Returnal
Housemarque / Sony

PS5『Returnal』(リターナル)のレビューをお伝えします。『Returnal』はフィンランドの老舗スタジオ Housemarque が開発、ソニーが販売する「新感覚ローグライクTPS (三人称視点シューティング)」ゲーム。PCでもPS4でも遊べないプレイステーション5独占の完全新作です。

お話は

「姿を変え続ける謎の惑星“アトロポス”に墜落した宇宙飛行士セレーネ。脱出の方法を探すため、謎めいた廃墟の広がる荒地を探索していた彼女は、異形の敵に襲われ、命を落とし――なぜか墜落の瞬間に戻り、再び脱出の旅を始める運命となる」。

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狭いシップから毎回スタートするメトロイド感
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要は映画「エイリアン」のような異星文明遺跡探索ホラーSFの世界観に、死んでも戻されるループものを掛け算した設定。この星で何が起きているのか、どう脱出するかの謎解きメインストーリーと、毎回マップや装備が変わるローグライクのシステムが巧みに噛み合っています。

軽快な三人称視点シューティングであると同時に探索要素も多く、装備が増えるたびに新しいアクションが増え、行動範囲が広がる楽しさはまさに「メトロイド」の感覚。

いわゆる「メトロイドヴァニア」とローグライクとの掛け合わせは悪魔城が残って「ローグヴァニア」と呼ばれますが、リターナルは世界観やゲームの進行も含めあらゆる点で直球オマージュが多いメトロイドを残してローグメトロイドシューターとでも呼びたい作品です。

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「SF x ローグライク x シューティング」は特に珍しくなく、『Risk of Rain』シリーズなど人気作もありますが、リターナルの特色と面白さを挙げれば:

  • 高速ローディングや3Dオーディオ、4K60fpsの高精細で滑らかな描画など、PS5の性能を存分に活かした没入感

  • アーケードライクなシューティングを作り続けてきた老舗Housemarqueらしい快適な操作感

  • ローグライクのランダム要素と「ループのたびに恒久装備や持ち越し要素が増えてゆく/物語のピースがはまり全貌が明らかになってゆく」のバランスで飽きさせない進行

  • 「エイリアンもの」「ループもの」に主人公の過去やサイコスリラー、ホラー要素を組み合わせた、謎が謎呼ぶストーリー

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滅んだ異星文明で機能を続ける物質合成機。つまりお店。ビジュアルがいちいち荘厳
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20時間ほど遊んだ結論から述べれば「発見と習熟の進行バランスが絶妙。死んでも即再挑戦したくなる、止めどきの分からない中毒性あり。インディー規模と思い込んでたら大間違いでしたごめんなさい」。ついでに「3Dオーディオの実感はPS5トップクラス」「ホラーとしても一級。『宇宙飛行士』超怖い」。

動画やプレイを見て少しでも気になっていたゲーマー、運良くPS5を入手して何か独占作が欲しいプレーヤーには、アクションが特に苦手でないかぎり安心して勧められる野心的快作です。

残りは実際にプレイした感想や小ネタ、ここがすごい!を適当に。

不要なストレスを廃したアクションの完成度

いくらコンセプトが野心的でもお話が面白くても、くり返し遊ぶゲームとしては基本の操作感が快適でなければ話になりません。この点では、リターナルのアクション/シューティングは非常に高い水準。

チュートリアルが終わった段階で、主人公はクールダウンの短い無敵ダッシュと、雑魚ならまとめて必殺の近接ブレード攻撃、疲労せずいくらでも走れて速いスプリント能力を備えています。段差登りの性能も高く、ジャンプが届かない足場にもダッシュで上半身がぶつかれば登ってくれる程度です。

すべての武器は残弾が自動回復かつ無限、Gears of Warのアクティブリロードのような「オーバーロード」があり、リロード待ちキャンセルや追加効果があります。

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みんな大好き近接ブレード武器。雑魚なら必殺
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また比較的早い時期に「イカロス・グラプネル」、いわゆるグラップリングフックを入手可能。特定ポイントにだけ引っ掛けられる隻狼式ですが射程が異様に長く、ステージを縦横に高速立体機動できるようになります。

高低差のあるマップが多い一方で落下ダメージなし。数十メートル落ちてもスーパーヒーロー着地をキメてこともなげに走り出します。足場がない奈落に落ちるとミスになりますが、即死はせずダメージで仕切り直しです。

