LGから359ドル(約3万7000円)という低価格な5Gスマートフォン「LG K92 5G」が登場しました。これまで300ドル台の5Gスマートフォンを出していたのはシャオミなど中国メーカーばかりでしたが、ついに大手メーカーも格安5Gスマートフォンを手がける時代がやってきました。

K92 5GはチップセットにクアルコムのSnapdragon 690 5Gを採用します。クアルコムの5Gチップセットはこれまでハイエンドの800版台(Snapdragon 865など)、ミドルハイレンジの700版台(Snapdragon 765Gなど)が展開されていましたが、その下のクラスとなる600番台も5Gに対応したことで、5Gスマートフォンの価格が一気に下がろうとしています。

Snapdragon 690 5Gを採用したスマートフォンはLGより先にOnePlusから「OnePlus Nord N10 5G」が349ユーロで発表されています。OnePlusといえばハイエンドモデルを中心に展開していますが、新たな「Nord」シリーズは価格を抑え、より若いユーザーを狙ったカジュアル感を強めたモデルになっています。OnePlusのユーザー層拡大にSnapdragon 690 5Gが貢献しようとしているのです。

5Gスマートフォンは今年に入ってから低価格モデルが次々と出てきています。特に中国国内では2000元(約3万1000円)以下のモデルが急増しています。最初に2000元を切ったシャオミの「Redmi K30 5G」はSnapdragon 765Gを採用しました。しかしその後OPPOやVivo、さらにファーウェイから登場した低価格モデルはメディアテックのチップセットを搭載、1000元(約1万5000円)台の低価格5Gスマートフォン市場ではメディアテックのシェアが拡大しています。

メディアテックはハイエンド向けに「Dmeinsity 1000」シリーズを、ミドルハイレンジ向けに「Dimensity 800」シリーズを、ミドルレンジ向けに「Dimensity 720」を出しています。1000元台5Gスマートフォンの多くがDimensity 800を採用しており、その数は10機種以上を超えています。中国国内ではすっかりメジャーなチップセットになっているのです。

先進国でも低価格な5Gスマートフォンが増えているとはいえ、まだDimensityを搭載したモデルはわずかです。しかし5Gの普及が進めば低価格モデルを求める消費者の声は各国で高くなるでしょう。また5Gの普及が進めば、あえて4Gスマートフォンを買う消費者も少なくなります。そうなれば今の4Gスマートフォンと同じ価格の5Gスマートフォンが求めら、これらの低価格5Gスマートフォンがグローバル展開されることは目にみえています。

メディアテックはクアルコムよりも先に低価格5Gスマートフォン向けチップセットを投入し、この価格帯の製品開発で各メーカーと5Gの開発ノウハウを共有しようとしています。常にクアルコムの後塵(こうじん)を拝していたメディアテックにとって、多くのメーカーが採用してくれることは自社の技術力アップにつながるわけです。一方クアルコムはSnapdragon 690 5Gの投入で大手メーカーを中心に低価格モデルを広げ、メディアテックのシェア拡大を阻止したいところでしょう。

日本ではKDDIが今後4Gスマートフォンを取り扱わないと早くも宣言しています。普及価格帯の5Gスマートフォンとしてサムスンの「Galaxy A51 5G」、ZTEの「ZTE a1」、シャオミの「Mi 10 Lite 5G」を提供しますが、それだけでは数は足りないでしょう。とはいえ中国メーカーの製品をやみくもに増やすわけにもいかないでしょう。

サムスンはGalaxy A51 5Gの下位モデルとして、Snapdragon 750Gを採用する「Galaxy A42 5G」を間もなくグローバルで発売します。KDDIから同モデルが登場する可能性は大いにありそうです。しかしすべてのauユーザーを5G契約に切り替えてもらおうとするのなら、さらなる低価格モデルは必要でしょう。日本でも販売数が好調なA20シリーズ、すなわち「Galaxy A22 5G」(推測)といったモデルの投入が望まれるわけです。サムスンが搭載するチップセットは自社のExynos、あるいはSapdragonでしょうから、このA22にSnapdragon 690 5Gが搭載される可能性も十分あります。

「5Gはまだいらない」という声が今現在、聞かれます。しかし5Gスマートフォンの数が増え、さらに低価格化が進む1年後にはは「もう4Gスマホはいらない」に変わっていることでしょう。メディアテックが火をつけ、クアルコムがその火をさらに大きくしようとしている低価格5Gスマートフォン。これらを活用するためにも、キャリアの5Gエリアの拡張も早急に進めてほしいものです。