携帯電話の要となる電波に関して、2021年4月14日新たな動きがありました。それは総務省が、新たな5G向け周波数帯の免許を楽天モバイルに割り当てることを発表したことです。

ただ、今回5G用として免許割り当てがなされたのは、1.7GHz帯の20MHz幅(1860〜1880MHz)と5G用としては帯域幅がかなり狭い上、東名阪以外の地域でしか利用できません。なぜ東名阪で使えないのかといいますと、実はこの帯域は公共用業務無線局で使用していたのを移行して空けたもので、先に移行が進んでいた東名阪エリアの免許はすでにNTTドコモが獲得しているためです。

Rakuten Masahiro Sano
▲総務省「第5世代移動通信システム(5G)の普及のための特定基地局の開設計画の認定(概要)」より。東名阪以外の1.7GHz帯が、5G向けとして楽天モバイルに新たに割り当てられた

そしてなぜ、このような帯域の割り当てが現在のタイミングでなされたのかといいますと、要は余っていたからです。実はこの周波数帯は2018年にも一度、4G用として割り当てがなされたことがあるのです。

その際、免許割り当ての受付がなされたのは、今回割り当てがなされた東名阪以外の1.7GHz帯に加え、同じく20MHz幅ですが全国で利用できる1.7GHz帯が2つ、そして40MHz幅の3.4GHz帯が2つ。それに対して当時免許取得の申請をしたのが、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクのほか、携帯電話事業への新規参入を打ち出していた楽天モバイルネットワーク(現在の楽天モバイル)の4社でした。

ですが、大手3社は全国で使える1.7GHz帯と3.4GHz帯、楽天モバイルネットワークは全国で使える1.7GHz帯のみを希望。東名阪以外の1.7GHz帯の獲得にはどこも手を上げなかったため、割り当てがなされず余ってしまったというわけです。

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▲総務省「第4世代移動通信システムの普及のための特定基地局の開設計画の認定について」より。この時は4社が全国で利用できる他の帯域を希望したため、東名阪以外の1.7GHz帯は割り当てがなされなかった

なぜ当時、この帯域にどの会社も目を向けなかったのでしょうか。楽天モバイルネットワークは新規参入であるため、全国で使える帯域でないと困るという事情があったからでしょうが、それ以外の3社が手を上げなかったのは4Gのエリア整備状況が影響していると考えられます。

3社はこの時期、全国津々浦々への4Gネットワーク整備をほぼ終えており、重要性が高まっていたのは都市部で増加するトラフィックへの対処でした。それゆえ大都市を有する東名阪で使えない帯域はトラフィック対策に活用できないことから、獲得に手を上げなかったといえます。東名阪エリアの免許を持つNTTドコモさえ獲得に手を上げなかったのには当時、驚きもありました。

ではなぜ、それほど携帯各社に必要とされていなかった帯域の割り当てが、再びなされるに至ったのかといいますと、4Gから5Gに時代が変わったことが要因といえるでしょう。5Gは4Gとは違ってこれから全国の広域でのエリア整備が必要なので、東名阪以外で使える帯域も重要性が大幅に高まったわけです。実際、総務省も「地方への早期の5G普及展開を図るため」にこの帯域の割り当てを実施するとしていました。

そして今回は4社全てが申請をし、総務省での審査を経て楽天モバイルに割り当てられることが決まったようです。楽天モバイルは保有する周波数帯が少なく、5Gエリアの全国整備に関して具体的なスケジュールをまだ示せていないだけに、東名阪以外とはいえ新たな帯域の免許割り当てが受けられたことは大きな恩恵といえるでしょう。

ただ、総務省はこの帯域に関して「当面は4Gの利用も可とする」としていますし、楽天モバイルは現在4Gのエリア整備に全力を注いでいることから、競争力強化のため新たな帯域を4G向けに活用する可能性も考えられそうです。どのような形で楽天モバイルがこの帯域を活用するのか、今後大いに注目されるところではないでしょうか。

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▲「第5世代移動通信システム(5G)の普及のための特定基地局の開設計画の認定(概要)」より。今回の帯域は地方で早期に5G普及を図るためとしているが、一方で当面は4Gで使ってもよいとしている

しかし、今回のように余っている周波数帯というのは現状ほとんどなく、新たに5G向けの周波数をどうねん出するかは国としても悩ましいところであります。その周波数割り当てに向けた国の取り組みは「周波数再編アクションプラン」としてまとめられており、2020年11月13日に「周波数再編アクションプラン(令和2年度第2次改定版)」を公開しているのでそちらの内容を参照しますと、現状「4.9〜5.0GHz帯」「26.6〜27.0GHz帯」「39.5〜43.5GHz帯」などの割り当てが検討されているようです。

なお、これらはアクションプランに「同一及び隣接帯域の既存無線システムへの影響に配慮しつつ、共用検討等を実施」と記されています。それゆえ5G向けとして携帯4社に割り当てられたものの、衛星通信との干渉で思うように活用できていない3.7GHz帯と同様、利用時に一定の制約が出るものと考えられます。

そこで総務省側で検討が進められているのが「ダイナミック周波数共用」の導入です。これは電波の利用状況をデータベースで管理することにより、既存の無線システムが使っていない時間や場所の電波を、新しい無線システムで使うことにより、双方のシステムを共存させるというものです。

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▲総務省の「電波利用ホームページ」より。データベースを活用し、既存の無線システムが使っていない時間帯や場所の電波を、新しい無線システムで活用するというのがダイナミック周波数共用の仕組みとなる

すでに実証実験も進められているようで、先のアクションプランではテレビの無線中継装置に使われている2.3GHz帯でのダイナミック周波数共用による移動通信システムへの導入に向けた動きが進められています。この他にも2.6GHz帯、26GHz帯、38GHz帯でもダイナミック周波数共用の検討がなされているようです。

ただ、周波数帯の共用は、すでにその帯域を利用している事業者に影響が出ないことが前提となるため、技術的に可能であっても運用ルールで双方の事業者とどう折り合いをつけるか、難しい判断が求められることにもなりそうです。例えば2.3GHz帯のダイナミック周波数共用は、既存の利用者である日本放送協会(NHK)や日本民間放送連盟(民放連)が実現の検討に協力するとしてはいますが、一方で災害時などで放送側に影響が出ないことを強く求めるなど、あくまで既存事業者を優先すべきとの姿勢を見せています。

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▲総務省の有識者会議「デジタル変革時代の電波政策懇談会」第4回会合におけるNHK提出資料より。ダイナミック周波数共用の取り組みには協力するとしながらも、主導権はあくまで放送側にあるべきとしていた

そしてより難しい判断が求められるのが既存携帯電話事業者の周波数再編、具体的には楽天モバイルが強く求めているプラチナバンドの再割り当てということになるでしょう。この件については総務省の「デジタル変革時代の電波政策懇談会」における「移動通信システム等制度WG」で議論が進められていますが、割り当ての判断方法から実現に至る手段まで、まだ議論がまとまる様子はなく長期化も予想されます。

電波は限りある国の資産である一方、時代によって使われるシステムが大きく変化していることもあって、運用に難しい判断が求められるものでもあります。そして少なくとも現状は、世界的にも5G、6Gといった移動体通信の重要性が非常に増しているだけに、5Gの利活用推進だけでなく通信業界の世界的競争力を高める上でも、移動体通信向けの周波数帯確保とその有効活用には一層力を入れて欲しいところです。

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