MVNOのサービスをドコモショップで販売したり、dポイントと連携したりするなどして、小容量・低価格を求めるユーザーに応えるNTTドコモの「エコノミーMVNO」。既にNTTコミュニケーションズの「OCN モバイル ONE」がエコノミーMVNOとしてサービスを提供していますが、もう1つ、参入を打ち出しているのが「トーンモバイル」ブランドでMVNOとしてサービスを提供する、ドリーム・トレイン・インターネット(DTI)の親会社であるフリービットです。

そのフリービットは2021年12月15日に説明会を実施し、エコノミーMVNOとして新たに提供するサービスの概要について説明しました。その内容は既報の通りですが、簡単に振り返りますと、フリービットが「トーンライフスタイル」という新たな会社を立ち上げてエコノミーMVNO向けサービス「トーンモバイル for docomo」を提供するとしています。

その上で、2021年12月22日より新たに提供されるのが「TONE for iPhone」になります。これは、トーンモバイルがこれまで提供してきた「TONE SIM(for iPhone)」の発展形というべきサービスで、主にiPhoneを使いたい子供、さらに言えばその子供のスマートフォン利用を見守りたい親向けに提供されるものになります。

▲フリービットが新会社を立ち上げ、エコノミーMVNO向けに提供する「TONE for iPhone」。iPhoneを利用する子供の見守りを重視したサービスになる

具体的には月額1100円で動画以外のインターネット使い放題と通常の音声通話、「050」番号のIP電話が利用できるほか、月額308円でスマートフォンの利用制限やフィルタリング、現在位置の確認などができる「TONEファミリー」を、iPhoneを持つ子供とそれを見守る親の2アカウント分利用可能。従来のTONE SIM(for iPhone)では、同じサービスを月額2915円で提供していたことから、料金が半額以下とかなり抑えられていることが分かります。

そしてこれら一連の発表内容を見ると、なぜトーンモバイルがエコノミーMVNOとしてNTTドコモと連携するに至ったのかが見えてきます。NTTドコモ側にとっての大きな理由は、やはりトーンモバイルがOCN モバイル ONEと被らないサービスを提供していることでしょう。

先にも触れた通り、エコノミーMVNOとしては既にNTTコミュニケーションズも連携していますが、同社はNTTドコモと同じ日本電信電話(NTT)グループの企業ですし、2021年1月にはNTTドコモの子会社化となる予定で、MVNOとはいえ外部の企業とは言い難い。しかもOCN モバイル ONEのサービス内容は「月○○円で××GBが使える」という、MVNOの王道というべきもの。他の多くのMVNOも同様のサービスを提供していることから、連携に適したMVNOの選択肢がそもそも少なかったといえます。

とはいえ連携するMVNOがOCN モバイル ONEだけでは、公正競争の面から「グループ企業をえこひいきしている」とも言われかねません。それだけにエコノミーMVNOを成立させるべく、、純粋な外部のMVNOとの連携を必要としていたというのがNTTドコモの本音でしょう。

▲エコノミーMVNOとして参入が打ち出されたのは2社だが、NTTコミュニケーションズは実NTTドコモのグループ企業であり、外部からの参入はフリービット1社のみとなる

そこで白羽の矢を立てたのがトーンモバイルだったといえます。トーンモバイルは子供とシニアに重点を置いたサービスを提供するというMVNOの中では異色の存在で、OCN モバイル ONEとの重複もないことから連携もしやすいと判断し、連携に力を注ぐに至ったといえます。

ではトーンモバイル側はなぜエコノミーMVNOとして連携を図るに至ったのでしょうか。エコノミーMVNOとして連携するには、ドコモショップでの契約やサポート、dポイントなどに係る手数料をMVNO側が支払う必要があり、規模の小さいMVNOはそれが参入障壁になっているとの話もあるのですが、その条件をのんでまで連携に至ったのにはトーンモバイルの成り立ちが影響していると考えられます。

トーンモバイルの前身は、フリービットが2013年にMVNOとして立ち上げた「フリービットモバイル」。当時からスマートフォンと通信、サービスを一体で提供しながら安価な料金を実現するなど、当時から異色のMVNOとして注目されていました。

▲トーンモバイルの前身となる「フリービットモバイル」は、自社開発のスマートフォンを活用した垂直統合型のサービスを提供するなど、独自性の強いサービスを提供していた

ですが2015年、フリービットはMVNOの成長を見込んで参入を計画していたカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)と提携、フリービットモバイルの事業はトーンモバイルとして独立し、CCCの傘下に入ることとなりました。その後はCCCとの連携を深め、子供やシニアに特化したサービスの独自性を高めていくと共に、「TSUTAYA」「カメラのキタムラ」といったCCC傘下企業の店舗を活用して販路を広げていきました。

▲2015年にフリービットはCCCと提携、フリービットモバイルはトーンモバイルとなってCCC傘下となった

しかしながらCCC、そしてMVNOを取り巻く市場環境が大きく変化したこともあって、2019年に両社は提携を解消、トーンモバイルの事業はDTIに譲渡され、再びフリービットの下で事業を続けることとなったのです。そこでフリービットは、トーンモバイルで培ったサービスをオープン化して他の企業に提供するなどして事業拡大を進めていたのですが、トーンモバイル自体の事業を伸ばすにはやはり販路が重要になってきます。

トーンモバイルは現在もCCCの販路を活用していますが、提携解消で今後の販路に不透明感が高まっていたのも確かです。それだけに、全国2400店舗を超えるドコモショップという非常に大きな販路が得られるエコノミーMVNOは同社にとって魅力的だったといえるでしょうし、フリービット単独では困難だった、子供世代に強いiPhoneとのセット販売ができるとなればなおさらです。

実際トーンモバイルではTONE SIM(for iPhone)のCCC関連店舗での取り扱いを2021年11月10日をもって終了しています。この動きはCCCとの提携解消に加え、ドコモショップでTONE for iPhoneを販売することを見据えて販路を大きく切り替えたと見ることができるでしょうし、さらに言えばフリービット側が、それだけエコノミーMVNOに力を注ごうとしている様子も見て取ることができます。

そこで気になるのは今後、トーンモバイルがどこまでエコノミーMVNOを重視していくのかということ。トーンモバイルはサービスだけでなく端末も自身で提供するという垂直統合型のサービスを重視してきましたが、エコノミーMVNOの立場で同じスタイルでのサービス販売をすることは難しいでしょう。

▲トーンモバイルは端末とサービスを一体で提供する垂直統合型のスタイルに力を入れてきたが、エコノミーMVNOでこのスタイルの商品を扱うのは難しいと考えられる

それゆえ参入当初はSIM単体でサービス提供していたiPhone向けに絞ったといえますが、エコノミーMVNOでの販売が好調で契約数が大幅に伸びるようであれば、ドコモショップでより販売しやすいようサービス設計を変えてくる可能性も考えられるでしょう。

ですがそれはMVNOが携帯大手への依存を強める動きにもつながってくるため、MVNOの独立性担保と市場競争の活性化という視点から見るとマイナスの側面もあるように感じてしまうのが気になります。