Ratchet & Clank: Rift Apart
Engadget / Insomniac

 PlayStation 5『ラチェット&クランク パラレル・トラブル』のレビューをお伝えします。

6月11日発売の『ラチェット&クランク パラレル・トラブル』(Ratchet & Clank: Rift Apart)は、19年続く人気シリーズ久々の新作であると同時に、まだ少ないPS5専用のタイトル。

2020年のイベントFuture of Gamingで公開されたときから、PS4では実現不可能なPS5ならではの作品、PS5の性能や独自機能でどんなゲームができるのか示すショーケースとして期待されてきました。

ここではゲームの概要と見どころ、プレイした印象とともに、 具体的にどこが「PS5ならでは」なのか、ゲームの面白さにつながったのかについて述べます。

ラチェット&クランク パラレル・トラブル(Amazon)

Ratchet & Clank: Rift Apart
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『ラチェット&クランク パラレル・トラブル』ここが楽しい!ポイント

まずはここがすごい!見どころ!から。

  • ピクサー映画のように豪華な体験。レイトレーシングなど最新技法と膨大な物量で描かれる、カラフルで奇想天外な多次元宇宙のビジュアル。魅力的で共感できるキャラクターを軸に展開するストーリー。

  • 武器「ガラメカ」ごとのユニークな戦略性と、PS5の描画性能・3D音響・DualSenseコントローラのギミックが噛み合い、撃って避けて走る基本アクションの手触りが楽しい

  • PS5の仕様から逆算した「リフト」による新感覚の演出と仕掛け

  • 開発元Insomniacのヒット作スパイダーマンに通じる、現代的に進化したゲームシステム。半オープンワールドなマップと、走り回るだけで楽しい高速移動。

まとめると「別次元の女の子版ラチェット」ことリベットが魅力的すぎて正直やばいので買うべき

Ratchet & Clank: Rift Apart
Insomniac

ポップな世界観のアクションゲームが好きなら、またPS5独占タイトルを堪能したいなら、多くの人に安心して勧められる作品です。

PSを代表するキャラクター『ラチェクラ』誕生19年

第一作の『ラチェット&クランク』がPS2で発売されたのは2002年。最新作パラレル・トラブルまで、シリーズの主要タイトルを手掛けるインソムニアックが開発しました。最近では『スパイダーマン』を大ヒットさせソニー傘下になったスタジオです。

Ratchet & Clank: Rift Apart
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基本をざっくりばっさりまとめると、主人公は猫のような大きな耳と毛皮をもつロンバックス族の生き残りで、機械いじりの好きな少年ラチェット。偶然出会ったロボットのクランクとともに銀河を冒険して、色々あって世界を救うヒーローになります。

Ratchet & Clank: Rift Apart
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シリーズとしては正伝外伝含めて10数作ほどがリリースされており、19年続いたことになっていますが、実際にほとんどのゲームが出ていたのはPS2とPS3時代。PS4では、不評だった映画版にあわせて、一作目のリメイク が2016年に一本出ているのみです(『ラチェット&クランク THE GAME』)。

今作パラレル・トラブルの前のできごとは2013年のPS3版Into The Nexusなので、メインシリーズとしては8年ほど止まっていました。このことを踏まえ、最新作では初めてラチェット&クランクを遊ぶ新しい世代のプレーヤー、シリーズを部分的にしか知らないプレーヤーでも初見で問題なく楽しめる独立した作品になっています。

PS4版のラチェット&クランクTHE GAMEから直接の続編ではないため、遊んでおかなければ分からないことはありません。(THE GAMEは初代のリメイクなので、もちろん先に遊んでおけばキャラクター理解は深まります。)

レイトレ利用グラフィックはPS5クオリティ。60fps RTモードも

PS5専用ゲームとしての分かりやすい特徴は、やはりグラフィックが優れていること。特にPS5世代で初めて実用的になったレイトレーシングは、主人公のひとりクランクのボディへの映り込みを始め、金属やガラス、水といった素材感やライティングのリアルさに貢献しています。

Ratchet & Clank: Rift Apart
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水溜りやガラスの反射がリアルだとゲームが楽しいのか?という話はもちろんありますが、今作はバラエティに富んだ惑星のビジュアルやキャラクターの実在感も含め、CG映画のような世界を冒険できる視覚体験が大きな要素。「SFは絵だ」という言い方がありますが、グラフィックの臨場感はストーリーテリングにも、アクションへの没入感にも直結します。

