Tim Cook
Brut America

アップルのティム・クックCEOはフランスのテクノロジーイベント「VivaTech 2021」にリモートで参加して公開インタビューを受けました。その場でプライバシーに関する考えや、EUでのApp Store規制について「サイドローディング(App Store外からのアプリのダウンロードやインストール)を強制することはiPhoneのセキュリティを破壊する」といった持論を語っています。

フランスのネットメディアBrutの取材は、もっぱらプライバシーに関する話題が中心となりました。クック氏はそこで「プライバシーを基本的な人権だと考えています」と以前からの主張を繰り返しています。

クック氏は「私たちは何十年もの間、プライバシーに注力してきました」「かつてスティーブ(ジョブズ)はプライバシーとは、人々が何にサインアップしているのかをわかりやすく説明し、その許可を得ることだと言っていました。その許可は何度も求められるべきです。私たちは常にこの言葉を実践してきました」と語っていますが、このあたりは「iPhoneのプライバシー|追跡」CMでのテーマを言語化した感があります。

さらに話題はGoogleやアップル、Facebookやアマゾンを一括りにした「GAFA」(フランスでも使われているそうです)にも及んでいます。クック氏はこの言葉が「すべての企業が一枚岩である」というイメージを与えるが、それぞれの企業が「異なるビジネスモデルと異なる価値観」を持っているため好きではないと述べました。特にアップルとFacebookの10年以上もの確執を考えると頷けるところではあります。

そして本イベントがフランスで開催されたこともあり、クック氏はヨーロッパの規制GDPR(一般データ保護規則)に関する質問にも答えています。すなわちGDPRは「非常に優れた規制」だとしつつ、アップルは「プライバシーに関してはGDPRよりもさらに先に進むことを支持しています」と述べています。ちなみにアップルの広告追跡システムFDAはGDPRに違反していると苦情申し立てされたことがありました。

ただしクック氏は、現在EUで議論中の大手ハイテク企業に対する規制強化のなかで、iPhoneにサイドローディングを強制する動きについては「iPhoneのセキュリティはもちろん、App Storeに組み込まれている多くのプライバシー保護の取り組みも破壊されてしまいます」として強く反対しています。

それに加えて、クック氏はAndroidにはiOSの47倍ものマルウェアが存在すると指摘。それは何故かというと、「iOSはApp Storeが1つで、すべてのアプリがストア入りする前に審査されるように設計されているからです」とのこと。クック氏はこの件について「楽観的」であり、アップルは「ユーザーのために立ち上がる」とまで述べています。

アップルがApp Store以外のアプリストアやサイドローディングを認めないのはマルウェアを防ぎ、セキュリティを守るためだという主張は、先日アップルのソフトウェアエンジニアリング担当VPクレイグ・フェデリギ氏が述べていたこととも重なります。フェデリギ氏はそのために「Macにもマルウェアはたくさんある」と語り、まるでMacをiPhoneの盾にするような発言が話題を呼んでいました。

そう長くないインタビューでは20~30年後のiPhoneに話題が及んだりもしていますが、興味深いのはARについての興味の強さが改めて確認されたことでしょう。

クック氏は「私がARに興奮するのは、ARが生活を幅広く向上させる技術だと考えているからです。私たちはまずiPhoneやiPadでARに取り組んできましたが、その後、製品としてどうなるかを見守りたいと思います。重要なのは、人々の生活を豊かにすることができるということです」と述べており、今年のWWDC21ではついに登場しなかった噂のARヘッドセットを想起させる内容となっています。

最後にアップルカー(アップルが開発中と噂の自動運転EV)について訊かれたクック氏は、もちろんコメントを避けています。「クルマに関しては、秘密にしておかなければならないことがあります」と否定せずに“秘密”を強調していることから、社内での開発やサプライチェーンとの調整、製造を担当するメーカーとの間でかなり進捗があったのかもしれません。

アップルカー計画は長年にわたり紆余曲折がいろいろと伝えられてきましたが、元BMWのEV部門の上級幹部をプロジェクトのリーダーに採用したとの報道もあり、続報を待ちたいところです。

Source:A live conversation with Tim Cook(YouTube)

via:MacRumors