President Donald Trump tours an Apple manufacturing plant, Wednesday, Nov. 20, 2019, in Austin with Apple CEO Tim Cook and Ivanka Trump, the daughter and adviser of President Donald Trump, left. (AP Photo/ Evan Vucci)
ASSOCIATED PRESS

アップルの共同創業者スティーブ・ジョブズ亡き後、ティム・クックCEOはいかにしてアップルを世界有数の巨大企業に成長させたのか。逆風が吹いたはずのトランプ政権のもとで数々の危機を乗り切ったことなど、クック氏の巧みな経営や外交術のあらましが伝えられています。

米Bloombergは現役社員や元従業員、ライバル企業の幹部やワシントン(大統領府)の関係者への取材を元に、クックCEOがアップルを取り巻く難しい状況をどうやって切り抜けてきたかを時系列に沿って追っています。

まず始まりは、2012年1月のバラク・オバマ大統領との晩餐会の席上でのこと。当時は副大統領だったジョー・バイデン(現大統領)氏が、CEOに就任して間もないクック氏に「なぜアップルは米国でiPhoneを作れないのか?」と質問した話まで遡っています。

それ以前、当時のオバマ大統領から同じ質問をされた先代CEOのスティーブ・ジョブズ氏は「そうした仕事は(米国に)戻ってこない」とぶっきらぼうな答をしたそうです。対照的にクック氏は「滑らかでけんか腰ではない」ことを言い、その年の終わりに米国でMacの一部を生産すると発表したしだいです。

著名な億万長者の投資家ウォーレン・バフェット氏は、こうした外交的なカンこそが現在のアップルにとって必要なスキルだと指摘。「ティムはスティーブのように製品を設計することはできないかもしれません」「しかし、ティムは私が過去60年間に会ったCEOの中で、数少ない人々に匹敵するほど世界を理解している」と高い評価を述べています。

その特性が最も発揮されたのが、トランプ政権との付き合い方でした。つまり必要であれば冷静な態度を取り、不要なことは何も言わない自制心です。

たとえば2019年11月、トランプ氏がクック氏と共にテキサス州のMac Pro工場を視察したときのこと。トランプ氏はこの工場を選挙公約の達成だと称し「私はいつかアップルが中国ではなくわが国に工場を建設することを見るだろうと言った」「それは実際に起こっているのです。すべて実現した。これはアメリカンドリームだ」と記者団に対して語りました。

この一部始終をクックは冷静に見ながら、工場の従業員には明らかなことには触れませんでした。それは、トランプ氏が嘘をついていたということ。この施設はアップルではなく受託生産企業Flex所有であり、6年前から先代Mac Proを生産していた事実を黙っていたわけです。

そうした外交術の一方で、ジョブズ氏や元デザイン最高責任者ジョニー・アイヴ氏が高級志向だったため、クック氏らがサプライヤーとの交渉には(コストカットのため)厳しい態度で臨んだことも語られています。たとえばアイブ氏のチームがMacBookのUSBポートを優雅に収納するためにデザインした特注の筐体のため、基本的なパーツが競合他社製PCの約3倍の5セント(1ドルの20分の1)かかっていたとき「文字通り小数点以下4ケタまで交渉して経済的な価格にした」というぐあいです。

トランプ政権のもとでは米中関係は悪化し、中国サプライチェーンで作られるiPhoneには追加関税がかけられる危機さえありました。が、アップルの時価総額が1兆ドル、やがて2兆ドルを突破したのは、まさにトランプ大統領がいた2016年~2020年の出来事です。天才・ジョブズ氏の強烈な印象の前にはかすみがちですが、困難な情勢のなかでアップルを大きく成長させたクック氏も、また違ったタイプの天才といえそうです。

Source:Bloomberg

via:9to5Mac