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Kengo Watanabe

アップルの世界開発者会議 WWDC 2021を前に、iOS開発者にアプリを巡るストーリーやWWDCへの期待について訊きました。 

お話をうかがったのは、iOS用として2010年にリリースされて以来、現在も多くのユーザーに愛される色鉛筆ペイントアプリ『彩えんぴつ』(いろえんぴつ)の開発者 渡邉 賢悟 氏。

アプリ開発者として活動する傍ら、東京工科大学でSwift言語を使った『クリエイティブ・アプリケーション演習』の講師を務めるなど、若き開発者を指導する教育者としても活躍されています。

iPhone OS時代からのアプリ『彩えんぴつ』

インタビューの前にアプリの紹介から。『彩えんぴつ』は iPhone / iPad で使える色鉛筆風のペイントツール。初版は iPadの発表前、iOSがまだiPhone OSだったころに開発されました。休止期間を置きつつ更新を繰り返し、Apple Pencil の筆圧や傾き検出にも対応した新バージョンは現在も人気アプリとして愛されています。

特徴はまず何より、色鉛筆の美しい再現性。またレイヤー機能や、写真を線画化して取り込み下絵にする「自動デッサン」機能などデジタルならではの利便性を備えつつ、多機能よりもシンプルなデジタル画材としての操作感や気持ちよさを重視しています。

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学生時代の研究がルーツ

開発者の渡邉氏によると、『彩えんぴつ』はもともと、学生時代の研究の一環として開発したWindows PC向けフリーソフトウェア『ゆめいろえのぐ』から派生したアプリ。

渡邉:「学生時代に研究の一環として制作した『ゆめいろえのぐ』は、絵の具を混ぜて塗るというペイントアプリだったのですが、オプションとして鉛筆ツールも付いていたんですね。そちらは研究対象ではなかったのですが、実際に実装したらとても評判が良くて。

その後社会人生活を経て、2010年にiOSアプリを開発するきっかけを得たときに、やはりペイントソフトを作りたいなと。絵の具を作っても良いのだけれど、そういえば鉛筆の評判が良かったから、ちょっと本腰を入れてやってみるかと考えまして。割と素朴な理由です」

── ユーザーに長く愛されるアプリですが、開発者として嬉しかった反響はありましたか

渡邉:「個人で作っているアプリですので、規模感や開発スケジュールには限界があります。ただ、多くのユーザーさんが大手の多機能なペイントアプリケーションと同時に使ってくださるなかで、高機能なアプリのほうに慣れてしまったら、きっともう使われなくなるのかなと以前は思っていたんですが、あるユーザーさんから「他の高機能なペイントアプリを使っていると、きれいな絵は描けるのだけど、すごく気合を入れて取り組む必要があって、絵を描くことに疲れてしまうことがある」と。そうしたときに彩えんぴつが良いという声をいただきました。

これは絵かきの人に独特のことなんですけれど、絵を描くことに疲れたら、絵を描いて休むという人がけっこういるみたいで。レストタイムに軽く落書きをしたりするときにぱっと『彩えんぴつ』を開いたりされるそうです。機能をシンプルにすることを心がけてきたので、リラックスするために絵を描くのに良いと言っていただけたのはすごく嬉しかったですね」

「多機能・高機能のアプリケーションと共存してゆく」

渡邉:「そこから思ったのは、いわゆるPhotoshopのような、最高峰の素晴らしい画像処理ソフトもいくつもありますけれど、別のコンセプトのソフトもいろんな選択肢があっていいんだなと。これから自分が作ってゆくソフトも、多くの素晴らしいアプリケーションと一緒に共存共栄してゆけるものを目指してゆきたいなと思っています」

 

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── Swift Playground Books を使った教材はどういったきっかけで制作されたのでしょうか

渡邉:「2014年にSwift言語が発表された際、すでに自分の演習を担当していたのですが、当時は普通に Objective-Cの教材を作って演習に使っていました。Swiftが発表された段階で、これは早めに対応したほうがいいんじゃないか、学生の興味もあるんじゃないかとSwiftに切り替えました。

それからしばらく経って、アップルのほうから SwiftのPlayground Books を自分で作れますよと紹介されて。これで教材ができると準備は進めていたのですが、コロナの件で世界中が大変なことになって。大学のほうも大混乱の状態が現在も続いています。

