しくありません。実際に夜遅くに作業を終え、エンコードをかけると「あと12時間」とかとんでもない数字が表示されてきます。

このままにしておいて明日の朝にチェックすればエンコードが終わっているので今日は寝ようと思いますが、途中で止まってしまったらどうしよう、何かのエラーやコマンドがでたら対応しないとなど、不安に駆られます。それでも睡魔が勝って寝てしまうわけですが、案の定、翌日目覚めてまずパソコンを見ると「エラーが出ました」の表示が出ていてがっかり。はい、やり直し。なんてことがよくありました。

社員が業務としてやっているのにこんな状況ですから、動画編集が一般に広がるわけはありません。もちろん売りの言葉ではありましたが、本当に使っている人はユーザーアンケートを見ても1パーセントに満たない数字でした。

インターネットやテレビ機能に加え、動画編集ができることをカタログなどでパソコンの訴求ポイントとして必ず明記していた時代ですが、それを実際にやっている人は少なく、「動画をやるならMacでないと」というのが実情だったのです。

とはいえ広報を担当する以上、説明したことが間違いだったり、自分が全くわかっていなかったり、やったことがなかったりすると説得力がありません。

時間がかかっても「よし! やろう!」と気持ちを持ち直し、毎回新機能が追加されるたび動画編集にチャレンジ。もう意地になっていて、絶対にサクサクできる時が来ると信じてやり続けていました。まだこの頃の動画編集は「よし! やろう!」と思わなければ手を出せないパソコンの使い方だったのです。

新しいPCと動画編集ソフトでようやく動画デビュー

さて、話を今に戻します。

オンラインがコミュニケーションの主体となった事でオンライン会議/発表会が普及した現在。しかし、それでもリアルのレベルはなかなか超えられません。どうすれば特長やコンセプトを伝えることができるのでしょう。リアル発表会を実施すれば伝わるかもしれませんが、今はそうもいきません。

情報発信をする部門が対面での発信ができない、これは死活問題です。そんな危機感を解消すべく、自社自ら発信を強化すること、具体的には動画コンテンツでの紹介を深めていこうとチャレンジし始めたのでした。

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そんなわけで、動画による訴求をオンラインで展開するため、再び自分で動画の作成をすることに。過去のつらい思い出があったため躊躇がなかったわけではないですが、これも時間があるからこそできるスキルアップです。

当時、苦痛に感じた「動作が遅いこと」は、最新のパソコンだと解消されていました。これは正直驚きです。まじに速い! 現在使用しているのはESPRIMO FHという機種ですが、動画の編集がサクサクできるのです。動作が遅いというストレスが解消できたことで動画編集に取り組むやる気アップにつながります。

最も問題視していたエンコードもあっという間。これはソフトの影響もあるかもしれません。正直「こんなに簡単に動画編集ができるなんて」というのが率直な感想。(私が使っているのはDaVinci Resolve 17。無料版ながら有料版とほとんどの機能が変わらない優れものです)ビデオカメラやスマホで撮った動画をパソコンに移動し、あとはこのソフト上で編集するのですが、極端にマニアックな事をしなければ使い方はすぐに覚えられると感じました。

これまで苦手意識のあった動画編集のハードルがこんなにも低くなっているなんて! 

まあ、捉え方や習熟度は人それぞれで異なるのでなんとも言えないですが、完成した作品を高画質で観るとそれなりに制作意欲が沸き立てられますし、作ったものを誰かに観てもらいたい衝動に駆られます。

今やYouTuberが職業になる時代。動画編集をしたことがない人は「自分にはできない」と思い込んでいるだけなのかもしれません。実際はそんなことないのでぜひ一度お試しください。

オンライン時代で自作動画の制作メリット

ということで今では簡単なPR素材を自分で作るようになりました。これには理由があります。

もちろん技術的なことであればプロには敵わないですし、広報として何を伝えるかと考えると厳しい部分もあります。ですが、この「広報として何を伝えるか」において重要な要素として「日常を切り出す事」があるのではと思っています。

照明が焚かれ、知らないスタッフの前でかしこまって語るのは、取材慣れしている人でも自然体をキープするのは難しいこと。しゃべりのプロではないですからね。でも、身近な広報担当者がさりげなく、ビデオカメラやスマホで切り取る映像には「本当」の姿が映り込みます。

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コメントも終わってほっとした笑顔も自分でないと撮れない、信頼関係で得た距離感でないと撮れないわけです。それはプロの映像マンにも勝る力なのです。そんなシーンを切り取り、わかりやすく発信する、動画編集が圧倒的に簡単になった今のオンライン時代ならではですね。

もちろん、会社の株価に影響するようなシーンはのちのち問題になりかねないので御法度ですが、広報業務の一辺をオウンドメディアに乗せて発信するのも良いのではないでしょうか。ちなみにこんな動画を自分で作成し、Instagramにアップしてみました。

(シロウトの手作りのため、観づらいところはご容赦ください、すみません)

自前で紹介したい動画をオンラインで発信したり、オンライン発表会の中でちょっとした動画作成したりできればコストダウンにもつながり、また露出についての確認や許可など決定速度がいきなり上がります。

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作ったものをすぐに確認して、修正点があればその場ですぐに修正する。このスピード感もメリットです。ちなみに自分が使うパソコンは特別なものではありません。それ故に、情報を発信する広報が情報素材を作成するところまでできる時代が来たと思いました。オンライン時代はデジタル広報時代の幕開けと言えるでしょう。

これからは広報担当者がリリースを動画で作成して発信する事が当たり前になるのではないでしょうか? すでにSNSを活用している広報さんは多いですよね。

今までPDFで送っていたリリースが動画になる。新しいです。昔は製品写真を「紙焼き」で配布していました。紙焼きを郵送でした。データ提供、または公式サイトのプレスルームでダウンロードできる時代になって久しいです。動画の活用も同様で、動画が観にくかったりくどかったりすると、改善が求められそれをさらにブラッシュアップして良いカタチになる。それが当たり前になる時が確実にくると思うのです。まさに広報多能工時代の到来ですね。


PC広報風雲伝連載一覧


秋山岳久

PC全盛期とバブル真っ只中からPC事業風雲急時代までPCメーカーで販売促進・広報と、一貫してメディア畑を歩むものの、2019年にそれまでとは全く異なるエンタテイメントの世界へと転身。「広報」と「音楽」と「アジア」をテーマに21世紀のマルコポーロ人生を満喫している。この3つのテーマ共通点は「人が全て」。夢は日本を広報する事。齢55を超えても一歩ずつこの夢に向かい詰めている現在進行形。