楽天モバイルは2021年4月22日に急遽記者発表会を実施し、「iPhone 12」シリーズなどのアップル製品を、2021年4月30日より販売開始することを発表しました。販売されるのはiPhone 12シリーズ4機種のほか、第2世代の「iPhone SE」、そして「AirPods Pro」と、発表されたばかりの「AirTag」などとなるようです。

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Masahiro Sano Rakuten
▲楽天モバイルはアップル製品の販売を2021年4月30日より開始すると発表。発表されたばかりの「iPhone 12」のパープルモデルも扱うとのことだ

アップル製品、とりわけiPhoneシリーズは国内で圧倒的なシェアを持つ一方、これまで携帯4社の中で、楽天モバイルだけが取り扱っていませんでした。それだけ、楽天モバイルがiPhoneの販売を実現したことは、同社が契約を伸ばす上で非常に大きな意味を持つことに間違いないでしょう。

ですがiPhoneの販売以上に重要なのは、iPhoneが正式に楽天モバイルの回線で利用できるようになったことです。楽天モバイルのSIMやeSIMを使ってiPhoneで通話や通信すること自体はこれまでも可能でしたが、5Gが使えなかったり、楽天モバイルの回線とパートナー回線(KDDI回線へのローミング)が自動的に切り替わらなかったりと、いくつか制約がありました。

ですが今回のアップル製品販売に伴い、楽天モバイルの回線がiPhoneに正式に対応し、先のような制約がなく利用できるようになったようです。具体的にはiOS 14.4以降がインストールされているiPhone 6s以降の機種であれば、楽天モバイルの回線が利用できるとのこと。eSIMとeKYCによるオンライン契約にも対応することから、申し込んですぐ使えるようになるとのことです。

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▲iOS 14.4がインストールされたiPhone 6s以降のiPhoneであれば、楽天モバイルの回線で制約なく利用できるようになるとのこと

実はこの発表がなされる前日の2021年4月21日、楽天モバイルは5Gの対応エリアマップを公開し、5Gのエリア整備を進めている様子をアピールしていました。そうした動きは今回のiPhone販売の布石だったといえるのかもしれません。

ですが過去の経緯から、非常に多くの顧客を持ち、iPhoneを多数調達してくれる携帯電話会社でないと、iPhoneの取り扱いができないのではないか?という印象を持つを持つ人も少なからずいるかもしれません。それにもかかわらず、本格サービス開始から1年で楽天モバイルがiPhoneの販売にこぎつけられたのはなぜなのでしょうか。

理由の1つは、楽天モバイルの契約数が増えたことにあると考えられます。楽天モバイルは最近まで実施していた1年間無料キャンペーンや、月当たり1GB以下なら月額料金が0円になる「Rakuten UN-LIMIT VI」の開始以降、申込数が急速に伸びているようで、累計申込数は2021年4月8日時点で390万を超えているとのことです。

これはあくまで「申込数」なので実際の契約数とは異なることに注意する必要はあるでしょうが、楽天モバイルの説明によりますと、同社がMVNOとして提供しているサービスと合わせれば、契約数は既に450万回線を超えているとのこと。契約数が多ければiPhoneを購入してくれる顧客が多いことにもつながるだけに、契約数の増加がiPhoneの販売にこぎつけられた要因の1つといえるでしょう。

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▲楽天モバイルの契約数は、MVNOの契約数と合わせて450万回線超とのこと。契約数が増えていることは確かだ

ですがそれよりも大きいのが、アップル側がiPhone販売のハードルを引き下げている可能性があることではないかと考えられます。それを示しているのが、iPhone新機種が携帯各社のサブブランドから販売されるタイミングが、非常に早まっていることです。

実際2020年4月に販売された第2世代のiPhone SEは、その4か月後となる2020年8月に、「ワイモバイル」や「UQ mobile」といったサブブランドが販売を開始しています。またiPhone 12は2020年10月に販売を開始しましたが、やはり約4か月後の2021年2月にワイモバイルから販売されていますし、2020年11月発売のiPhone 12 miniは同じく2021年2月、つまり約3か月後にワイモバイルから販売されているのです。

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▲ソフトバンクがワイモバイルでiPhone 12を販売したのは発売から4か月後、iPhone 12 miniに至っては3か月後と、サブブランドとしてはかなり早い時期に販売開始している

ワイモバイルが初めて「iPhone 5S」を販売したのは、発売からおよそ2年半が経過した2016年のこと。その後ワイモバイルは、iPhoneの一部機種を発売から約1年遅れで販売する傾向にあったのですが、現在はそのサイクルがさらに縮まっている様子を見て取ることができるでしょう。

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▲iPhone 5Sが発売されたのは2013年9月だが、ワイモバイルから販売されたのはそれから約2年半後の2016年3月だった

なぜこれだけサブブランドで販売するサイクルが短くなっているのかといえば、政府の端末値引き規制が大きく影響しているものと考えられます。「実質0円」といったスマートフォンの大幅値引き販売が当たり前だった頃、その恩恵を最も受けたと見られているのがiPhoneです。

なぜなら携帯大手3社が、人気の高いiPhoneを他のスマートフォンより優遇して大幅に値引き販売し、さらに番号ポータビリティで転入してきた人に対しては何万円ものキャッシュバックも付けるという、非常に激しい値引き合戦を繰り広げていたからです。その影響でかつて日本はiPhoneが最も安く買える国とも言われ、それがiPhoneの大幅なシェア拡大に貢献したことは間違いないでしょう。

ですがその状況を問題視した総務省がスマートフォンの値引き規制を大幅に強化。2016年には総務省が「スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドライン」を打ち出して端末の実質0円販売を禁止していますし、2019年の電気通信事業法改正で、毎月の通信料をベースに端末代金を値引くという、大幅値引きの基となった販売手法そのものが禁止されています。

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▲2015年10月に、安倍晋三前首相の発言を受ける形で総務省が「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」を実施。これがスマートフォン値引きに厳しい規制が敷かれるきっかけとなった

その結果、大幅値引き販売の恩恵を受けられなくなったメーカー各社は販売戦略の大幅な転換を迫られたわけです。アップルもその例外ではなく、iPhoneの販売拡大のためさまざまな策を取るようになっており、それがサブブランドでの販売強化、さらには大手3社ほどではないとはいえ一定の規模を持つようになった楽天モバイルでの販売へとつながったと考えられるのです。

ただiPhoneが販売できるようになったからといって、楽天モバイルが優位になったのかといえば決してそうではなく、あくまで弱点の1つが解消されたに過ぎないのも事実。今後もエリア整備を中心に、多くの課題解決に取り組んで顧客の信頼を獲得する必要があることは忘れないでほしいものです。

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