教員のなかでこうした状況に適した教材はどうしたら良いんだろうかと話し合いになったとき、自分としてはこういう、Playground Bookというものがあるので、やってみてはどうだろうかと。まずぼくがやってみますということで、2020年1月から集中してBooksの整備を進めまして、ちょうど一年ほど前に最初のBooksをリリースしました。今年でBooksを使った授業は2年目ということになります。」

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「Objective-CからSwiftへ移行した過渡期は、日本独特かもしれないのですが、学生からかなり強い拒否感がありました。「また新しいことを覚えなきゃいけないの」と。気持ちは分かるけれど、とても良いものだし、これから進化してゆく言語だから、ちょっと一緒にやってみないかと声をかけたら、ああ、先生も勉強中なんですね、じゃあやりましょう言ってくれて。むしろ私より先にSwiftのいろんなことを調べて、こんなことできるんですねと教えてもらうこともありました。それが教材につながっていることもあります。

「Swiftってこういうところがすごく良いですね!」とみずから学んで、むしろ私が勉強させてもらう。本当に良い循環ができたのは、Swiftに移行してよかったと思えましたね。いい刺激を与えてもらえました」。

── Swift Playground は iPadで動きますが、プログラミングをするにはやはりMacを買わなければいけないんでしょうか

渡邉:「これまではMacしか選択肢がなかったんですが、まずiPadを導入してSwift Playground のような教材を試してみて、そこから本当に自分がプログラミングをもっとやりたいなと欲が湧いてきたらMacに進むこともできます。それこそM1 Macなどはすごく安くて高性能なので。むしろそうした階段ができたのかなと思っています」。

その一方で、Swift Playgroundを楽しんだあと、MacでXcodeにゆくまでに大きな壁があるのは事実で、教える側としても課題と考えているとのこと。渡邉さんは Playground Bookを公開するにあたり、元になったXcode側のソースは Githubで公開しており、Swift Playground から Xcodeでのプログラミングまで導くドキュメンテーションの整備が最終的な目標といいます。

──これから開発者を目指す人にメッセージをお願いします

渡邉:「教えている立場としては、プログラミングってすごく楽しいよということを第一に感じてほしいなと思っています。自分の作った教材を使ってもらえればもちろん一番嬉しいのですが、それに限らず、難しそうだな、やっていて辛いなというものにわざわざ触れにゆく必要はなくて、プログラミングってこんな楽しいことができるんだなと感じられる、自分にとってベストな道筋を見つけて、自分の作りたいものに没頭してやるのが一番いいはずです。

楽しいプログラミングに辿り着く前に、全然おもしろくないことを何百ページとやらされたあとで、さあ好きなことをやってみましょう言われても、もう心が折れているということもあります。Swift Playground ならば、iPadだけあれば書いたものがすぐに実行できる環境があり、キーボードつけてBookを開けば、簡単な案内に従うだけで絵が出て、といったものがたくさん用意されています。Playground Booksだとか、負担が少なくいきなり楽しいところに入れますから、これから開発を学びたい人にはまず触ってほしいなというのが本心です。」

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──WWDCに期待することはありますか

渡邉:「そうですね……2点あって、ひとつはアップルが提供しているデバイスはここ数年で一気に種類が増えましたが、さらに一年半ほど前から、デバイス同士の連携を強めるような機能も多くなってきました。マスクを着けたままでも、Apple Watchをしていれば iPhoneのロックが解除できるだとか。そうしたデバイス間連携みたいなものが、もっともっとうまく、シームレスに混ざり合ってゆくような発表があったらうれしいな、というのが一点ですね。

 もうひとつは、ぼく自身が2Dグラフィックスが専門なので、Playground BooksからARアプリケーション開発までの教材を作りたいのが長い目で見た時の計画です。学生には基本的なプログラミングの基礎から、最後までゆくとARまで自在にコントロールできるようになると思わせてあげたい。そのあたりの情報のボリュームがもっと増えると、学生にも紹介しやすいなと期待しています。」

──ありがとうございました!

WWDC 2021
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WWDC 2021 は米国時間で6月7日から、日本時間では6月8日深夜2時からのキーノートで始まります。

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