本日(2021年10月25日)に東プレより発表された、REALFORCEシリーズの新世代モデル『R3キーボード』シリーズ。日本語配列モデル10種×2色=20モデルを一気に発表した同シリーズは、メーカーである東プレ側が「世代交代」と称するにふさわしい、非常に特徴の多いモデルとなっています。

静電容量無接点機構を採用した『Topreスイッチ』(今回ブランドが付けられました)による独特の、そして深い魅力を備えた打鍵感はそのままに、初のBluetooth/USB共用モデルを用意。さらに現行モデルより浅い0.8mmから設定可能となった“入力高さ可変機構”ことAPC、そしてゲーミングキーボード並に充実した本体オンボードメモリへの設定内容保存を備えるなど、便利かつ使っていて楽しい機能を備えています。

今回筆者も、このR3シリーズの製品を先んじて試すことができたので、実際に触れてみて実感した楽しさと便利さを紹介します。

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▲今回試用した『R3HA12』。テンキー付きモデルのため、本体重量は1.6kgと、堂々としたもの

今回試用したのは『R3HA12』。BluetoothとUSB兼用でテンキー付き、変荷重タイプ(打鍵する指によってキー荷重が変わるタイプ)という、REALFORCEシリーズの定番とも呼べる仕様のブラックカラーモデルです。

本体サイズは465×163×30mm(幅×奥行×厚さ)、重量は約1.6kg。REALFORCEシリーズは、打鍵時の剛性感や安定性を重視して非常に本体が重く、ユーザーからはともすれば「必要以上に」とも称されるほどのがっちりした構造が魅力なのですが、その点は今回もバッチリ継承されています。

なお同時にラインナップされるテンキーレス版は、サイズが379×163×30mmと、本体サイズでは幅のみが縮小する格好。重量は約1.3kgと、約300gほど軽量になります。


打鍵感は良い意味でそのまま

▲REALFORCEシリーズならではのこだわりの一つ、独特のキートップの形状も継承。手前側になるほど大きく傾いた、運指を楽にする設計です

さて、REALFORCEシリーズのファンにとっては、なんといっても気になるのはその打鍵感でしょう。

というのも、同シリーズが厳しい目を持ったファンから多く支持されるのは、第一に他のキーボードでは味わえない打鍵感を備えている点、と言い切ってよいからです。

筆者なりにその点を回答するならば、「自分もその心配はあったが、実際は一切心配不要だった」と呼ぶに尽きます。というのも良い意味で、基本的な打鍵感はシリーズを通しての“いつもの感覚”だったため(静音タイプキーの、という注釈は付きますが)。

まだ触れたことがない、という方向けに軽く紹介すると、東プレ側がフェザータッチと称するその打鍵感は、筆者なりに表現するならば「美味しいご飯のようなちょうど良さ」とも呼べるもの。

キーのぐらつきや押したときのブレなどは非常に少なく、途中まで押したらスコっと底まで押せて、また長期間使っていても疲れが少ない点などを美点とします。これらの良い意味でのクセのなさ(ただし、最初に触れた際などはちょっと面白い感触かと思います)こそがTopreスイッチのメリットなのですが、もちろんこうした点も引き継がれています。

▲歴代REALFORCEシリーズのキートップ形状がよくわかるのが、テンキー側のEnterとピリオドの角度差。このように、立体的な成型がなされているのです

そして、REALFORCEのキータッチに大きく影響しているキートップの形状に関しても、現行シリーズを引き継ぎます。実はREALFORCEのキートップは、最下段(最も手前)キーの角度が他社製品より大きく付けられている(中央側に向いています)点をはじめ、疲れにくい点を主眼とした形状となっています。

筆者としては、REALFORCEシリーズの隠れた、しかし重要な特徴だと考えるポイントの一つとして、実製品レベルで打鍵感が一定していること、すなわち製造時期やロットなどによる細かなブレが非常に少ないことを挙げているのですが、その強みを改めて感じた次第です。

