ソニーがSIMフリーXperiaの販売を本格化する理由(佐野正弘)

ファンの心をつかめるか

佐野正弘(Masahiro Sano)
佐野正弘(Masahiro Sano)
2020年09月5日, 午前 06:30 in xperia
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Engadget Japan

「Xperia」ブランドのスマートフォンで知られるソニーモバイルコミュニケーションズですが、2020年8月に国内で新しい動きを見せているようです。

既報の通り、Xperiaシリーズのハイエンドモデル「Xperia 1 II」「Xperia 1」「Xperia 5」をSIMフリースマートフォンとしてソニーストアや量販店などで販売します。また、今回の取り組みだけでなく、今後も継続的にハイエンドモデルをSIMフリー市場に投入するとしています。

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▲ソニーモバイルコミュニケーションズは2020年8月18日に、SIMフリー・デュアルSIM対応の「Xperia 1 II」「Xperia 1」「Xperia 5」をソニーストアなどで販売すると発表した

Xperiaシリーズをよく知る人ならば、この発表でソニーモバイルコミュニケーションズが非常に大きな戦略転換を図ったと感じたことでしょう。なぜなら同社はこれまで、XperiaシリーズのSIMフリー端末販売に決して積極的ではなかったからです。

実際、過去を振り返っても、SIMフリーとして販売されたXperiaは筆者が記憶する限り、2015年の「Xperia J1 Compact」や2017年の「Xperia XZ Premium」、2019年の「Xperia Ace」「Xperia 1 Professional Edition」くらいではなかったかと思います。Xperia 1 Professional EditionやXperia XZ Premiumは限定販売でしたし、それ以外のモデルも販路は一部のMVNOに限定されていたため、必ずしも購入しやすいわけではありませんでした。

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▲2017年にはソニーネットワークコミュニケーションズがMVNOとして展開する「nuroモバイル」で、SIMフリー版の「Xperia XZ Premium」が限定販売されたこともあった

なぜソニーモバイルコミュニケーションズがSIMフリー端末の投入に消極的だったのかといえば、やはり大手携帯電話会社との関係を非常に重視していたためでしょう。多数の端末を仕入れて販売してくれる携帯大手は端末メーカーにとって非常に魅力的な取引先であり、それと対立する可能性がある上に市場が小さく、ビジネス的にもうまみが少ないSIMフリー市場での端末販売に乗り出すメリットが薄いと判断していたと思われます。

こうした戦略は、携帯電話会社に縛られることなくXperiaを使いたいファンからの評判が悪かったのも事実です。ですがそうした戦略を取っているのはサムスン電子なども同様で、それだけ日本では携帯電話会社へ端末を供給することのビジネス的な重要性が高いことが分かります。

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▲かつてNTTドコモが「ツートップ」として優遇を打ち出したXperiaのソニーモバイルコミュニケーションズと、Galaxyのサムスン電子は共に、携帯大手向けのビジネスに注力する傾向が強かった

なのであればなぜ、ソニーモバイルコミュニケーションズはこのタイミングでSIMフリー市場への販売拡大へと踏み切ったのか、といえば、ひとえに同社が国内市場の変化を読み違えたからでしょう。

ソニーモバイルコミュニケーションズは2014年に、スマートフォン事業でソニーの経営を揺るがすほど大きな赤字を出したことを契機に、それまでの拡大戦略を見直して高い利益が見込めるハイエンドモデルに集中する戦略を取ってきました。ですが同社の主力市場である日本では、そのハイエンドモデルを大幅に値引いて販売する手法に次々と行政のメスが入り、2019年に電気通信事業法の改正がなされたことで、端末値引きは2万円までという明確な規制がなされてしまったのです。

値引き規制がハイエンドモデルを重視したXperiaの販売を直撃したことで、頼みの綱である日本市場においても販売が低迷。出荷台数シェアでシャープやサムスン電子に抜かれ、さらにはXperia 1 IIがソフトバンクに採用されなかったことが話題になるなど、携帯大手からの信頼も落としており、低迷を極めているというのが正直なところです。

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▲これまでXperiaシリーズを継続投入してきたソフトバンクが、5G端末ラインアップから「Xperia 1 II」を外したことは大きな話題を呼んだ

ソニーモバイルコミュニケーションズが現在の低迷を打開するには、値引き規制でニーズが増えたミドルクラスのスマートフォンの販売を強化する必要があり、同社も「Xperia 10 II」や、2020年8月28日に発表された「Xperia 8 Lite」の投入などでミドルクラスへの注力を進めています。ですが同社には2014年の苦い経験があるだけに、利益率の低い低価格モデルよりも、利益の大きいハイエンドモデルの販売が重要であることは確かでしょう。

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▲ソニーモバイルコミュニケーションズはミドルクラスの端末販売も強化しており、2020年8月には「Xperia 8 Lite」を、MVNOを中心として販売することを明らかにしている

しかも同社は利益度外視で販売を拡大することはできないので、いかにハイエンドモデルの価値を理解してもらい、価値相応の値段、つまり定価あるいはそれに近い価格で購入してもらえるかを意識して取り組むことが求められています。そこで目を付けたのが、ソニーストアを主体としたソニーグループが持つ販路の活用です。

ソニーの販路を活用できれば、テレビやカメラ、ゲーム機など他のソニー製品と連携した使い方を提案することで、それら製品のユーザーにXperiaを購入してもらうきっかけを作りやすくなります。しかもソニーが好きな人に直接製品の価値を伝え、丁寧な販売ができることから、多少価格が高くても価値を認めてもらいやすくなるというメリットもあるのです。

2019年に販売されたプロ・セミプロに向けた特別仕様のXperia 1 Professional Editionは、ソニーの販路を活用して価値を落とさずXperiaのハイエンドモデルを販売する、テストマーケティング的な意味合いが強いものだったといえるでしょう。結果的にその販売が好調で、なおかつ同社のアンケート結果では、購入理由の8割が「SIMロックフリーだから」であったことから、ソニーの販路を活用したハイエンドXperiaのSIMフリーモデルの販売を本格化するに至ったようです。

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▲Xperia 1 Professional Editionの購入者アンケートで「SIMロックフリーだから」という理由が8割を占めたことから、SIMフリーでの端末販売本格化に至ったといえる

とはいえこちらも既に多くの指摘がある通り、今回投入された3モデルはいずれも携帯大手が販売を開始してから時間が経っているもの。Xperiaファンが強く求めているであろう、最新モデルをSIMフリーでいち早く手に入れられる状況にはまだないことも事実です。

また、ソニーモバイルコミュニケーションズは2020年9月17日に、YouTubeでXperiaの新機種を発表します。この新機種が日本でも投入されるのであればの話にはなりますが、それが携帯大手より先に投入されるか否かが、同社のSIMフリーモデル販売への本気度を見極める判断基準の1つとなりそうです。


 
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