ロシア「初の新型コロナワクチン」は治験未完了で承認?安全性に懸念

WHOも「臨床試験の第1段階をクリアしたに過ぎない」との見方

Munenori Taniguchi
Munenori Taniguchi, @mu_taniguchi
2020年08月13日, 午後 08:00 in vaccines
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NurPhoto via Getty Images
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いち早く完成させれば世界中での需要が見込めることもあり、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンは、現在世界中の研究機関やNGOが開発をすすめています。

そして今週、ロシアのプーチン大統領は「世界で初めて、新型コロナウイルス用のワクチンを承認した。私はそれがかなり効果を発揮し、安定した免疫を患者に与えると聞いている」と述べ、自身の娘のひとりにもすでに投与したと語りました。

ただし、世界の医学研究者らは、ロシアが本来なら複数の段階に分けて行うべき治験が未完了だと考えています。

プーチン大統領は”スプートニクV”と呼ばれるそのワクチンを、医療従事者から学校の教職員、さらに年明けには一般市民にも順次供給していくことを約束しました。しかしこのワクチンがどのようにして開発されたか、そして科学的データなどはほとんど情報が出ていません。また必要な試験がごく少数規模でしか行われていない可能性が高いとみられています。

スプートニクVは開発開始からまだ日も浅く、8月15日までの治験のため募集したボランティアの登録人数はわずか38人です。世界保健機関(WHO)はこのワクチンが3段階ある主要な臨床試験の第1段階(ごくわずかな量を投与して劇的な反応などがないかを見る)をクリアしたに過ぎないとみています。

一般には第2段階の臨床試験で数百人を対象とし、安全性や投与量、免疫反応をくわしく調べてワクチンの安全性を確認します。そして第3段階になると、非常に多くの人にワクチン投与を行い、それが必要な効果を発揮するかどうかを確認します。

プーチン大統領はすでに承認済みだと述べているものの、これはロシア保険省のなかでの官僚的プロセスを終えたという意味であり、先に述べた治験の必要な段階を経て医薬品として承認されたわけではありません。

プーチン大統領はワクチンを市民にまで供給すると述べたとき「もちろん、ワクチンの有効性と安全性を将来的に確保できるようにすることが我々のために最も重要であり、それが達成できることを願っている」とも語っており、完全に治験が終わっていない可能性を伺わせました。

しかしロシア直接投資基金(Russia Direct Investment Fund:RDIF)のキリル・ドミトリエフ氏は「ワクチンにはかなりの関心が寄せられており、10か国から10億回分を超える量のワクチンの予備申請があった」と語り、いくつかの米国企業も関心を寄せているとされています。

伝えられるところでは、スプートニクVは、ヒトに一般的に感染するタイプのアデノウイルスを使い、新型コロナウイルスの一部を免疫系に送達するとされます。ところが、すでにアデノウイルスに感染したことのある人の場合、免疫細胞がアデノウイルスを認識して反応し、肝心の新型コロナへの免疫反応が促されない可能性があると指摘されます。

これは、バイオテクノロジー企業CanSinoが部分的に関与して開発された中国の新型コロナワクチン候補にも当てはまると言われています。一部ではすでに80%の人々がアデノウイルスに感染履歴があるとされ、期待された効果が望めないこともあり得ます。にもかかわらず、中国政府はこのワクチンの第3段階の治験を行っており、中国軍への使用を承認しました。

一方、英オックスフォード大学と医薬品企業アストラゼネカが開発しすでに第三段階の治験に入っている新型コロナウイルス用ワクチンは、やはりアデノウイルスをベースとしたものですが、こちらはチンパンジーに感染する型のアデノウイルスを使用しており、ヒトの免疫系が反応する問題を回避しているとのこと。

それでも7月末には、このワクチンに関して各国と締結した供給契約には、万が一ワクチンの副作用が発生した場合に責任を負わないとする条項が含まれていることをReutersなどが報じています。

新型コロナウイルス用ワクチンはいま世界中の国々が国民に必要な量を確保すべく開発や手配に力を入れています。そして7月には米、英、カナダ当局がロシア諜報機関に関連したハッカーが研究機関や制約会社から新型コロナ用ワクチンに関する情報を盗み出そうとしたとして非難していました。また米国ではワクチン情報を盗み出そうとした中国人ハッカー2名が米国によって起訴されています。いずれも背後ではロシアや中国の政府機関が関与しているとされています。

その開発の経緯や国の考え方などにより、ひとくちに新型コロナ用ワクチンと言っても、いろいろな違いや出来不出来があることは、われわれ一般人もあらかじめ理解しておくべきかもしれません。そしてもしわれわれがワクチン摂取を受けられるようになるときには、きちんと、ちゃんとした効果が見込めるものが提供されることを祈りたいものです。

ちなみに日本の厚生労働省はアストラゼネカと新型コロナワクチン供給の合意をしたと8月11日に報道されています

source:CNN, Naure
via:Ars Technica

 
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