今回の試用は2週間ほどでしたが、この「親の肩より叩いた感触」がそのままなおかげで、キータッチに関する違和感は一切ありませんでした。

今回のR3では、こうした点に関しても良い意味でシリーズそのまま。繰り返しとなりますが、従来モデルで静音タイプの打鍵感が気に入っている方は、ほぼ意識せずに乗り換えられるはずです。


REALFORCE R3 発表

しかし一方で、進化を遂げた部分もあります。それは上述したように、APC(アクチュエーションポイントチェンジャー)機能に0.8mm設定が加わった点。

このAPCとは、各キースイッチのオン位置(キーを押して反応するまでの深さ)を調整できる機能です。

浅く調整すれば少し押しただけでもオンになるため、相対的に軽く触れただけでも入力が可能となります。反対に深く調整すればそれだけ押し込まないとキーが反応しなくなるため、ミスタイプを防ぐ点で有利となります。

従来モデルでは1.5mmと2.2mm、3.0mmの3段階から設定できたのですが、今回はそれに加えて0.8mmという非常に浅い位置が設定可能となりました(なお初期値は全キーで2.2mmです)。

なお、この0.8mmという深さに関してですが、オン位置の短さで評価の高いメカニカルスイッチである『Cherry MX Speed Silver』(通称、銀軸)が1.2mm。一般的にはこれでも非常に短いとされているため、0.8mmというのは異例です(ただし例外的なモデルとしてはSteelSeriesの『Apex Pro』があり、最短0.4mmからの設定が可能です)。

さて、この「キーがオンになる深さが最短で0.7mm短縮された」という点は、当然ながら実際の打鍵感に対する影響も相応にインパクトを持ちます。

浅い位置でもOKということは、キー荷重を軽くする方向に繋がるため、より軽めに、スピーディーな入力が可能となります。実際の挙動も、確かに軽めなタッチでも反応するようになるのが印象的です。

ただし筆者は従来モデルでは1.5mmで使っていたのですが、その時点でもかなり反応が良かったため、1.5mmとの違いは大きく感じられませんでした。一方で、たとえば可能な限り反応速度を短くしたいゲーム用途などでは、この0.7mmは有効な差となるはずです。

▲専用アプリ『REALFORCE CONNECT』からのAPC設定。1キーごとに好みのオン位置を設定可能になります

なお、設定に関しては、キーボード本体からは全キーを一括で切り替えられますが、専用アプリ『REALFORCE CONNECT』を使うことで、1キーごとに設定できます。

▲『REALFORCE CONNECT』では、リアルタイムのキー深さ表示も可能に。画面下部中央付近の「キーストローク」で確認できます

また同アプリで面白いのは、特定のキーをあらかじめ指示しておけば、実際にどのぐらい推されているのかをリアルタイムのアニメーションで確認可能となっている点。実際の打鍵で必要な深さを確認できるということで、実用性がグッと高まっています。

さらにAPC機能用のオプションとして、キートップを取り外したあとのフレーム面に敷くゴムシート『キースペーサー』も用意されます(厚さは3mmと2mmの2種類)。ただし、R2世代では基本的に本体付属でしたが、別売オプションとなりました。

これは、物理的なキーの深さを制限することで打鍵を高速化するだけでなく、ゴムのダンパー効果によりタイプ音のさらなる低減効果もあるアクセサリです。

そして、実は大きなトピックが対応機種の拡充。これまでAPCに対応しているモデルはシリーズ中でも高価な機種に限られていたのですが、今回のR3キーボードではなんと全機種対応に。

さらに静音キー構造も対応機種が増え、有線/無線兼用モデルに関してはすべてが静音タイプに。従来の標準タイプは優先専用モデルのみとなっています。

この点も地味ながら大きなポイント。シリーズを通して見た強化という点では、従来の高級機仕様が普及モデルでも使える、ということになるため、ある意味で一番大きな強化点やもしれません。


