Carlos Barria / Reuters
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熱いお茶の入った湯呑を手に取るとき、人はその重さや温度を指先で感じて、こぼさないように力を加減します。それは健常者にとっては当たり前のことですが、普通の義手はもちろん、筋電義手を使っている人にとっても非常に難しいことです。

Science誌に掲載されたピッツバーグ大学リハビリテーション神経工学研究所のバイオエンジニアリングチームの論文は、この課題に対し、脳に触覚の刺激を与えることでロボットアームの制御をよりしやすくすると報告しました。実験では視覚に頼っていたものを持つという動作を人工的な触覚で補ったことで、物体の把持と移動にかかる時間の中央値が20.9秒から10.2秒へと半減したとのことです。

実験の被験者となったネイサン・コープランド氏は、交通事故で腕が不自由になり、その後、脳・コンピューター・インターフェース(BCI)の臨床試験に参加したことで、ブラックロック・マイクロシステムズ社が開発した4つの微小電極アレイを移植されました。

そして今回の実験では、脳の感覚野だけでなく、体性感覚野と呼ばれる、身体からの感覚情報を処理する脳の領域にインプラントを埋めた世界初の人物になりました。このインプラントにより、頭でロボットアームを操作するだけでなく、触覚を感じることができ、脊髄が正常な場合の神経回路と同様に動作できるようになったとのこと。わかりやすい例をあげれば、ロボットアームを使ってボールのような物をつかんだりしたときに、ロボット義手の指のトルクセンサーが電気信号を脳インプラントに伝え、それぞれ対応する指にリンクされた電極が脳を刺激します。

University of Pittsburgh Medical Center
University of Pittsburgh Medical Center

コープランド氏は、得られる”触覚”は自然な感じではなく、圧迫感だったり疼痛のように感じるものの、すでにロボット義手を使いこなしてきた経験があるため、それに慣れるために苦労したりすることはなかったとのこと。たとえばテーブルの上のさまざまな物を拾い上げて、やや高い台の上に移す動作を行うテストでは、電気刺激による触覚フィードバックがあるほうが、刺激のないテストに比べて2倍の速さでタスクを完了することができました。

実験の共同研究者のロバート・ゴーント博士( ピッツバーグ大学物理医学・リハビリテーション学部准教授)は、「われわれは、視覚的な要素を取り除くことで課題を制約したくはありませんでした。限られた、不完全な感覚でも、それを取り戻すことで、その人のパフォーマンスはかなり大きく向上しました。よりリアルな触覚を得られるようになったり、実用化するには、まだ長い道のりがあります。とはいえ、脳への情報の入力をより正常なものに近づけられるようになるほど、より良い結果が得られると考えられます」と述べています。

Source:Wired