VISION-S

『ソニーが作ったのは走るスマホだ』

それは、ソニーが開発を続けている電気自動車「VISION-S」に試乗したときに感じたことでした。

VISION-Sは、2020年1月に米ラスベガスで開催されたテクノロジー展示会「CES2020」でソニーが発表したもの。最新のオーディオ技術やイメージング・センシング技術など、ソニーが誇る技術の粋を結集し、ベンツやBMWなどの開発・生産を請け負うマグナ・シュタイアの協力を経て共同開発した試作車です。

これまで音楽プレイヤーの「WALKMAN」や、犬型ロボットの「aibo」を世に送り出してきたソニーがなぜ今、電気自動車を作ろうとしているのでしょうか。VISION-Sの開発責任者であるソニー執行役員AIロボティクスビジネス担当の川西泉氏に話を伺うことができましたので、実車写真を交えながらVISION-Sの魅力を紹介します。

ソニーらしさと美しさを兼ね備えた外観

まずは外観から。どの方向からVISION-Sを眺めても、車のノウハウを持たないソニーが作った電気自動車とは思えないハイクオリティな見た目です。当たり障りのない見た目よりも、ソニーとして何を訴えかけたいのかが強く表れるようにデザインされています。

VISION-S
▲VISION-Sの開発責任者であるソニー執行役員AIロボティクスビジネス担当の川西泉氏(左)と、「VISION-S」(右)

車の鍵はスマホアプリと、シェアリングする際に役立つカードタイプの2種類が用意されていますが、試乗会では、スマホアプリを使用。車とスマホはBluetooth接続するため、スマホを持って車体に近づくだけでドアのロックが外れますが、アプリから手動で操作することもできます。ロックが外れるとVISION-Sの流線形をより美しく引き立たせるかのように配置されたLEDライトが前方から後方に向かって光ります。

VISION-S
▲車体に配置されたLEDが前方から後方に向かって光る

移動を感じさせない空間エンタテインメント

車内には、ソニーが得意とするAV機器を随所に配置。『ソニーならではの世界観を提供したい』という川西氏の思いも伝わってきます。色や質感もソニーファンをも納得させる出来といえるでしょう。

VISION-S
▲4ドア4人乗り(写真は後部座席)

ダッシュボードには、一般的なカーナビの代わりに、3枚の液晶ディスプレイを配置。運転席のディスプレイには速度メーターなどを、中央と助手席側の2枚には音楽や映像コンテンツが表示されます。サイドミラーもディスプレイにすることで、暗所においても視認性を担保できるそうです。

VISION-S
▲タッチ操作に対応する液晶ディスプレイ

見やすさだけでなく操作のしやすさも売りのひとつです。スマホやタブレットと同様にスワイプやスクロールといった操作に対応します。OSはAndroidをベースにし、表示コンテンツの配置などをカスタマイズできる機能も備えます。

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▲ダイヤルで音量調節することも可能だ。見た目や操作体系がソニーのAV機器に似ている

映像の次にソニーが最も強調するのは「音」。エンターテインメントの世界に引き込むために「360 Reality Audio(サンロクマル・リアリティオーディオ)」という技術を取り入れています。ヘッドレストに内蔵されたスピーカーから、没入感のあるサウンドが響き渡ります。車内空間にいながらレコーディングスタジオやコンサートホールにいるような臨場感を味わえました。

走行音やドアを閉める音は改良の余地あり

いざ石畳を走行してみると、体全体を包み込むようなシートの座り心地が良く、電気自動車らしいスムーズな加速・減速でした。一方で、走行時に各パーツがきしむ音やドアを閉める際の大きな音は、やはり試作車であることを感じさせるものでした。

33個のセンサーで安全性を高め、レベル4への対応も視野に

さて、ソニーといえば、AV機器のほかに半導体技術のCMOSセンサーを手がけていることでも知られていますが、VISION-Sにおいてもカメラを使った画像認識、レーダー、LiDARなどを含む33個のセンサーを用いて、安全性を高めています。

VISION-S
▲VISION-Sは33個のセンサーを搭載(出典:ソニー)

これらは、ADAS(先進運転支援システム)に欠かせないセンシング技術として紹介されていますが、特筆すべきは、対象物までの距離を測定するToF(Time of Flight)センサーを搭載している点です。これにより、立体空間を3Dで把握することができ、車内外の人や物体を検知・認識し、ドライバーのコンディションに応じてアラートを出すことが可能です。

VISION-S
▲VISION-Sのハンドルを握る様子。試乗会では有人での手動運転だった

また、VISION-Sの自動運転レベルは、ドライバーの運転をサポートする「レベル2+」に相当しますが、将来的に、限定エリア内でドライバーが不要となる「レベル4」への対応も視野に開発を進めています(川西氏)。

将来は5Gネットワークに接続可能に

こうした「エンタメ性」と「安全性」に欠かせない要素がモバイルネットワークへの接続です。川西氏によれば、将来は5Gへの接続が可能になるとのこと。

5Gを使って具体的に何ができるようになるかは『現時点で具体的に決まったことはない』と川西氏はいいますが、『VISION-Sは、ソフトウェアアップデートを繰り返すことで、常に最新の状態に保つ』とソニーがいうように、コンテンツデータをシームレスに扱えたり、各種センサーが取得したデータのやり取りに使うことを見込んでいるのかもしれません。

まだまだベールに包まれているVISION-S

自動車はこれまで、基本的に走行性能と乗り心地が本質である、と捉えられてきましたが、ソニーがあえて自動運転やエンタメに着目したことは、モビリティ分野に本気で取り組もうとしている姿勢の表れであると感じます。

ですが、現時点でVISION-Sの市販予定はありません。モビリティサービスへの組み込みも含めて、具体的なことはまだ何も決まっていないと川西氏は話します。ソニーが今後VISION-Sをどのように活用するか期待したいところです。

VISION-Sスペックと実車の写真

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▲出典:ソニー
VISION-S
▲VISION-Sのタイヤとホイール。ホイールベースは3000mm
VISION-S
▲ドアノブの裏にもLEDが埋め込まれている。ドアのロックが解除されるとライトが点灯して、ドアノブが自動で上がる仕組み
VISION-S
▲タイヤの上にもLEDが埋め込まれている

(訂正:2020/9/4)担当者の発言が事実とは異なる部分がありましたので該当する文章を削除しました。


source:ソニー