▲ホスト側の切り替え操作は、Fnキーとフルキー側の1から5(5は有線)のコンビネーション。側面にガイドも明記されています

さて、今回のR3シリーズは東プレ初のBluetoothキーボードとなるわけですが、こう聞いてキーボードのヘビーユーザーが不安になるのが、Bluetooth仕様が古かったり、ペアリング台数が限られたりするなど、細かな使い勝手が劣るのでは? という点でしょう。

実は筆者もその点は一瞬不安だったのですが、すぐにいい意味で裏切られました。というのも、基本的な仕様などは、同社が製造パートナーとなっているHHKB Hybridシリーズのノウハウが活かされた構成となっているためです。

たとえば、Bluetoothでのホスト接続台数は4台。もちろん明示的な切り替えが可能で、さらに有線(USB)への明示的切り替えもOKです。実際の切り替え時間でも、タイムラグを意識することはありませんでした。

REALFORCE R3
▲Windows 10から認識した本機の状態。『REALFORCE_1』と、ペアリング番号も含まれたモデル名表記になるのがポイントです。バッテリー残量レポートにも対応するのも嬉しいところ。なお上側のモデル名は有線接続時です

さらにペアリング時などに表示されるモデル名は、『REALFORCE_1』など、使用している番号も表示される仕様。「どの番号でペアリングしたっけ?」のミスを低減してくれます。

加えてREALFORCE CONNECT上では、接続しているホスト名の一覧表示や、表示されているホスト名の変更も可能と、細かな使い勝手にも配慮されています。

そしてREALFORCEらしいのは「ホスト1台ごとに、キーボード側から明示的にペアリング削除ができる」点。

Bluetoothキーボードを使い慣れているユーザーはピンと来たことと思いますが、実はBluetoothキーボードでは、ペアリングの全リセットこそできるモデルが多いものの、キーボード側でペアリングが削除できるという製品は多くありません。

これにより、「一時的に接続して使うけれど、後でトラブルになりそうなので即座に設定を消しておきたい」といった状況でも、気軽に接続し、使い終わった後で設定削除が可能です。

▲バッテリーはこだわりの単3形乾電池タイプ。屋外などで切れた際の入手性という点でも安心度高めです

さらにバッテリーに関しても、こだわりの(そしてHHKBのBluetoothモデルと同様の)単3形乾電池×2本仕様。「キーボードの寿命が、実質的に充電式電池のサイクル数で制限されてしまう」という事態を防ぐ、長期に渡って安心して使える仕様です。

▲個人的にはひょっとしたら1,2を争うほど嬉しかったのが、このケーブル着脱可能仕様。REALFORCEシリーズを(故障しないので、結果的に)コレクションしていて「ケーブルがなんとかなれば……」と思っていたご同輩、ついに、です

さて、実は個人的に気に入ったのは、Bluetooth兼用となった点よりも、キーボードケーブルがついに取り外し式となった点です。

現行のREALFORCEシリーズは信頼性重視のためか、ケーブルは本体と一体型となっており、さらに非常に太い仕様。もちろん意味があってのことなのですが、しかし取り回しに関しては、正直邪魔に思ったことも数度ではありません。

対して今回のR3ではUSB Type-C端子での接続となっているため、ケーブルが取り外せて、さらに長さも選べるように、付属ケーブルは1.8mで、取り回しに配慮したL字型Type-C端子(ホスト側はStandard-A)を採用しますが、市販のデータ用ケーブルと交換することで、好みの長さやデザインで使えます。

ただしこれは、ハイブリッドモデル(Bluetooth・USB兼用モデル)のみの仕様。USB専用モデルは従来通りキーボード直付けです。

正直このあたりに関しては、歴代シリーズを使ってきたユーザーでないとなかなか伝わらないとは思うのですが、ともかくあのケーブルが外せるようになった、というのは、まさに取り回しに関しては革命と言って良いほどと嬉しいところです。


REALFORCEらしい配慮のシンプルモードに感動

シンプルモード時のWin 10からの認識。『HIDキーボードデバイス』として認識されているのが本機です

そして、もう一つ個人的に気に入ったのが『シンプルモード』と呼ばれる機能です。これは、Nキーロールオーバー(全キー同時押しを可能とする機能)やメディア操作キー(再生や停止、音量調整など)を無効にする代わりに、“HIDキーボードデバイスとして認識させる”モード。