セレーネは初期状態でもとにかく脚が早く、その気になれば敵の群れを突っ切ることもできるほど。ループで上がったプレーヤースキルに応えてくれます。

恒久装備とループをまたぐ進行の妙

死ねば装備もステータス効果も失いスタート地点に戻る一方で、フックなど死んでも消えない恒久装備が進行に応じて増えるため、同じ場所でも快適に高速に踏破できるようになります。

「エーテル」はループ持ち越しで蓄積できる貴重なリソース。死んでも途中復活できるコンティニュー装置「リコンストラクター」を使ったり、新しいアイテムを永続解禁したり、オボライト(お金)に変換してアイテムを生成したり、悪性因子の除去に使えるほか、逆にオボライトをエーテルに変換する設備もあります。

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つまり装備の引きが神懸っていたり、今日こそは腰を据えてあのボスを倒す!気分のときはここぞとエーテルをつぎ込めば有利に進められる一方、短時間だけ気楽に遊びたいときはお金を装備拡充ではなくエーテルに変えて来世に功徳を積む、コツコツ稼ぎ周回プレイも選択できるシステムです。

この恒久装備などアイテムのアンロックと「エーテル」の組み合わせで、完全にゼロからのやり直しにならず退屈しづらく、ループのたびに全体が進行して興味を持続するのが巧みな点。

マップはあらかじめ作り込まれた地形や敵配置の「エリア」単位に分かれており、ループごとに相互接続や配置アイテムが変わるタイプ。なので死に覚えることで、キャラクターは非力でもプレーヤーが前世知識で強くなる、まさにループもの主人公の感覚を体験できます。

戦闘はアーケード感ある弾幕アクション

敵はバラエティに富んだ攻撃をしてきますが、雑魚もボスも弾幕を張ってくるのが基本。光のパーティクルが画面を覆うのはHousemarqueの過去作を思い出させます。高速+弾幕はニーア・オートマタに近いかもしれません。

冗談のような弾幕を展開してくる敵もいますが、セレーネはスプリントが速いため走って大きく避けることも、見切って無敵ダッシュですり抜けることもでき、見た目ほど神経を使った避けは要求されません。

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キレ気味のボス
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広いステージが多く、長射程の飛び道具で安全に倒すこともできますが、敵がドロップするオボライト(お金にあたる原料)はその場に飛び散って数秒で消えるようになっています。積極的に斬り込んでリスクを取ればお金も貯まり,プレーヤースキルが上がるほどテンポ良くなる仕組みです。

何度も死んで繰り返すことが前提なので、全体に難度は高め。しかし初見では圧倒されるボスや苦手な中ボスも、武器を変え装備を変えて挑むうちに攻撃のパターンが見え、冷静に対処すれば装備よりもプレーヤーのスキルで勝てるようになります。常に無敵ダッシュがあるため、覚えのあるゲーマーならボス初見撃破も道中の展開によってはできる程度の調整。

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初手でわざわざ警告される「本作は意図的に難易度を上げています」。それでもデイゼロパッチで簡単になりました。
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デイゼロパッチで全体に難度が下がりリソースも優しくなったため、最序盤で混乱したまま死ぬストレスさえそういうものと乗り越えれば、キャラクターもプレーヤーもループで強くなってゆきます。

不運や失敗も楽しめるローグライク要素

ローグライクの醍醐味はやはり、思わぬ装備や効果、アイテムの組み合わせで常に新鮮なプレイが楽しめること。

デメリットを持つアイテムもありますが、太古のローグと違い未鑑定で毒を飲まされるようなことはなく、事前にリスクとリターンを考量して判断できるようになっています。確率発生の場合は目安が色分け表示されたり、マイナス効果が発生する場合は長押ししないと入手できないなど親切設計です。

たとえばスーツに取り付く「パラサイト」は、強力なプラス効果とマイナス効果が必ずセットになった装備。任意では取り外せず、特定の消費アイテムや設備が必要になるため、寄生させるかどうかで悩み、させたあとは剥がすまで通常とは違ったプレイが求められます。

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確率リスクを負えば入手できる「悪性アイテム」と「スーツ故障」も面白い趣向。お金にあたる「オボライト」、体力(スーツ耐久力)を回復したり上限を上げる「シルフィウム」「シルフィウム・レジン」、各種アイテムの入ったコンテナなどは、リスクなしで取得できる通常のものと、見るからにヤバいオーラに包まれた「悪性」バージョンが存在します。

悪性因子に汚染されたアイテムは、取得すると一定確率でスーツが故障して、修理しないかぎり続くマイナス効果が付与されるシステム。この「故障」は専用アイテムでも直せますが、故障ごとの条件を満たすことでも修復できます。たとえば「マップが暗号化される(見にくくなる)」故障が、「近接攻撃で敵を倒す0/3」で修復など。

