アップルのティム・クック、コロナ禍時代の卒業生を激励 (バーチャル卒業式スピーチ抄訳)

ジョブズの死にも言及

Ittousai
Ittousai , @Ittousai_ej
2020年05月6日, 午後 04:15 in Apple
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Tim Cook
Engadget Japan

アップルのCEOティム・クックが、米国オハイオ州立大学のバーチャル卒業式に自宅から祝辞を送りました。

クックが式典に招かれて話すのは珍しいことではありませんが、今年は通常の卒業式を開催できない理由である新型コロナウイルス禍について、この苦難の時代に社会に出ることについて、いま市井で社会を支える名もなき人々や、自身のスティーブ・ジョブズとのエピソードも交えて語る、今年の卒業生ならずとも一聴に値する内容です。

クックのスピーチは約7分ほど。平易な言葉ではっきりと話すため、聞き取りは比較的容易ですが、下に概要と一部抜粋を続けます。

・1918年の新型インフルエンザ パンデミック(スペイン風邪)について

まず冒頭は、皆さんの未来について話す前に過去を振り返りたいとして、1918年に世界を襲い数千万人の犠牲者を出したインフルエンザパンデミック、いわゆるスペイン風邪と、その影響で人生が変わり、歴史に大きな影響を与えた3人についてのエピソードから。

若き海軍次官として欧州へ渡り、船内で罹患したフランクリン・ルーズベルト。歩けないほど衰弱して帰国した後、国政を志した。

銀行員や教師として働きつつ、病床で「4月は残酷な月」から始まる長篇詩『荒地』を著したT.S.エリオット。後にノーベル文学賞を受賞する。

傷病兵のため看護助手に志願して患者から感染、合併症に苦しんだアメリア・イアハート。長い隔離療養生活を送る中で見上げた飛行機から、自身も飛行家になる夢を抱く。

卒業生に対して、一緒に卒業を祝うことができず残念としつつ、

「皆さんのクラスは、オハイオ州立大150年の歴史でも数少ない特別な年度です」「渦中にあるうちは、全体を俯瞰することは難しいかもしれない。それでも、この稀な状況を名誉の印としてくれることを願っています」。

・描いていた将来を奪う試練に立ち向かうこと。ジョブズの死

「歴史の試練に目と心を開いて立ち向かい、不断の努力を忘れなかった者こそ、他者の人生にもっとも大きな影響を与える者でもあるのです。

どの年代でも、人生はじつに苛立たしいやり方で、われわれの人生の物語を紡ぐのは自分自身だけではないのだと思い知らせてきます。好むと好まざると、時代の状況という気難しく身勝手な相手を共著者として受け入れねばなりません。

抱いていた輝かしい計画が崩れるとき、心からの望みが潰えるとき、わたしたちは選択を迫られます。損失を呪うか、それとも自分のための物語に夢中だったわれわれの首根っこを掴んで顔を上げさせ、変わってしまった世界に目を向けてくれたことに感謝する理由を見出すか。

1998年にアップルに入社したとき、自分の幸運が信じられませんでした。職業人としての残りの人生を、スティーブ・ジョブズのために捧げることができるとは。しかし、運命は夜盗のように訪れました。アップルがスティーブを失ったとき、わたしが感じた寂しさは、人が人に与える影響ほど強く、長く続くものはないことの証明です」

・現在の社会状況について、高等教育を受けた卒業生に望むこと

「いまの生活を振り返って、不便やあるいは退屈だったと言えるものは幸運と思うべきでしょう。多くの人が本当の苦難と恐怖に直面することになり、そうでなくてもぎりぎりの暮らしを強いられることになるでしょう。

癒やしをもとめて愛する人や友人に向きあうときには、あなたの生活にもっと離れたところから、しかし同じくらい重要な影響を与えている人々のことに思いを致すよう努めてください。

父親として家族を支える未登録移民のことを思おう。コミュニティからは無視され、あるいは蔑まれながら、危険な現場の仕事で家族を養い、あなたの家族をも支えている。

シングルマザーのことを考えよう。夜は店の品出しを、朝は市バスの運転手として働き、社会の多くを支えている人のことを。

膝をついて病院の床を清掃する用務員のことを思おう。今日のその仕事は、寺院を清める高僧のように孤高で尊い。

そして何よりも自分自身について、世界に誇る高い教育を受けた自分たちが、どのように行動するのか、働くのかを深く考えてほしい。

このような状況だからこそ見えてくる、本当に大事なものを心に刻んでほしい:大切な人たちが健やかで幸せであること、所属するコミュニティの回復力、そして医師からゴミ収集人まで、他者のために尽くす人々が支払う犠牲のことを。」

・アブラハム・リンカーンの言葉から

(在宅勤務のおかげで空いた時間は読書に使っている、何度も読み返しているのはリンカーン。これほど時代の困難に影響を受けた人物はいない、現在の苦しい状況を別の視点から考えたいならぜひおすすめする、リンカーンは国が火を上げるのを目にして、炎に飛び込むことを選んだとして、リンカーンの教書演説から引用)

『平穏な時代のドグマは、騒乱の現在には役に立たない。』『困難が山積する時代、われわれは困難な状況とともに立ち上がり高みを目指さねばならない。かつてない状況には、かつてない新しい考え、新しい行動が必要だ。われわれ自身を束縛から解き放つことで、国を救うことができるだろう』(リンカーンの演説から)

「卒業生の皆さん、あなたがたの状況もかつてないものです。

皆さんにとって、古い教条など最初から選択肢にはならない。過去に縛られる余裕もない。

なすべきことは、この困難な世界に開かれた目を持って漕ぎ出し、自分の選んだとおりではなかったとしても、それでも完全にあなた自身のものである物語を紡ぐことだ。

皆さんは両親の、祖父母の、おばやおじや教師の、そして陰に陽に皆さんを形作ったコミュニティの誇りです。

この誇らしい日は決して約束されていたわけではなく、皆さんの多くは努力を重ねて、みずから今日この日を勝ち取ったのです。

卒業の栄誉はいまや皆さんのものです。

もういちど改めて考え、新しく行動しよう。(Think anew. Act anew.)

予想していた将来よりも、もっと良い未来を作ってください。

そしてこの不安に満ちた時代に、もういちど我々に希望を与えて欲しい。

ご卒業おめでとう。立派に、健やかにいてください。ご清聴ありがとうございました。」

OSU 2020 Virtual Commencement


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