と言われても、これだけでは一見すると機能を落とすようにしか見えないため「なぜ必要なの?」と思う読者が多いはず。実はこれ、「初代REALFORCEでは使えたキーボード切り替え器やOSが、REALFORCE R2では使えなくなった」といったユーザーの声に応えるためのモードなのです。

▲こちらは通常モード時の接続状態。このように、3基の『USB入力デバイス』として認識されるため「厳密にはキーボードではなかった」のです

実はREALFORCEは現行のR2世代となった時点で、上述したような機能をサポートするべく、『デバイスクラス』と呼ばれる機器情報上は「キーボードではないデバイスとして振る舞う」仕様となっていました。

しかし、一部のキーボード切り替え器やOSでは、デバイスがキーボードである点を認識して動作することから、「他のキーボードからREALFORCE R2シリーズに交換したら動作しなくなった」といった事例が発生したのです。

対して今回のシンプルモードは、「デバイスクラス上でも一般的なキーボードとして動作する」ように設計されたモード。これにより、R2では互換性のなかった機器でも使えることに期待できます。

ここまで聞くと、「キーボードがそこまで対応しなくとも、互換性のない切り替え器などを買い替えれば良いのでは?」と思われる方もいるでしょうが、実は開発での現場や特殊業務用途といったREALFORCEを支持するユーザーの間では、こうした切り替え器の交換が難しい業務もあります。

すなわち今回のシンプルモードは、こうした現場のユーザーからの細かな要求も汲んで、対応した……というモードに他なりません。実際に恩恵を受けるユーザーは多くはないかもしれませんが、このモードはある意味で、REALFORCEがユーザーを大事にしていることの証左ともなる機能、というわけです。


▲さまざまな意味で存在感ありまくりの電源ボタン。REALFORCEらしいといえばそうなのですが、正直好みは分かれる印象です

さてここまで、筆者が使ってきて印象的だった機能を紹介してきました。

このほかにも今回のR3世代では、「キー配列やAPC設定を2パターンまで記憶でき、本体の電源兼用スイッチで選択できるオンボードメモリ」や、REALFORCE CONNECTによる全てのキーの割り付け変更可能なキーマップ設定といった、ヘビーユーザーの要求に応える機能も多数追加されています。

さらには天板を外して透明パネルに交換することで、専用シートで外観カスタマイズができるオプションの『パネルデザインキット』など、良い意味で従来のREALFORCEシリーズの印象を覆すような機能も導入されたことで、より幅広いユーザーへのアプローチも狙っています。

▲手持ちのREALFORCE R2テンキーレスモデル(上)との比較。こうして見比べると、かなりのデザイン変更となっている点がわかります

一方で、外観に関しては、REALFORCE R2世代で進めたナローベゼル化やスクエアデザインを初代に近い印象に戻すなど、かなり思い切った路線変更がなされています。

とくに右奥に設けられた電源スイッチ(兼キーマップ切り替えスイッチ)などは、正直なところR2のコンパクト設計が好きだった筆者には、若干ながらうーん、となったところ。

ただし裏を返せば、この大きな電源ボタンは、着実な操作を是とするREALFORCEらしい設計でもあります。

▲また、R2世代との大きな変更が、スペースキーの短縮と、それによる最下段キーの位置変更。ここはR2で賛否両論だったため、タッチタイピング重視ユーザーからの要望と思われる点です

REALFORCEシリーズは、今や「日本が世界に誇る」という定型句が誇大宣伝にならないほど、世界中のヘビーユーザーから信頼される、高級キーボードの一大ブランドになりました。

その美点を引き継ぎつつも、大きな命題だったワイヤレスへの対応や、さらなる高速入力への要求対応などを見据えたR3キーボードシリーズは、まさに東プレが考えるこれからのREALFORCEを体現した製品と呼べる進化ではないでしょうか──今回試用してみて、そうした思いを実感している次第です。

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