開発陣によると、今作はキャラクターや環境をデザインするアーティストに対して、まず使えるポリゴンやアニメーションの制約なしで作ってもらった初めてのソフト。自由な発想のキャラクターが生まれてから、どう動かすかをプログラマーが考える手法で作られたとのこと。

Ratchet and Clank
Sony

一方でアーティスト側はグラフィック性能の向上により、キャラクターの形状だけでなく素材感、金属なのか革なのか布なのか、光の透過率といった物理的な性質を従来以上に考慮して制作しています。

それはそれとして、設定では見栄えを重視した30fpsのグラフィックモードのほかに、滑らかな60fpsを優先したパフォーマンスモード、60fpsかつ部分的にレイトレも有効なかわりに内部解像度を下げるパフォーマンスRTモードも選択可能。解像度は全モードともダイナミック4K(シーンにより上下する)。

カメラを振る高速アクションで30fpsはきつい!というかたも、60fpsかつ高解像度かレイトレかを選べます。

DualSenseコントローラで「手触り」が楽しい

ソニーは「PS5ならでは」ポイントとして、高速ローディングに加え専用コントローラDualSenseのアダプティブトリガー(可変抵抗トリガー)、ハプティックフィードバック(高精度な振動)、そして3Dオーディオをアピールするのが定番です。

ラチェクラもソニー内製タイトルらしくフルに導入しており、武器「ガラメカ」はアダプティブトリガーの半押しでロックオン、抵抗を超えてフルに引き抜くと発射だったり、引く強さで単発とデュアルバレル同時発射といった使い分けをするものが大半です。

Ratchet and Clank
Sony

ハプティックフィードバックは武器の反動はもちろん、ホバーやグラインドといったアクションの反応や、風の強さなど環境の影響を手に伝える使い方。

アダプティブトリガーは大半のPS5タイトルで使われていますが、最初は感動しても5分経つと「指が疲れるからもう勘弁してくれ」と思うものも中にはあります。ハプティックフィードバックも、使い方に感動するものもあれば、何をやっても震えて手が痺れるうえに、何の振動なのか意図が伝わらないことも。

パラレル・トラブルでの使われ方は、他のPS5タイトルと比較してもおおむね分かりやすく機能的。武器とプレーヤーのスタイルによっては、その半押しの使い分け要らない、常に全開で撃つから単にトリガー重いだけ!となることもありますが、ラチェット&クランクでは武器「ガラメカ」ひとつひとつがキャラクターとして個性を持っており、ガシャン!キュイーン!!と派手なアニメーションで変形したり、効果音やハプティックを含めた撃つ快感を重視して作り込まれていることが特徴です。

その意味ではおもちゃをガシャガシャと動かす時の手応えや重みのように、アダプティブトリガーも撃ち分けの機能性を超えた手応え・手触りの演出として楽しめました。大量の敵に全力ショットを連打して手が疲れるのも、ここぞというタイミングで慌てて全押しして外し焦ったり、逆に使い分けを完璧にマスターして当てられるようになる習熟の楽しさも。

もうひとつのハプティックフィードバックは、効果音による演出と一体になって、音を手にも伝えるサブウーファーのようなもの。

設定には地面の感触や風なども伝える「体感的」と、ダメージなどゲームシステムに関わるものだけを伝える「機能的」が用意されているため、楽しめるうちは4D映画のようにアトラクション的に楽しみ、うるさくなったらオフや機能的を選んだり、振動強度を調整できます。アダプティブトリガーについても同様です。

Ratchet & Clank: Rift Apart
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3Dオーディオについては、前世代機も含めバーチャル立体音響を導入したゲームは多いため、「PS5ならでは」かどうかは怪しいものの、臨場感や没入感の演出としては有効。今作パラレル・トラブルでは個々の敵や飛び交う弾もそれぞれ独立した音源として扱われており、インソムニアックによれば音のオブジェクト数は1シーンで200にも上るとのこと。

特に敵はそれぞれユニークな声やセリフを持っていることが多く、純正のPulse 3Dヘッドセットで遊んでいると、乱戦中に後ろから敵のセリフが聴こえて慌てて回避することがあります。

PS5の仕様から生まれた「リフト」と二場面同時描画

今作がPS5の性能をフル活用した作品として注目されていたのは、単にPS5専用でグラフィックに凝ったゲームだからではなく、PS5最大の特徴であるSSDの速さを、一瞬で世界が切り替わる演出とゲームデザインに自体に導入していたことが理由です。

インソムニアックの開発陣によると、今作パラレル・トラブルは最初からPS5専用タイトルとして、PS5の仕様を前提に企画した同社初のゲーム。開発初期はまだソニー傘下ではありませんでしたが、近い関係を活かして早期からブリーフィングを受けており、突出していたストレージの転送速度をフル活用するコンセプトでゲームデザインが始まりました。

