「楽天Suica」のメリットって何? 投入の狙いを読み解く(鈴木淳也)

楽天側の思惑は

鈴木淳也 (Junya Suzuki)
鈴木淳也 (Junya Suzuki), @j17sf
2020年05月28日, 午後 06:00 in rakuten
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Rakuten Suica Junya Suzuki
▲楽天ペイアプリの右上にSuicaペンギンマークが追加。ここをタップすると楽天Suicaのセットアップが開始される

あれは1年前の2019年6月5日、JR東日本と楽天ペイメントの2社は「“楽天ペイ”アプリを通じてのSuicaの新規発行やチャージが可能になる仕組み」を発表し、2020年春をめどに実際にサービスを提供していくとしていた。

「ようやく」という感じだが、ついにこの楽天Suicaの利用が可能になったので、実際の動作環境の紹介と合わせ、改めてその戦略を振り返ってみたい。

中身は「モバイルSuica」、アプリ経由のチャージには楽天カードが必要

本記事では「楽天Suica」とは銘打っているが、その実際は「モバイルSuica」そのものであり、単に楽天ペイのアプリ上でSuicaを確認すると楽天のコーポレートカラーである赤色のSuicaの画面が出現するだけだ。

モバイルSuica定期券などもそのままであり、Google PayやモバイルSuicaのアプリからも引き続きチャージが行える。基本的にAndroid端末では1つの交通系ICカードしか存在できないため(一部端末ではモバイルPASMOと排他形式で共存可能)、FeliCaのセキュアエレメント上に記録された交通系ICカードの記録領域を複数のアプリで共有している形になる。

ゆえに、すでにAndroid端末上にSuicaが存在している場合は、これを楽天ペイのアプリ上から認識する作業だけで済む。このあたりは「みずほWallet」のiPhone版で提供される「みずほSuica(通称:青Suica)」などとは異なる。

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▲楽天Suicaのセットアップ画面。チャージ200円ごとに1楽天ポイントが追加される点が特徴

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▲すでにモバイルSuicaを利用中の場合、利用許諾さえ行えばすぐにこの画面が表示される

新規発行の場合は最低1000円からのチャージが必要だが、楽天Suicaにおける最大の注意点がこの「チャージ」だ。

現在でこそ年会費なしでほとんどのクレジットカードを登録してチャージに利用できるモバイルSuicaだが、この楽天Suicaでチャージ登録が可能なのは「楽天カード」のみとなっている。そのため、楽天カードを持っていない筆者はこのチャージ機構を利用できない。

当然のことながら200円チャージで1ポイントという楽天ポイントにまつわる特典は得られないため、引き続きモバイルSuicaまたはGoogle Payを利用するしかない。

筆者の場合は定期券の購入やグリーン券などの購入もモバイル上で行っているため、基本的にはモバイルSuicaを利用しているが、その意味では楽天ペイ上で楽天Suicaを操作する機会はなさそうだ。

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▲楽天Suicaのチャージ画面。金額指定の柔軟性はGoogle PayやモバイルSuicaのがある

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▲チャージにはクレジットカード登録が必要。もともと楽天Edyや楽天ペイ連携のために楽天カードを登録している人は、そのままの設定でSuicaチャージが可能

またここまでに書いた通り、楽天Suica設定後も、引き続きモバイルSuicaやGoogle Payから残高を確認したり、チャージや定期券購入なども行える。現在楽天SuicaはAndroid専用となっているが、今後もしiPhone版が登場する場合には「みずほSuica」のような仕様になるかもしれない。

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▲モバイルSuicaの画面。残高が楽天Suicaと同じな点に注目

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▲Google Payの画面。やはり楽天Suicaと残高が同じことをチェック

楽天Suicaの狙い

正直なところ、『これ意味あるの?』と思われる方は多いだろう。楽天カード保持者であれば、この楽天ペイ経由のチャージで「楽天ポイント」と「JREポイント」の二重取りも可能なわけで(JREポイントに登録可能なSuicaは1枚だけだが、Androidは1枚のSuicaを共有する仕様なため、モバイルSuicaと並行利用しやすい)、その点ではメリットがある。

つまり『楽天カード利用者が楽天ペイをさらに便利に利用するためのサービス』というのが楽天Suicaの狙いだ。

楽天カード利用者にメリットがあることはわかった。では、なぜわざわざ楽天はJR東日本と大々的に提携を発表し、1年近い準備期間をかけてまで、一部ユーザー限定のサービスの提供を行ったのか、という疑問がわいてくる。

基本的には一部店舗での買い物でしか利用できなかった楽天EdyにSuicaが加わることで、公共交通が利用可能になるほか、ファーストフードやカフェなどで交通系ICしか対応しない店舗でも電子マネーによるタッチ決済が可能になる。確かに、この「出口」を増やすことは利用者の利便性につながる。だが、それは同時に「楽天Edyでは不十分」というのを示すことにほかならない。

楽天ペイメント代表取締役社長である中村晃一氏は、以前にインタビューの中で『Edyや楽天ペイなど特定の方式にはこだわらない。楽天カードや楽天ポイントを含めて楽天の経済圏全体でエコシステムをまわしていくことが重要』と述べていた。

つまり、前述の楽天ポイント入手のために『楽天ペイのアプリに楽天カードを登録し、Suicaにチャージする』という行為そのものが楽天のエコシステムをまわす材料となる。出口がEdyである必要はなく、人々が日々の活動の中で楽天が提供する何らかのサービスが介在できれば充分だというのが楽天の考えだ。

その過程で楽天ポイントが発生し、人々はそのポイントを消費するために楽天の経済圏へと再びやってくる。いまや取引規模で日本一に躍り出た楽天カードだが、楽天の金融や決済といった戦略はすべてこの楽天カードと、その結果として発生する楽天ポイントに集約される。

決済サービス各社によるキャンペーン合戦が一段落したいま、ポイント市場の争奪戦へと移りつつあるのが現状だ。このエコシステム形成のレースにおいて、楽天はその日本一といわれる「楽天カード」と「楽天ポイント」の力をもって市場をリードしている。

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