[名称] PCカード Type III HDD
[種類] HDD
[記録方法] 磁気記録
[サイズ] 54×85.6×10.5mm
[容量] 170MB?~1GB?
[登場年] 1995年頃~

今や淘汰された懐かしの記録メディアたちに光を当てるこの連載企画では、ゆるっと集めているリムーバブルメディア・ドライブをふわっとご紹介していきます。

連載:スイートメモリーズ

「PCカード Type III HDD」は、PCカードスロットに装着できる小型HDD。PCカードは、ノートPCなどの小型機器用の拡張スロット規格で、90年代前半から、USBが本格普及する00年代前半あたりまで広く使われました。ゲーム機のPlayStation 2にも搭載されていたので、使ったことはないけど知っている、という人もいそうですね。

最初はSRAMやフラッシュメモリーを採用するメモリーカード用としてスタートしましたが、その後拡張され、IOカードへと対応。拡張性の低いノートPCへと手軽に機能を追加できることから、重宝されました。古くからPCを使っている人であれば、モデム、LAN、SCSI、Wi-Fi、PHSなどのカードにお世話になったという人も多いでしょう。

規格が更に拡張され、ATA(AT Attachment、IDEをベースにANSIが規格化)へと対応したのが、1992年。本格的に使われるようになったのは、1993年のPCMCIA 2.1/JEIDA 4.2となってからですが、これにより、汎用ストレージとしての利用価値が高まりました。フラッシュメモリーを使ったATAフラッシュカードや、HDDなどが登場しています。

今回紹介する「PCカード Type III HDD」は、このATAに対応したHDDのうち、初期のものとなります。

ちなみに、PCカードは厚さにも規格があり、Type Iが3.3mm、Type IIが5.0mm、そしてType IIIが10.5mmとなります。実は、さらにぶ厚いType IVと呼ばれるものもあるのですが、これは正式な規格ではありません。確か、東芝あたりが何かでこの名称を使っていたような記憶があるのですが……資料が見つかりませんでした。

このHDDに関して正式な名称がないので呼びにくいですが、大きな分類として呼ぶなら、「PCカード ATA HDD」でしょうか。PCカードのHDDはFlashと違いATA以外のものがないこと、また、今回は形状も込みで呼称したかったので、「PCカード Type III HDD」としています。

正面から見ると普通のHDDに見えてしまいますが、サイズはかなり小さく、投影面積でいえば2.5インチHDDの半分程度。今でもコンパクトに見えます。

PCカードは68ピンのコネクターを採用。当然、このPCカード Type III HDDにも、ピンのささる小さな穴が開いています。IDEのHDDを見たことある人であれば、ピンのオス/メスが逆だなー、などと感じそう。

斜めから見ると、厚さが際立ちます。さすが10.5mm。

PCカード Type III HDDは、手軽に着脱できるという点ではリムーバブルHDDとして価値があったのですが、ネックはこの厚さ。小型機器ではPCカード Type IIスロットが1つしかないので、そもそも入りません。また、ノートPCではType II×2というのがほとんどでしたから、Type IIIのHDDを装着してしまうと他のPCカードが使えなくなってしまいます。

物置を漁ったらType II×2を装備したThinkPad 535Xが出てきたので、PCカードスロットに入れてみましょう。

見ての通り、2つあるType IIのスロットがHDDだけで埋まってしまいます。なお、ホコリがひどいのは、表面が加水分解してベタベタになってしまっているためです。

純粋に価格が高めだったこと、入手性が悪かったことも、あまり使われなかった理由です。なにより、デスクトップPCで使うにはPCカードスロットを増設しなくてはならず、このハードルが高かったというのもあります。せっかくのリムーバブルHDDなのに、ノートPCでしか使えないなら……そりゃ、MOZipを使いますよね。

ただし、このHDDを使うしかなかったPCもあります。その代表が、ウルトラマンPCこと「Palm Top PC 110」。1995年にIBMから登場した超小型PCで、小ささゆえにHDDが内蔵されていません。これのWindows 3.1モデルに、PCカード Type III HDDが採用されていました。

というか、今回紹介してるこの「VIPER 260」が、Palm Top PC 110のもの(だとして譲ってもらったもの)です。

他に採用している機器はないかと探してみたところ、キヤノンのデジカメ「EOS DCS 3」で採用されていました。これは、フィルムカメラのEOS-1Nをベースにコダックが開発したもの。発売が1995年7月となっているので、10月発売のウルトラマンPCよりもちょっと早いです。

PCカード Type III HDDの単品売りはあまりなかったように記憶していますが、国内ではアイ・オー・データ機器が最大1GBまでのモデルを販売しており、入手できないわけではなかったようです。

とはいえ、90年代後半にはフラッシュメモリーが低価格化してきており、デジタル機器のストレージとしては、コンパクトフラッシュやスマートメディアなどが主流となっていきました。

それでも容量当たりの単価が安いHDDはしばらく健在で、Type IIIこそ後継がなかったとはいえ、コンパクトフラッシュサイズの「Microdrive」(1999年)、Type IIサイズの「モバイルディスク」(2001年)などが登場しています。

連載:スイートメモリーズ

参考:

PCMCIA, Wayback Machine
Palm Top PC 110(2431-YDW), インバースネット
EOS DCS 3, キヤノン
PCHD-520c, アイ・オー・データ機器
PCHD-1Gc, アイ・オー・データ機器
大容量5GBのPCカード型ハードディスクの発売について, 東芝