コロナ禍の影響で、当初6月のサービス開始予定だった5Gを、9月末に延期した楽天モバイル。そしてタイムリミットとなる2020年9月30日というギリギリのタイミングで、楽天モバイルは5Gの商用サービス開始を発表しました。
改めてその内容を確認しますと、楽天モバイルはサブ6(3.7GHz帯)とミリ波(28GHz帯)の双方を同時に使ったサービスを開始するそうで、開始時点では北海道、埼玉県、東京都、神奈川県、大阪府、兵庫県の一部でサービスが利用できるとのこと。
また5G向けの料金プランは、従来の4Gに向けて提供している月額2980円の「Rakuten UN-LIMIT 2.0」を5G対応にした「Rakuten UN-LIMIT V」で対応するとのこと。こちらは5Gに対応する以外サービス内容に変更はなく、追加料金もないことから、従来の4Gユーザーは今後自動的にRakuten UN-LIMIT Vに移行するとのことです。
そうしたことから楽天の代表取締役会長兼社長である三木谷浩史氏は、大手3社のなかで5Gが最も安い料金で利用でき、「他社より約71%安い」とアピールしていました。5Gサービスのなかで料金が安いのは確かですが、発表内容を見ると「では実用的なのか」といわれれば疑問符が付く、というのが正直なところです。
最大の理由はやはりエリアです。同社の5Gエリア一覧を見ますと東京は世田谷区付近に集中していますし、それ以外の道府県は1、2か所という状況で、ほとんどの人は5Gを体験するのが至難の業という状況です。
また楽天モバイルの代表取締役社長である山田善久氏は、今後の計画として2021年3月末までに47全ての都道府県で5Gのサービスを開始するほか、2021年度の第二四半期にはスタンドアローン運用への移行を進めるとしています。ですがエリアの面展開に関しては言及がなく、「きちんとしたタイミングで説明したいと思っている」と答えるにとどまっています。
もちろん5Gのエリアが狭いというのは他の3社と変わらないのですが、他社がサービス開始当初から面展開のスケジュールを打ち出していたことを考えると、それを明確にしていないのは非常に気になるところ。その理由を考えると、やはり楽天モバイルに割り当てられた周波数帯が大きく影響しているといえそうです。
楽天モバイルには現在、5G向けとして3.7GHz帯と28GHz帯が割り当てられていますが、28GHz帯は広範囲をカバーするのに向いておらず、3.7GHz帯は衛星通信との干渉問題があることから基地局を設置できる場所が制限されるという弱点があります。KDDIやソフトバンクと同じように、4Gの周波数帯を5Gと共用すればいいのでは?と思う人も多いでしょうが、そもそも楽天モバイルに割り当てられている4G向けの帯域が1.7GHz帯の1つしかなく、4G側に与える影響も大きいため難しいと考えられます。
かといって、KDDIとのローミングに関してはあくまで4Gのみ。5Gはスタート時期が同じであることから山田氏も「将来的にも5Gで他社のローミングを受けることはない」と話しており、auの5Gエリアで楽天モバイルでも5Gが使えるわけではないようです。
しかも楽天モバイルは、5G以前に4Gのエリア整備を頑張らなければいけない状況です。その分4Gと5Gの整備を一体で進められるメリットはあるでしょうが、周波数割り当ての少なさを考えると、エリアの面展開はかなり時間がかかってしまうのではないか、という印象を受けてしまいます。
そうしたことからRakuten UN-LIMITが料金そのままで5Gに対応しても魅力が薄く、大手3社と競争するにはまだ至らないと感じてしまうのが正直なところであり、ここまでは予想の範囲内だったのですが、ある意味予想を裏切ってくれたのが端末です。
Rakuten BIG や Rakuten Hand の投入を発表
楽天モバイルはすでに5G対応端末として「AQUOS R5G」を販売していますが、三木谷氏はこれに加えて、新たにオリジナルの5G対応スマートフォン「Rakuten BIG」を発表したのです。これはその名前の通り、6.9インチの有機ELディスプレイを採用した大画面が特徴のスマートフォンで、映像やゲームなどで5Gの高速大容量通信を生かすことに力が入れられています。
ですがより大きなポイントとなるのは、フロントカメラをディスプレイに内蔵し、完全ノッチレスを実現していること。それに加えてボディデザインや、チップセットにクアルコムの「Snapdragon 765G」を搭載するなど、性能面を見てもZTEの「Axon 20 5G」にかなり近しい印象を受けます。
Rakuten BIGの製造はZTE、輸入元はZTEジャパンとされていることから、内容的に見てAxon 20 5Gをベースに開発した可能性が高いと見られています。IP68の防水・防塵性能やFeliCaを搭載するなど日本仕様をしっかり取り入れているというのも、国内携帯大手向けの端末の開発実績が豊富なZTEが開発したとなれば納得のいくところです。
さらに楽天モバイルは、5.1インチディスプレイを搭載した4Gのオリジナルスマートフォン「Rakuten Hand」も秋に提供することを発表しています。「Rakuten Mini」に続いてオリジナル端末を積極的に投入するというのは、自社ネットワークに対応した端末を増やしたい狙いが大きいといえますが、携帯大手ではすでに見られなくなってしまったものだけに非常に面白い動きといえるでしょう。
ただ、元々低価格なので実質1円でのバラマキ販売が可能だったRakuten Miniと比べると、Rakuten BIGなどは6万9800円と高額なことから政府の規制によって値引きに限界があり、その分在庫リスクが気になるところでもあります。オリジナル端末をいかに活用して契約を獲得していくかは、今後の楽天モバイルの戦略を占う上でも一目置いておきたいところです。
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