2021年6月4日、日テレで放送された「クイズハッカー」という番組内で、略称スマホを広めた人物として私・矢崎(2017年〜エンガジェット日本版 編集長)が出演しました。さらに別な局からも取材依頼をいただいたので、改めて記しておいてもいいかなと拙いキーボードを打ちました。界隈の方には耳タコと思いますが……。

ヘッドホンなのにスマートホンじゃない不思議

当然、「スマートフォン」は英単語「Smartphone」から来ています(「Smart Phone」ではなく1ワードです)。高性能携帯電話を指す語で、携帯電話(日本でいうところのガラケー)と区別するため生まれた語ですが、今ではたんに「Phone」が使われることが一般的です。

日本ではガラケーの息が長いこともあり、ケータイとスマートフォンを分けたほうが何かと好都合なため、スマートフォンが残ったのでしょう。

そして、その略語が「スマフォ」ではなく「スマホ」なのは何故か? その前に「スマートホン」という表記をあまり見かけなくなったことも不思議です(2010年ころまでは混在していた)。

ちなみに「Headphone」のカタカナ表記は「ヘッドホン」が多数を占めます。ヘッドフォンでも間違いではありませんし、スペルからすればむしろこちらが正確と言えますが、日本の家電メーカーによる表記も「ヘッドホン」が主流です。

▲日本のAppleはヘッドフォン、イヤフォン表記……まぁ、どちらでもいいんですが

このルールからしたら、略語の前にまず「スマートホン」というカタカナ表記が定着していそうな気がしますが、そこは「電話(Phone)」だから「スマートフォン」のほうがしっくりくるといった潜在意識が徐々に働き、淘汰されたのかもしれません。

結果的に「フォ」はそのまま訳され、略すとき「ホ」になったわけですが、こうした例外は言語の世界ではよくある現象なので、理由は深く考えなくてもいいというのも正論だったりします。

略称「スマホ」の謎

略称「スマホ」についてテレビ出演を打診いただくのは、私の前職での出来事が関係します。

Smartphoneという単語は1996年、Nokia 9000 Communicatorの誕生をもって初出とする説が濃厚ですが、広く使われ始めたのは2000年以降でした。

▲Nokia 9000 Communicator (1996)

当時、私は「週刊アスキー」という雑誌の編集に携わっていました。とくにザウルスやPalmなどPDA(パーソナル・データ・アシスタント)が好きで、よく記事で扱いました。まだ日本でスマートフォンは出ていませんでしたが、手のひらサイズのコンピューターを紹介する流れで海外のスマートフォンを紹介する機会が増えます。

2007年にiPhoneが登場し(日本発売は2008年)、いよいよスマートフォンの波が世界に押し寄せてきそうだというタイミングで、誌面にもスマートフォン特集が載るようになります。特集で扱うネタは、表紙や電車の中吊り広告(吊り広)に見出しを記載して宣伝します。

▲週刊アスキーの表紙に初めて略語「スマホ」が載った号(2007年11月27日号)

しかし、ここ(紙)はスペースの限られた世界。スマートフォンと書くだけで7文字も消費します。また、吊り広は縦組みなので、見慣れぬ長いカタカナの名詞が人の脳にインプットされにくいということも考慮しなくてはなりません。

表紙や吊り広の入稿は編集長の仕事なので、当時の宮野編集長が私と伊藤氏(現在はBusiness Insider Japan 編集長)に「スマートフォンってさ、長いから略したいんだけどスマホ? スマフォ? どっち?」みたいなことを聞いてきて、3人で話し合ったことは覚えています。

スマフォよりスマホのほうが縦でも横でも収まりがよかったし、文字数も少ない。そして発音もラクだと思いました。結果として「スマホ」が採用され、今日に至り定着したわけですが……。

では、3人のうち誰が「スマホ」を主張したのか。

会話を録音しているはずもありませんし、真相はわかりません。満場一致だったような気もするし、少し揉めたような気もする……。そもそも、この話し合いを思い出すきっかけとなったのは、それから何年も経って某大学教授K氏が略語「スマホ」の初出に興味を抱かれ、調べた際にネットよりも先にアスキーの誌面に登場していたことを突き止めて教えてくれたからです。そのことがなければ、テレビ出演の話もなかったでしょう。

2011年〜2015年にかけ、週刊アスキーは年に数回、スマホに便利な付録を付けて売っていました(防水ケースや光るケーブル、指にはめるマウス等々)。付録の製作とPRはおもに私が表立ってやっていたことや、誌面のスマホ特集の多くを担当していたこともあり、それならスマホの名付け親って肩書を加えようという戦略的な狙いもあり、略称「スマホ」の考案者として自ら名乗ることを認められました。

あくまで言語ですから、また違うルートから定着した可能性も否定はできませんが、小さなコンピューターが大好きで、日本でいち早く早くスマホスマホと騒ぎ出したことは間違いないので、ひとつ皆さまも口裏を合わせていただけましたらと思います。

長年の友人でもあるジャーナリスト・西田宗千佳さんのKindle本に、略語スマホ誕生エピソードを含め、私のビジネス半生がまとまっていますので、より背景にご興味を持たれた方は是非ご一読ください(400円、Unlimited会員は無料)。

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