Ratchet & Clank: Rift Apart
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高速なSSDを活かす仕掛けとしてインソムニアックが選択したのは、『ラチェット&クランク』シリーズとして初めてストリーミングアーキテクチャを導入すること、ほぼ一瞬の場面転換をステージ内のギミックとして活かすこと、さらに二つのシーンを同時に描画する仕組みを開発すること。

ご存知のかたには大変いまさらな話ですが、ストリーミングは前世代あたりから一般的になった「シームレス」なゲームに使われる技術。マップやテクスチャを絶えずHDDから読み出しメモリに展開することで、最小限の暗転やロード画面で広いエリアを移動したり場面を転換できます

インソムニアックがPS4で大ヒットさせたオープンワールドなスパイダーマンも、このストリーミングアーキテクチャで作られています。しかしPS4ではHDDの転送速度が遅かったため、読み出すデータをいかに削減するか、あらかじめゲームの展開を予想してどうデータをパッケージングするかといった計画に多大なリソースが必要になり、レベルデザインやお話の展開自体も転送速度の制約を受けていました。

Ratchet & Clank: Rift Apart
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しかしPS5ではSSDからメモリへの展開速度が桁違いに向上したため、従来ならば暗転や「チョークポイント」(転送時間を稼ぐための狭い抜け道等)が必要だった大きな場面転換も、文字通り一瞬で可能になりました。

パラレル・トラブルでは、空間がガラスのように割れた次元の裂け目(リフト)をくぐる演出や、ひとつの惑星(ステージ)と別次元のバリエーションのあいだを、ステージ各所に設置された「クリスタル」を叩く一瞬で切り替えるパズル要素として使われています。たとえばグラインドレールを滑走中に瓦礫で道がふさがっていた場合、激突寸前に都合よく置かれたクリスタルを叩いて、まだ崩壊していない別次元に転移して避けるなど。

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 インソムニアックはさらに、二つの異なるシーンを同時に描くエンジンを使うことで、別の場所へ転移するリフトポータルを「開きっぱなしのどこでもドア」のように、空間の裂け目の向こうに別の空間がそのまま広がる窓のように描く演出も導入しています。

「どこでもドア」自体はゲームに頻出しますが、向こう側の広大で複雑なシーンが通常のゲーム中と同様にしっかり見えていたり、通過する途中で真横を向けば二つの全く違う場面が画面分割のように並ぶことはなかなかありません。

予告編で話題になった、「空間がバリンと割れるたびに全く違う世界に転移する」演出もこの技術によるもの。旧世代でも視点を固定してプリレンダと組み合わせれば概ね同じ見せ方はできたかもしれませんが、パラレル・トラブルではシームレスに、キャラクターの操作を保ったまま次元転移が発生することもあります。

この二つの場面・視点を同時に描画する技術は、ステージ間の「スター・ウォーズ」風ワイプにも、また基本のフック移動である「リフトテザー」でも使われています。リフトテザーは固定の場所に一瞬で移動できるよくある仕掛けですが、このゲームではキャラクターが引き寄せられるのではなく、別地点に開いた窓をこちらに引き寄せてくぐる不思議な感覚です。

PS5の高速SSDはいわゆるロードが早くなるだけと思われることもありますが、パラレル・トラブルでは独特のシステムやギミック、演出を実現している点が出色といえます。

「リフト」から生まれた世界観・キャラクター・物語

パラレル・トラブルがユニークなのは、新ハードならではの新技術そのものよりも、むしろ新技術からゲーム全体の世界観が生まれ、キャラクターと物語が一体化していることかもしれません。

インソムニアックによれば、超高速ロードを活かすため考案された転移演出から、もうひとつの世界、二つの次元という基本の世界観が生まれ、そこから「主人公がヒーローとして救わなかった世界」、「毎回撃退されてきたヴィランが皇帝として支配する別の宇宙で、レジスタンスとして戦うもうひとりの主人公」であるリベットが生まれました。

Ratchet & Clank: Rift Apart
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シナリオ上の仕掛けは、シリーズを通じた相棒だったラチェットとクランクが冒頭で離れ離れになり、クランクは別次元でラチェットとは異なる生き方をしてきたリベットと、ラチェットもまた新たに出会うキャラクターとチームを組んで冒険すること。

