スティーブ・ジョブズ逝去から9年。Apple SiliconとApple Oneに繋がる野心を振り返る

「ジョブズの宿題」は着々と達成されつつあります

Kiyoshi Tane
Kiyoshi Tane
2020年10月4日, 午後 06:01 in apple one
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アップルの共同創業者、スティーブ・ジョブズ元CEOが56歳の若さで逝去してから、明日(10月5日)でちょうど9年目。2011年のその日から1年が経過するたび、記憶は風化するどころかますます喪失感が鮮明となり、アップルを託されたティム・クックCEOも毎年、故人を偲ぶツイートを投稿しています。2019年には「“我々が持っている最も貴重な資源は時間だ”スティーブ・ジョブズ、あなたのことはいつまでも忘れません」との言葉を贈っていました。

そして今年6月に発表されたMac向けのアップル独自開発プロセッサ「Apple Silicon」は、ジョブズ氏の遺した宿題とも言われたもの。そもそもMacのプロセッサが切り替えられるのは、これが3回目のことです。初代Macはモトローラ社の68000系CPUでしたが、1990年代にIBMとモトローラが共同開発したPowerPCへと移行し、さらに2000年代にはインテル製CPUに移行した経緯があります。

そしてインテル系に移行した理由は、PowerPCの性能が頭打ちになっていたから。3GHzのクロック周波数はなかなか実現されず、発熱量も大きいためMacノート(当時はPowerBook)への搭載も非現実的と言われた行き詰まりを、どちらもクリアしたインテル製チップにより打開したわけです。

しかしチップ開発を他社に頼るかぎり、開発スケジュールや性能面につき制約を受けることは免れません。そこでジョブズ氏は2008年のWWDC基調講演(iPhone 3Gを発表)後に「買収したP.A.Semi(低電力チップ設計会社)はiPhoneおよびiPad向けのSoCを設計する予定だ」と発言。その2年後、実際にiPhone 4に初の独自開発チップ「A4」が採用され、それ以降アップルは毎年「新SoCと新型iPhone」をセットで送り出せるようになったしだいです。

つまりMacがApple Siliconに移行することは、アップルがMacの開発を完全にコントロールできることに他なりません。それはハードウェアやソフトウェアからサービスまで、すべて「アップルの作品」で固めるというジョブズ氏路線の1つのゴールとも言えるはず。

iPad10周年に振り返る。ジョブズ氏の野望は「紙」を超えることだった

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また、今年はiPad10周年でもあります。ジョブズ氏自らが「スマートフォンとラップトップの間に、第3のカテゴリ空間がないだろうか?」といいつつ初代iPadを取り出し、タブレット製品を世界に根づかせる(それ以前からカテゴリは存在していましたが)第一歩を踏み出したことが振り返られます。

もしもiPadがなければ、新型コロナウイルス感染拡大を抑えるための「STAY HOME」もより困難となり、人類の文明も停滞していたのかもしれません。

元iOS責任者、スティーブ・ジョブズ氏との面接を回想

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不世出の「起業家」(死亡証明書の職業欄に記されていたことは有名)であり、初代MacもiPodも、iPhoneやiPadもジョブズ氏の存在と情熱なくして誕生もあり得なかったでしょう。その一方で独特の感性ゆえに、理想の上司とは言い難かったのも事実だったようです。「週90時間、喜んで働こう!」をスローガンにしていた逸話は今となっては笑い話にしにくい感があります。

しかしアップル元幹部だったスコット・フォーストール氏の振り返る思い出(ジョブズ氏がアップルから離れていたNeXT時代)は、やはり強烈です。

なにしろ面接官をつまみだし、「私は誰がなにを言おうとも気にしない、結局は君を採用したいというつもりだ」と告げて17人もの面接を無視してもいいというワンマンぶり。アップルに復帰しだい、増えすぎたMacラインアップを整理し、OSライセンスを廃止するなど大掃除ができたのも、この唯我独尊あればこそでしょう。

ウォズ氏へのアップル週給、積立と税引後は約50ドル。「ジョブズ氏とお金」にも言及

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© © DB Apple/dpa/Corbis

あらゆる意味で原点となるApple Iを開発し、ジョブズ氏と共にアップルを創業したスティーブ・ウォズニアック氏。今なお現役アップル社員であると知られる同氏が週給50ドル(積立金や税金を差し引いた後)だと明かしたさい、「ジョブズとお金」を語ったこともありました。

お金に興味が薄いというウォズ(愛称)氏に対して、ジョブズ氏はお金を増やすのにこだわったと振り返られています。が、それは守銭奴という意味ではなく「お金を持つ大物」になりたかった、「大金を稼げる会社」の創業者を目指していたということ。

そしてアップル創業後、ジョブズ氏はジョークを言わなくなり、代わりにビジネスについて話したがり、世界を変えたシェークスピアのような重要人物の1人になりたいと語っていたとのこと。特にプログラムが書けるわけでもなくエンジニアでもなかったジョブズ氏が、iPhoneやiPadを送り出して誰よりも世界を一変させられたのは、身を焦がすような「大物になりたい」という野心が原動力となったのでしょう。

なぜiOS版Kindleアプリ内で電子書籍が買えなくなったのか?ジョブズ氏らのメールから明らかに

SJ

2020年現在のiPhone/iPad用Kindleアプリ内では電子書籍を購入できず、新規に買う場合はSafariを使いWebを経由する必要があります。2011年初頭まで可能だったことが、なぜできなくなったのか? その過程を明らかにする当時のアップル社内メールが、米下院の公聴会にて公開された一件がありました。

その内容は、主に同社幹部だったフィル・シラー氏(現在は上級副社長を退任、アップルフェローに移行)が当初アマゾンに特例を設けた(アップルの課金システムを使わずに購入できた)狙いやそれを転換したきっかけが語られたもの。ですがジョブズ氏も「iOSデバイス上の唯一の書店はiBooksになるだろう」と述べており、当時スタートしたばかりのiBooksを主要な電子書籍プラットフォームに育て上げたい意図が示唆されていました。

そうした全てを自社ハードウェア、ソフトウェアおよびサービスで統一しようとする志向は、9月に発表されたサブスクリプションまとめ割プランのApple Oneにもうかがえました。逝去してから9年目の今なお、ジョブズ氏の野心はたくましく生き続け、アップルの進む道を照らし出しているのかもしれません。

追記:今年もクックCEOが故人を偲ぶツイートを公開しました。「偉大な魂は決して死ぬことはありません。それは私たちを何度も何度も結びつけるのです」 —マヤ・アンジェロウ(米国の活動家・詩人・歌手・女優)。スティーブ、あなたはいつも私たちと共にいます。あなたの記憶は私たちを毎日結びつけ、触発するのです」


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