近接攻撃で数匹倒すのは通常ならば容易ですが、たまたま飛行型の敵ばかり出てくる環境ならばジャンプ斬りや空中ダッシュ斬りなど、普段はやらない行動が必要になります。つまりは「敵を全滅させてアイテム回収して次へ」以外の小さなオブジェクティブを発生させプレイ感覚をかき回す効果です。

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ループものとして同じステージと同じ敵の組み合わせを周回することになりますが、発見した武器のセカンダリファイヤや追加効果の組み合わせ、装備アイテム「アーティファクト」のメリットと「パラサイト」のデメリット、ランダム発生した故障の修理など毎回状況が変わり、パニックになりながら何とか戦略を立てて生き延びるのはなんとも言えない楽しさです。

ときには不運としか言いようがないめぐり合わせや、順風満帆のはずが信じられないようなミスで窮地に陥ることもありますが、「ロードしてやり直し」が存在しないゲーム性ゆえに、そこから何とか立て直したり、無理そうでも次のループで有利になるためと切り替えて楽しめます。

実はホラーとしても出色の演出

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「異星の廃墟を調査するうち、文明を滅ぼした元凶と遭遇」は実にありふれた筋ですが、リターナルは何故か繰り返される死のループと、主人公の過去にかかわる秘密を組み合わせたストーリーが独特。

ループも単純な時間の巻戻りではなく、主人公は初めて降り立ったはずの惑星で死後長い時間を経た「自分の遺体」を発見し、残した記憶のない音声ログで自分の声を聞いて、ここで何が起きているのか/なにが起きたのか/起きようとしているのかを把握しようとします。

ありふれた「音声ログを拾ってお話が展開」を、ゆく先々に落ちている自分の死体から記憶にない自分の音声メッセージを回収して展開に捻っただけでも痺れる発想ですが、異星文明が滅びた理由を調査するうち少しずつ正気を失ってゆく別の自分の声を現在のセレーネが聴き、「何いってんだこいつ?」的に時間差セルフツッコミを入れるなど、どう反応してよいのか分からないシュールで悪夢じみた脚本も魅力です。

この「やたらと自分の死体が落ちている」は、別のプレーヤーの死体を発見してアイテムを回収したり、倒した敵に復讐するオンライン要素とも噛み合った演出。もちろん「他の宇宙飛行士の遺体」ではなく、記憶にない別ループの自分の死体を発見する見立てです。

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エイリアン遺跡より不穏な「捨てたはずの実家」
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異常な現象は死のループだけでなく、異星に突然、主人公が育った地球の家屋が現れるという、「ソラリス」「2001年」的な展開も。生と死、過去と現在も曖昧な状況で、主人公はここにあるはずのない「家」を訪れ、恐ろしい体験をすることになります。

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敵性クリーチャーより遥かに怖い
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具体的なネタバレは避けますが、この別ゲームのような「家」の効果は絶大。異星のクリーチャーや防衛ロボットといった敵はいくら恐ろしげでも、悪い意味で死を克服している主人公セレーネにとっては機械的に倒す障害でしかありませんが、この「家」と主人公の過去を巡る展開のおかげで、物語全体にただのエイリアン討伐ヒャッハーではない謎と、悪夢のような不安感を漂わせることに成功しています。

そのほか

  • セレーネの日本語吹き替えはベテラン声優の小山茉美。ほぼ孤独に探索を進めるゲームながら、上述の音声ログや心情吐露で意外と喋るため、フルボイス吹き替えが用意されています。

  • テキストの設定も膨大。周回しながら埋めてゆく要素のため、雑魚敵から膨大な武器・装備、アトロポス調査に至る経緯、主人公の過去まで、ゲーム内の報告書やデータベースとして読ませる解説を用意しています。ゲーム的な都合の弾数無限やアイテム効果の原理について、いかにもなSF科学風用語で説明を試みる点、ところどころ閲覧制限や欠損といった伏せ字で雰囲気を出すありがちな演出も楽しめる点。ただし言語設定はテキストと音声を別にできないため、PS5本体設定で全部変えるしかありません。

  • 3DオーディオがPS5トップクラスに有効。異星の密林に降る雨や砂漠を吹き抜ける風といった環境音から、敵や仕掛けが発する音まで没入感が高く、特に敵や弾の位置、「階上に何かいる足音」などは3Dオーディオの効果を実感できます。ヘッドホンを使い、3Dオーディオ設定で「音源の高さ」キャリブレーションをしておくことが推奨です。

