Forstall
Forstall

アップルとEpic Games間での訴訟が再開されることに先立ち、元アップル幹部スコット・フォーストール氏による宣誓証言の記録が公開されました。そこではApp Store創設をめぐる社内の意見対立や、アドビによるiPhone用Flash開発に協力していた当時の興味深い逸話が語られています。

フォーストール氏は2012年までアップルのソフトウェアエンジニアリングチーフを務め、初代iPhoneや初代iPhoneOS(現在のiOS)の開発に大きな役割を果たした人物。今回の証言で重要なトピックの1つは、アップルがApp Storeを創設したことや、サードパーティ製App Storeを認めないことを決定したいきさつです。


まずフォーストール氏によれば、スティーブ・ジョブズ氏はApp Storeの設立自体に反対する最大の人物の1人だったとのこと。他の幹部の中にも「サードパーティがネイティブにコンパイルされたアプリケーションを作成できるようにしてはいけない」と考える人がいたそうです。

当時アップル社内ではWebアプリをブラウザ内で実現できれば十分、あるいはWeb技術とネイティブ技術(iPhoneのハードウェアに特化したもの。複数のプラットフォームで動くWebアプリとは真逆)を組み合わせたハイブリッドモデルを用意すべきだという幹部もいたと語られています。

ジョブズ氏の主張に至っては、サードパーティのアプリ開発を一切可能にすべきではない、と強硬な意見だったとのこと。それに対してフォーストール氏は声高に反対し、何度も議論を重ねたと振り返っています。

フォーストール氏は宣誓書の中で、Webアプリの経験から「それらのアプリはネイティブアプリほど優れたものではないことがはっきりしていた」とも語っています。そうした諸事情を織り込んだ末に、ジョブズ氏も渋々サードパーティ製ネイティブアプリを認めた模様です。

また証言のなかでフォーストール氏は「App Storeでの配布のみを認めるか、それとも開発者がネイティブアプリを他の方法で配布することを認めるか」つまりサードパーティ製アプリストアを認めるかどうかの議論があったのかを質問され、あったと認めています。

そうしてセキュリティやプライバシーを考慮した結果、すべての重役らが「顧客を守り、開発者に広く配布を認めるために、App Storeと企業向け配信モデルの2つが最適であると考えた」との推測が語られています。


もう1つ興味深い証言は、アップルがiPhone向けFlash開発について、アドビに協力していたと認めていることです。

ジョブズ氏は2010年にわざわざ公開書簡の体裁をとって、将来やパフォーマンスを考えればFlashよりHTML5を選ぶと語っていましたが、一方でアドビ側からは当時、アップルと協力していることが明かされていました。今回は12年ぶりに、この点をアップル側にいた人物が認めた格好です。

これについてフォーストール氏は、アップルがiOSにFlash搭載を検討したが、結果は 「恥ずかしい」ものだったと明かしています。

フォーストール氏いわく「我々はFlashを動かそうとしてアドビに協力した。本当に興味を持っていました。繰り返しになりますが、もし我々が協力できれば、これは素晴らしいことになると思いました。Flashはシステムとの連携が問題で、WindowsやMacでもウイルスの悪夢となっていました。また、iOSで動作させてみたところ、そのパフォーマンスはひどく、恥ずかしいほどで、消費者の付加価値になるようなものにはなりませんでした」とのことです。

そもそも上記のジョブズ氏の手紙でも「モバイル機器でのFlashはパフォーマンスが悪い」との感想や、バッテリー駆動時間については妙に具体的な数字が出ており、実機で動いた様子を見た上での発言との印象を受けます。


アップル対Epic裁判は、今やアップルの主軸となったApp Storeの是非が焦点となっているため、多くの重要人物らが証人として法廷に喚問されています。アップルだけでもクックCEOをはじめ10人以上、サードパーティとしてもNVIDIAやFacebook、マイクロソフトの幹部らが呼ばれており、米ハイテク業界の歴史にまつわる重要な話が他にも飛び出しそうです。


Source:Epic Game Depositons

via:The Verge,9to5Mac