キャラクターそれぞれに共感できる感情と目的、不安や葛藤があり、ストーリーはキャラクター同士の会話や関係性を通じて展開します。ラチェクラならではの、主人公と背中に背負われたロボットの会話も映画的で自然。インソムニアックのスパイダーマンで、孤独にビルのあいだを飛び回りつつ携帯電話の会話でキャラクターを描きストーリーを進めた手法を思い出させます。

(勝手に進行する会話の途中でショップに入ると、主人公が「ちょっとごめん!」と話を遮ったことを詫び、買い物が終わると再開するといったゲームらしからぬ気遣いもあります。)

Ratchet & Clank: Rift Apart
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主要キャラクターはケモノとロボットと異星人でありながら、演技と表情、台詞も高水準。コミカルなアクションゲームでありつつ、物語でプレーヤーを引き込む技術もハードウェアの進歩とともに向上していることを実感させます。

アクションとしても現代化・半オープンワールド

「リフト」の技術やストーリーテリングについて延々と述べてきましたが、ゲームの中心であり基本であるアクションと探索もしっかり2020年代にふさわしくアップデートしています。ラチェットもリベットも最初期から距離の長い無敵ダッシュのファントムダッシュができ、戦闘中の立ち回りや回避、トラバーサルのアクションもプレーヤーの意図に機敏に応えてくれるようになりました。

グラインドとウォールラン、リフトテザーを組み合わせたトラバーサルのアクションは、ボス戦と並ぶハイライト。ボス戦と同時進行することすらあります。

Ratchet & Clank: Rift Apart
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惑星によっては開けたマップを自由に移動でき、好きな順序で敵の拠点やアイテム収集をする要素もありますが、いわゆるオープンワールドRPGやスパイダーマンのように複雑ではなく、メイン目的とサブ目的、いつでも回収に戻れる収集アイテム程度で負担になりません。

広いマップの移動には現地の生物など乗り物を使うことも、慣性をつけて高速に浮遊走行できるホバーブーツを使うことも。ホバーブーツは乗り降りの概念がなく常に使えるため、慣れれば狭い場所の立ち回りでもホバー加速を使った動きができるようになります。

Ratchet and Clank
Sony

基本の戦闘と探索に加えて、壊れた次元で主にジャンプアクションの技が試される「ポケットディメンション」、クランクが「可能性」を可視化した世界でレミングス風パズルに挑むパート、「コンピュータウイルスと戦うプログラム」グリッチを主人公にしたミニゲーム的シューティング面など、バラエティに富んだゲームが詰め込まれた賑やかさもこのゲームらしい点です。

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留意点

欠点というよりは、期待のコントロール的な意味で挙げるとすれば、

  • ゲームは普通にTPSアクション。「リフト」の超高速な場面転換や2シーンの同時描画はステージ中のギミックや演出として有効に使われますが、シリーズ伝統のゲーム性を大きく変えるものではありません。
    たとえばValveのPortalのように、プレイ感覚自体も異なる新ジャンルに変わったわけではなく、基本はラチェット&クランクらしい賑やかなアクションシューティングです。

  • ゲーム的ストーリーテリングの課題。絵もナラティブもピクサー映画を意識したことを感じさせる一方、ゲームなので進行はプレーヤーしだい。2時間で強制的に進み盛り上がりを製作者がコントロールできる映画とは別物です。
    主目標だけ追えばテンポよく映画さながらの展開が楽しめるものの、副目標を追っているあいだは当然ながら本筋は進みません。オープンワールドにありがちな、稼ぎ・脇道と物語展開のジレンマがあります。
    結果、エピソード単位ではキャラクターの葛藤がアクションと会話を通じて昇華する現代的な脚本でありつつ、全体構成としてはややぶつ切りのお使いツアー感。プレーヤーそれぞれのペースで進められるのはゲームならではの利点でありつつ、「まるで映画のような」に当てはまらない点でもあります。

まとめ

  • 『PS5ならでは』は確かに本当。PS4では不可能という意味で。PS5の性能から生まれた「リフト」システム、リフトから生まれた世界観、キャラクター、全体を貫く二面性のテーマまで、すべてがプレーヤーを引き込む楽しさに貢献している

  • 『PS5ならでは』か否かに全く興味がないプレーヤーでも、ひたすら豪華で手触りが楽しいアクション、見たこともない宇宙を冒険するビジュアルと魅力的なキャラクター、部分部分では盛り上がる展開でシンプルに楽しめる

19年近く続いたシリーズの新作ではありますが、独立しているため『ラチェクラ』デビューにも最適。アクションに抵抗がないなら気軽に楽しめPS5品質を堪能できます。一時は停滞していたシリーズの再始動にふさわしい高水準の作品です。

ラチェット&クランク パラレル・トラブル(Amazon)

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