大逆転は無理? 楽天モバイル5Gにガッカリした理由(石野純也)

エリアの”狭さ”に衝撃

石野純也 (Junya Ishino)
石野純也 (Junya Ishino)
2020年10月7日, 午前 11:50 in rakuten
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9月30日に、楽天モバイルが5Gのサービスを開始しました。既報のとおり、料金は4Gから据え置きの容量無制限で2980円。RCSを活用した「Rakten Link」を通じて電話を発信すれば、通話料も無料になります。5G向けのプランではありますが、もちろん4Gも利用可能。楽天モバイルのエリア外では、auへのローミングになる点も同じです。

5Gの新サービス、新料金を発表した楽天モバイル

5G対応端末にも、自社ブランドを冠した「Rakuten BIG」を用意するなど、大々的にサービスをスタートさせた楽天モバイル。一方で、そのエリアの“狭さ”に衝撃を受けた人は多かったのではないでしょうか。楽天モバイルは、6つの都道府県でサービスを開始したと発表していますが、その中身を見ると、北海道、神奈川県、兵庫県は1カ所のみ。大阪府と埼玉県でようやく2カ所になり、最多の東京都でも14カ所にとどまっています。

5G対応端末として、Sub-6とミリ波に両対応したRakuten BIGも投入した

東京都の内訳を見ると、内13カ所が世田谷区の特定地域に集中していることが分かります。東京圏の土地勘がない人にはピンとこないかもしれませんが、これらのスポットは、いわゆる住宅街になります。残り1カ所も板橋区で、こちらも住宅街。本来5Gが必要とされるような、高トラフィック地域ではなく、意表を突かれた方が多いのではないでしょうか。

サービス開始時のエリアはスポット的。しかもなぜか住宅街中心に展開されている

しかも都内の住宅地の一部は、なぜかミリ波でエリアが整備されているとの話もあり、「なぜここに?」という疑問が浮かんできます。楽天モバイルの山田善久社長が「正直言って、他社も最初は全国津々浦々というわけではない。他社とそん色ない形でスタートできると考えている」と語っているとおり、確かにドコモ、au、ソフトバンクも5Gのエリアは非常に狭いのは事実です。

ただし、総務省に5Gの開設計画を提出した時点で、2024年時点の基盤展開率がもっとも低かったソフトバンクですら、3月のサービス開始時点では東京都でも千代田区や中央区などの混雑地域をカバーしており、スポット数も多く用意されていました。五十歩百歩と言えばその通りではあるものの、楽天モバイルは元々6月にサービスを開始する予定でした。新型コロナウイルス感染症拡大に伴う、海外ラボのロックダウンでサービスインが遅れていたはずですが、その間に基地局を増設できなかったのでしょうか……。

サービス開始時にソフトバンクが公開した5Gのエリアマップ。これでも十分狭いが、最低限、高トラフィックエリアに導入されていた

山田氏によると、2021年3月時点で「全都道府県でサービスを開始する」ことになっていますが、この基準だとドコモは6月に達成済み。大手3キャリアに、半年以上遅れを取っていることになります。しかも、KDDIやソフトバンクは、今冬から来年にかけ、4Gの周波数を5Gに転用する予定。iPhoneなどの対応端末が登場することを受け、「5G祭」(ソフトバンク 宮内謙社長)を開催するほど、一気にエリアを拡大していく方針を示しています。

山田氏(写真左から2番目)は2021年3月に全都道府県に拡大すると語ったが、詳細な計画は明かされなかった

正直なところ、このエリアや拡大計画を聞き、筆者は少々ガッカリしました。ある業界関係者には、「何をそんなに期待してたんですか……?」と高すぎる期待値をバッサリ切り捨てられてしまいましたが、「常識を覆す」をモットーにしている楽天モバイルだけに、何か秘策があるのかと思っていたのです。もっとシンプルに考えても、楽天モバイルが持つ4G用の周波数は1.7GHz帯の20MHz幅だけで、他社よりはるかに帯域は狭くなります。

そのため、ピークレートも256QAMと4×4 MIMOに対応する端末で400Mbps。256QAMなどに対応していない場合は、150Mbpsに低下します。楽天モバイルはエリア拡大を急いでいるものの、ユーザー数が増えれば増えるほど、帯域が足りなくなるジレンマを抱えています。他社のように4Gでキャリアアグリゲーションして容量を増やそうと思っても、それが難しいというわけです。となると、エリアと容量を同時に拡大するには、すでに過去の規格になった4Gより、5Gに注力した方が合理的です。

楽天モバイルが持つ4G用の周波数は、1.7GHz帯の20MHz幅のみ

競合他社との競争を考えたときにも、5Gのエリアを拡大するのは理にかなっています。4Gについては、現時点で10年近い出遅れがある一方で、5Gはスタート地点が2020年と4社共通。割り当てられている帯域幅もドコモやKDDIよりは少ないものの、4Gのような圧倒的な差はありません。そのため、例えば4Gからの転用も当初から活用しつつ、5Gで一気に差を詰めてくるのではないか……4Gの常識を5Gで覆してくれるのではとひそかに期待していたのです。

例えば、1.7GHz帯にDSS(Dynamic Spectrum Sharing)を入れて、今後のユーザーは5Gに集約させていけば、大手3社にとってもある程度の脅威になったのではないかと思います。4Gユーザーは割を食ってしまうことになりますが、まだ100万契約に満たないため、他社よりはマイグレーションもしやすいはずです。ところが、ふたを開けてみると、エリアは上記の通り。Sub-6とミリ波の同時スタートはしたものの、どちらもスポット的で、今後の見通しも不透明でした。

DSSを使えば、4Gと5Gを同一周波数で提供することが可能になる

転用に関しても慎重で、「4Gが1.7GHz帯しかないため、お客様への影響を慎重に検討する必要があり、今の段階で決まっていることはない」(広報部)といいます。完全仮想化を売りにした楽天モバイルは、「5Gレディ」なネットワーク構成であることをたびたびアピールしていました。であればこそ、ローンチ時から、料金プランだけでなく、もっと驚きのあるエリア展開をしてほしかったというのが筆者の本音です。


 

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