[名称] Q-PAK(Q-100、SQ100)
[種類] HDD
[記録方法] 磁気記録
[サイズ] 約100mm
[容量] 6.38MB
[登場年] 1982年頃~

今や淘汰された懐かしの記録メディアたちに光を当てるこの連載企画では、ゆるっと集めているリムーバブルメディア・ドライブをふわっとご紹介していきます。

連載:スイートメモリーズ

「Q-PAK」(Q-100、SQ100)は、リムーバブルHDDを得意としていたSyQuest社の初期の製品となる「SQ306R」というドライブで使用するカートリッジ。

HDDの開発は各社で行われていましたが、初期のHDDとして成功を収めたのが、Seagate社のST-506です。これは5.25インチのHDDで、容量は5MBと小さいものの多くのマイコンなどで利用されました。このSeagate社でのHDD開発陣の一人が、SyQuest社を設立したSyed Iftikar氏です。

SyQuest社が目を付けたのが、リムーバブルHDD。これはディスクカートリッジだけを購入・交換できるため、ドライブ丸ごとの購入となるHDDと比べ、より低価格に大容量ディスクが利用できるという利点があります。

ただし、密閉できないことによるホコリやゴミの混入、ディスク面の腐食、摩耗などを抑える必要があります。実は、リムーバブルHDDそのもののアイディアは特別なものではなく、古くはIBMなどでも研究されていました。しかし、実用化までのハードルの高さから、製品化されることはありませんでした。

とはいえ、技術の進歩はすさまじいもので、大手企業が諦めたアイディアでも、設立間もない企業が実現できることがあります。このリムーバブルHDDもその1つといえるでしょう。

SyQuest社では、ディスクをカーボンコーティングすることで、ディスク側の耐久性問題を克服。またドライブ側では、ホコリなどの除去、カートリッジ挿抜時のヘッド退避など、HDDでは不要だったの特殊な機構の開発を行なうことで、実用化にこぎつけました。

Q-PAQの容量は、6.38MB(フォーマット時5MB)と今から考えると小さいものですが、当時のHDD容量が5~10MBだったことを考慮すれば、かなりの大容量です。

直接のライバルとなったのは、同時期にリムーバブルHDDを開発、販売していたDMA Systemsの「Micro-Magnum」(DMA 360ドライブ)。こちらは以前紹介したことがありますので、気になる方はこちらをどうぞ

さて、実物を見ていきましょう。

Q-PAKは、幅110mm、奥行き112mmのほぼ正方形で、厚みが11mmとリムーバブルHDDのカートリッジとしてはやや小型。外見はスライド式のシャッターが上部にあるくらいで、ただの白い板に見えたMicro-Magnumほどではないにしろ、あまり特徴がありません。

ちなみに、カートリッジのケースは紙製でした。入手したものはカラー印刷となっていましたが、調べていくとモノクロ印刷のものもあったようです

実は6.38MBのSQ306Rの後継として、12.76MBに容量がアップしたSQ312Rという製品もあるのですが、SQ312R用のカートリッジ(SQ200)もサイズは同一。ですので、この写真のカートリッジは6.38MBではなく12.76MBかもしれません。ケースやカートリッジに見分けられる情報が何ひとつないので、先に登場した6.38MBカートリッジである可能性は高いと思いますが。

カートリッジ裏面は表面よりも特徴があります。

中央のハブ部分は、モーターとの接続部。中央の小さな穴の中に5つの爪がありますが、これは位置決め用のものです。試作では3つで構成されていたようですが、カートリッジの挿抜を繰り返すと摩耗でブレてしまうため、5つに増やされました。

左下の赤い部品は、書き込みの許可/禁止設定用。赤い部品を装着しているか外しているかで、ドライブ側から見分けられるようになっています。なお、どちらが許可でどちらが禁止なのかは、詳しい資料がないのでわかりませんでした。

右上のスリットは中に小さな黒い爪があり、ここを押し込むことでシャッターが開く仕組みとなっていました。

こちらがシャッターを開いてディスク面をむき出しにしたところ。このディスクが、カーボンコーティングを採用したという例のヤツです。

このカーボンコーティングは耐久性の向上には役立ってくれると考えられていたものの、当時、採用していたHDD製品はありません。唯一供給できそうなディスクサプライヤーからも断られてしまい、自社開発しなくてはなりませんでした。なお、販売開始後は複数のディスクサプライヤーから供給が受けられるようになったため、自社での製造はやめています。

販売後も順調だったわけではなく、ディスクのカーボンコーティングによって、ヘッドが摩耗してしまうというトラブルがありました。これは、ヘッドをより硬いセラミック製に変更することで対応しています。

100mm(3.9インチ)ディスクを採用したリムーバブルHDDドライブは、SQ306R、SQ312R、そしてSQ319R(フォーマット時15MB)まで続きましたが、その後は容量アップのためか、より大型の5.25インチディスクを採用したSQ555(44MB)へと移行していきました。

リムーバブルHDDは登場当初こそニッチな製品でしたが、DTPなどで大きなデータのやり取りが必要になると便利なメディアとして人気となり、SyQuest社の名が広く知れ渡ることとなりました。

連載:スイートメモリーズ


参考:

SyQuest SQ306 Q100, Hard Disk Drive History, WikiFoundry
SQ306_Brochure_Sep82.pdf, Wayback Machine
Syquest_SQ306RD_OEM_Manual_Sep83.pdf, Wayback Machine
SQ3xx_Advertisement_19851115.pdf, Wayback Machine
Q-Pak 5 Megabyte Cartridge, Computer History Museum
1982: FILM MEDIA INCREASES DISK STORAGE DENSITY, Computer History Museum
業界に痕跡を残して消えたメーカー リムーバブルディスクの元祖SyQuest, ASCII.jp
SyQuest Technology, Wikipedia