つい先日、PayPayは今まで無料だった加盟店舗手数料を10月以降に1.60〜1.98%にすると発表しました。

PayPay、d払い、au PAYといったQRコード決済は主に中国で広がったキャッシュレス決済です。日本では2018年頃に多くの事業者が参入し、導入費用も手数料も期間限定キャンペーンにより無料であったため加盟店舗数が爆発的に増加しました。しかし、2021年の7月以降にこの期間限定キャンペーンが終了し、各社が決済額の2〜3%の手数料を徴収し始めています。

コロナ時代でキャッシュレス化が求められる中、QRコード決済各社の手数料有料化で逆に加盟店舗数が減少する可能性が示唆されています。QRコード決済業界における大きな節目となった今、今後の変化について少し考えてみましょう。

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中小規模店舗で広がったQRコード決済

現在のQRコード決済はPayPay、d払い、au PAY、楽天ペイ、メルペイ、LINE Payの6つが主要サービスとなっています。

これらのQRコード決済サービスは店舗側に導入費用0円、手数料0円で導入してもらい、その上でユーザー側に20%還元などの大規模キャンペーン打つことで爆発的に広がりました。

しかし、このやり方を続けると常に赤字は避けられません。実際PayPayも初年度は数百億レベルの赤字となっていますし、QRコード決済のスタートアップであったOrigami Payに至っては資金難でメルカリに吸収されるという最期を迎えています。

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そこで各社は2021年7月から順次、2〜3%ほどの手数料有料化を進めています。大規模キャンペーンも徐々に減少し、これからじわじわと黒字化を目指す方向になると思われます。

▲テレビCMで一躍有名となったPayPay

QRコード決済の特徴として挙げられるのはコストをかけずに導入できるという点。クレジットカードや電子マネーの場合は専用の端末が必要になりますが、QRコード決済ならば紙に印刷したQRコードと管理用のスマートフォンさえあれば導入できます。そのため、QRコード決済は個人経営の中小規模店舗で特に広がりました。

とりわけPayPayは宮川大輔さんを起用した印象的なテレビコマーシャルの影響でテクノロジーに疎い層の取り込みにも成功しています。事実、PayPayだけが使える小規模店舗を見かけることがよくあると思います。

数%の手数料が中小規模事業者にとって厳しいワケ

一般的にクレジットカードや電子マネーの手数料は3〜5%と言われています。そのため、QRコード決済の各事業者が設定している2〜3%の手数料はかなり良心的にも思えますが、実は小規模店舗にとっては死活問題となります。

例として個人で経営している小さなレストランを想像してみましょう。

一般的な小規模飲食店の利益率は3〜5%と言われています。仮に月100万円の売上があるとすると利益は平均4万円。QRコード決済の手数料を2%、客の半分がQRコード決済を利用すると仮定した場合、売上の1%である1万円が手数料となります。つまり単純に4万円利益が3万円へと大きく目減りするわけです。手数料の利率は微々たるものでも利益率が低い場合は相当な影響が出るということになります。

小規模店舗は利益率が低い傾向にあるため、少しの手数料が大きな痛手となることがあります。そのため、いままで中小規模店舗にアプローチしてきたQRコード決済事業者は手数料に気を配らなければ加盟店舗数が減少しかねないのです。

PayPayの手数料有料化で加盟店舗数は減るのか

さて、我々ユーザーにとって一番気になるのは、QRコード決済手数料有料化によって加盟店舗数が減少するのかどうかですが、もっとも普及していてもっとも影響の大きいPayPayに限ってはそうとはならないように思えます。

まず大規模店舗で見られるCPM(スマートフォンに表示させたQRコードを店舗側が読み取って決済する)方式はもともと決済手数料の支払いが必要だったため、このタイミングで辞めることはないでしょう。

問題となるのは今まで手数料が無料だったMPM(顧客がQRコードを読み取って決済する)方式を採用した店舗。MPM方式は中小規模店舗でよく採用されていますが、それらに対しPayPayは10月以降、月額2178円の「PayPayマイストア ライトプラン」に加入すると1.6%、未加入の場合だと1.98%の手数料を徴収します。

しかしいきなりそうするのではなく、PayPayマイストア ライトプランが最大2か月間無料になるキャンペーンおよび、PayPayマイストア ライトプラン加入事業者に対して最大6か月間決済額の3%を振り込むキャンペーンを開催します。これらのキャンペーンにより、手数料有料化となっても少なくとも2か月間はおトクなままとなります。いきなり手数料を取るのではなく、いったん手数料が有料化された状態を体験したうえで判断してもらうという戦略をとったわけですね。

店舗側にじっくり吟味してもらうことで手数料に対するアレルギーを中和できます。これにより、「手数料有料化したからとりあえず辞めます」という層の引き止めができるでしょう。

このソフトバンクらしい、よく練られた戦略により、10月を境に加盟店舗数が一気に減ることはないだろうと私は予想します。

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日本のQRコード決済手数料は高い?

▲中国では露天でもAliPayやWeChat Payが利用できる

QRコード決済が広く普及している中国に目を向けると、AliPayやWeChat PayといったQRコード決済が日本よりも圧倒的に普及していることがわかります。これはユーザー数が圧倒的に多い、現金の信用度が低いなどの複合的な要因が考えられますが、手数料が非常に低いというのもその一つです。

例えばAliPayの加盟店舗手数料は最大でも0.6%といわれています。AliPayは利用時にポイント還元がないとはいえ日本のQRコード決済手数料と比べると非常に低いことがわかります。

ちなみにクレジットカードは決済システムが複雑なうえ、仕組み上カード会社が決済を踏み倒され、回収できないリスクがあります。それに対してQRコード決済はシステムが簡素なため、回収できないリスクも限りなく低いです。

日本のQRコード決済はその点を踏まえての2〜3%という手数料設定なのかもしれませんが、それでも海外のQRコード決済と比較するとまだ少し高いように感じます。

キャッシュレス決済を推進したいなら手数料ビジネスからの脱却を探るべき

AliPayが非常に低い手数料で維持できているのは決済データを使ったマネタイズ方法が確立されているためです。

AliPayを運営しているアントグループではAliPayの取引データを使って人工知能が信用力をスコアリングし、与信枠や金利を最適化して融資を行っています。この世界初のビジネスモデルによってAliPayは非常に低い手数料でも運営が可能であり、アントグループは世界有数の金融グループへと成長しました。

中国はビッグデータを集めやすい土壌であること、日本ではポイント還元があるかどうかでサービスが選ばれやすいこと、といった前提を踏まえると日本で同様のビジネススタイルを取ることは難しいかもしれません。しかし、真剣にキャッシュレス決済を推進、普及させたいのであれば手数料に変わる新たなビジネススタイルを確立する必要があります。

PayPayの場合はLINEを取り込んでデジタルマーケティングの分野に取り組むことが発表されています。QRコード決済サービスがキャンペーンでどれだけ加盟店舗数と顧客数を集められるかという時代は終りを迎えつつあります。これからは手数料ビジネスではなく、決済で得られた莫大なビッグデータからマーケティング施策へ活用する新しいビジネススタイルの追求が求められるだろうと思います。