地球全体、5日後までの雨予報をWebで――理研とJAXAが公開

衛星とスーパーコンピューターによる地球全体の降水予報です

大和哲(Yamato Satoshi)
大和哲(Yamato Satoshi)
2020年08月27日, 午後 01:00 in news
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理研による降水予報ページ
▲理研による気象予報ページ。関東、関西にフォーカスした予報もある

理化学研究所(理研)、千葉大学、東京大学、宇宙航空研究開発機構(JAXA)ら国際共同研究グループが、衛星データとスーパーコンピューターによるシミュレーションを組み合わせて行なう、「世界を網羅する向こう5日間のリアルタイム降水予報」の提供を2020年8月20日からインターネット上で始めています。

これらは、

理化学研究所天気予報研究:ホーム

JAXAの降水情報ウェブページ「GSMaPxNEXRA 全球降水予報」

で見ることができます。

JAXAによる全球降水予報
▲こちらはJAXAによる予報ページ。全球予報が非常にわかりやすく表示されている

このシステムは、国際共同研究グループが2013年から行ってきた「衛星による降水予測の高度化」研究プロジェクトの成果です。

人工衛星は、宇宙から雨雲を測定するため、雨量計の有無にかかわらず、広い範囲を一様に観測できます。そこで、降水レーダーを搭載した全球降水観測(GPM)衛星により、世界中の現在の降水量を測定した「衛星全球降水マップ(GSMaP)」を、JAXAがリアルタイムで提供しています。

今回のプロジェクトは、この衛星で得られた現在の降水量から将来の降水量を予測するという方法を元にしています。


実はこれまでも、衛星からの降水量データを元にした予測手法はありました。「降水ナウキャスト」と「数値天気予報」という二つが知られています。

「降水ナウキャスト」は、観測データによる直近の降水分布の動きを捉え、それがそのまま持続すると仮定して、将来の降水分布を予測する方法です。雨雲の発生や発達などの気象学的なメカニズムを考慮しないため、計算が単純で高速にできますが、予測時間が長くなると精度が急速に低下するという問題があります。

一方、「数値天気予報」は、気象学的なメカニズムを考慮したシミュレーションに基づく方法です。ただ、原理上、予測時間が長くなっても降水ナウキャストより精度を高く保てますが、スーパーコンピュータを使った複雑な計算を要します。

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▲今回のプロジェクトでは、降水ナウキャストと数値天気予報という2種の予測技術を連携し、精度と計算量とのバランスを図っている(理研 ニュースリリースより)

対して、2013年から始まった今回のプロジェクトでは、より正確な降雨予測を行うための技術開発から着手しました。

まず、気象衛星からの観測データを、高度なコンピュータモデルに頼らずに、「ナウキャスト」に「データ同化」手法を取り入れることで予測精度を向上した、いわば改良型ナウキャスト技術の開発です。

降雨ナウキャストでは、降水分布の場所ごとの雨風の移動の方向や速さ(移動ベクトル)を捉えることが重要ですが、刻々と変動する降水分布の画像データから安定した移動ベクトルを得ることが難しいという課題がありました。これに対して数値天気予報で用いられるデータ同化の方法を応用することで、移動ベクトルがより安定的に算出するようにしたのです。

この改良ナウキャストを12時間後までの降水予報に適用します。

次に、数値天気予報モデルNICAM(非静力学正20面体格子大気モデル)と局所アンサンブル変換カルマンフィルタLETKFを組み合わせた「NICAM-LETKF数値天気予報システム」を新たに開発し、衛星全球降水マップ(GSMaP)を同化する手法を開発しました。

これによって、気象学における難問の一つだった「降水観測データを数値天気予報に用いること」ができるようになりました(ちなみに、このNICAM-LETKF数値天気予報システムはJAXAのスーパーコンピュータ『JAXA Supercomputer System Generation 2; JSS2』に実装され、現在も世界の気象リアルタイムNEXRAとして公開されています)。

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▲「世界の気象リアルタイムNEXRA」

そして今回公開された理研の「天気予報研究」およびJAXAの「GSMaPxNEXRA 全球降水予報」では、降水予測のさらなる高度化として、降水ナウキャストによる12時間後までの予測データと、NICAM-LETKF数値天気予報システムによる5日後までの降水予測データの二つの異なる降水予測データを統合して、一つの高精度な降水予測データを作成する新しい手法を使っています。

これにより降水ナウキャストと数値天気予報を統合した高精度降水予測が、12時間後まで可能になったのです(12時間後から5日後までは、降水ナウキャストの予測精度が低下するため、数値天気予報のみが用いられています)。


プロジェクトを主導している理化学研究所計算科学研究センターの三好建正氏は、「気候変動によって気象パターンは変化しています。その被害を軽減するためには、より正確な降雨予測を行うことが非常に重要です。衛星データを用いた研究が、特に観測能力が限られている地域での大雨や干ばつによる被害を防ぐために役立つことを期待しています」と述べています。

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▲理研が2020年より試行運用中のスーパーコンピュータ「富岳」。

そして降水予測は、これからも継続的に進む研究でもあります。理研では、今後はスーパーコンピュータ「富岳」を用いて降水予報の更なる高度化に取り組む予定です。

Source:理化学研究所

 
 
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