  • グラフィックの緻密さ、空気感も水準以上。ギーガー的なバイオメカニカル、あるいは朽ちかけた太古の遺跡から不気味に脈動する機械が覗く世界観はド定番のSF遺伝子ですが、作り込みの質も量も高く、見せ方に工夫があるため、異星文明遺跡探索の雰囲気も楽しめます。

  • DualSenseコントローラの独自機能も(一応)導入。たとえば武器のセカンダリファイアは専用ボタンを押すのではなく、L2トリガーのエイムフォーカスを半押し(半引き?)しながらR2トリガーを引けば通常弾、L2を全部引ききってトリガーならセカンダリファイア。
    無理やり使わされた感がなくもありませんが、デュアルセンスのアダプティブトリガーは半分引いた時点に抵抗を持たせることができるため、普通のTPSやFPS的に狙って撃つと通常弾、力を込めて引き抜けば特別なエイム演出で必殺ショットのように、コントローラを使った演出として機能しています。

注意点など

  • アクション難度は比較的高め。ロードしてやり直しがなく、敵も資源も有限のため「レベルを上げて物理で殴る」がしづらいシステム。壁にぶつかったときはある程度アクションゲームとしての学習や試行が必要になります。とはいえアクションやシューターのなかでは特に外道ではなく「歯ごたえがある」程度。逆にローグライクなので、これは行ける!というループに前述のエーテルをつぎ込めば難度は下げられます。

  • システムも「発見」が必要。 セレーネは見知らぬ惑星で説明不可能なループ現象に見舞われるため、最初は「何が何だか分からない」状態です。ゲームとしての基本はしっかりチュートリアルがある一方、マップ中に存在する異星文明の設備なども含め初見ですべてが説明されることはなく、試行錯誤と失敗もゲームの要素に組み込まれています。
    一般的なゲームではせっかくうまく進行していたのに急な不運に見舞われれば何だこのゲーム!となりますが、リターナルでは失敗して学ぶことが成功と頭を切り替える必要があります。

  • 中断セーブすらない。途中で別ゲームができない。驚いたのが、通常のセーブ・ロードはともかく、ロードからやり直しを封じた「中断セーブ」すらないこと。ループ中に休憩するときは、PS5の電源を切らずレストモード(サスペンド)を使うよう指示されます。
    装備の引きが良く長時間死なずにドキドキしながら未踏の地を攻略しているとき、たとえばPS5のマルチプレーヤーゲームに誘われたら、捨てるか断るか選ばねばなりません。
    何らかの中断セーブや、あるいはPS5自体に複数ゲームを終了せず切り替えられるクイックレジューム的な機能がほしいところです。

完全な余談。開発スタジオHousemarqueはフィンランドで1995年創業の老舗。特にアーケードライクなツインスティックシューターで知られています。

代表作は1990年代から続く360度シューティング『Stardust』シリーズ。2007年のPS3版『Super Stardust HD』やPS Vita版『Delta』、PS VR版『Super Stardust Ultra VR』もありました。日本のプレーヤーにも、PS4の初期にPS Plusフリープレイで配布された円筒周回シューティング『Resogun』で記憶に残っているかもしれません。

ごく個人的な偏見と勘違いの話で恐縮ですが、スターダストやResogunはお気に入りゲームの上位に入るほど延々と遊んでおり、Housemarqueの新作なら自動的に買うか程度の信頼感はありました。

今作も確実に「そこそこ」楽しめるだろうとは思っていたものの、従来作が比較的小規模な作品だったこと、「ローグライクTPS」のジャンルから漂う「Steamですごく安くセールしてるインディーゲー感」、そして発売間もない次世代機の独占作という、宣伝効果は求められる一方で大規模セールスは望めないためある意味で捨て玉的、実験的に使われるリリースの形態等々から、せいぜい小品に毛が生えた中規模程度、フルプライスで売るのはどうなの程度の認識でプレイしました。

ところが蓋を開けてみると、ステージから武器装備に至るコンテンツの作り込み、孤独なローグライクなのにフルボイスとシネマティックで展開するホラーストーリー演出など、質・量ともに大作と言って恥じない風格。リプレイを通じて進行する全体ボリュームもあり、「Housemarque初のAAAタイトル」は誇張ではありませんでした。

スターダストやレゾガン、Alienationやマターフォールのファンならもちろん、運良くPS5を入手できて独占作を物色しているなら、あるいは続編定番でない毛色の変わったアクションシューティングやローグヴァニアが遊びたい、『レリクス』的世界観やSFホラーが好きなら文句なく勧められる作品です。

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