KDDIがauとUQ mobileの2ブランドを持つメリットとは(石野純也)

各大手キャリアとサブブランドの関係性を振り返ります

石野純也 (Junya Ishino)
石野純也 (Junya Ishino)
2020年05月21日, 午後 05:00 in uq
0シェア
UQ Junya Ishino

KDDIが、UQコミュニケーションズからUQ mobileを継承し、10月1日に事業を統合します。元々UQコミュニケーションズは、KDDIが3割出資する関連会社で、UQ mobileもauのサブブランド的に扱われていましたが、KDDIに移ることで両ブランドの連携が、より強固なものになりそうです。

UQ Junya Ishino

▲UQ mobileをUQコミュニケーションズから継承し、KDDIに統合する

UQ mobileとワイモバイルの違いは?

サブブランド扱いされてきたUQ mobileですが、事業の形態としては、KDDIから回線を借りるMVNOでした。この点は、ソフトバンク社内でブランドを分けていただけのワイモバイルとの大きな違いです。

そのため、各種調査会社が発表する「MVNOのシェア」から、ワイモバイルは除外されていました。あくまで、自社で回線を持つソフトバンク自身が直接運営するブランドだからです。

UQ Junya Ishino

▲MVNOではシェア2位のUQ mobile(2019年9月時点、MM総研調べ)。ただし、グラフからはMVNOではないワイモバイルは除外されている

技術的には、設備を外の会社として接続しているかどうかが、大きな違いになります。UQコミュニケーションズはKDDIの関連会社ではある一方で、あくまで別会社のため、他のMVNOと同じ条件でPGW(Packet Data Network Gateway)などの設備を持ち、KDDIに接続料を支払い、回線を接続していました。

そのため、この接続点の帯域が狭いと、原理的には他のMVNOと同様、トラフィック混雑時には速度が落ちてしまうおそれがあります。

通信速度の速さゆえに「親会社からの優遇の意」という疑惑も

一方で、UQ mobileの回線は、他のMVNOと比べてもスピードが速く、総務省の有識者会議では「ミルク補給(親会社からの優遇の意)があるのでは?」といった疑惑の目が向けられていました。他のMVNOとは条件が違うのではないかというわけです。

結果として、UQコミュニケーションズも他社と同条件で接続料をKDDIに支払っている事実が分かり、いわゆるミルク補給はないと結論付けられましたが、そのぶん、KDDIへの支払いもかさんでいたことになります。

UQ Junya Ishino

▲MVNOの中では通信速度が速く、ワイモバイルと並んでいた一方で、それがゆえに他のMVNOからは疑惑の目も向けられていた(データは2020年2月のもの、MMD研究所調べ)

歴史的経緯をお話すると複雑になってしまうため割愛しますが、UQコミュニケーションズはやや特殊な立ち位置の会社で、自身もMNOとしてWiMAX 2+の基地局を持ち、KDDIや各MVNOに設備を貸し出しています。au回線のBand 41として使われるTD-LTEがそれです。

この資金がいくらになっているかは不透明ですが、見方によっては、KDDIへの回線貸し出しから得た資金(の一部)を、MVNOの接続料として突っ込むことで、ピーク時のトラフィックにも耐えられる太い回線を用意できているとも言えます。

とは言え、UQコミュニケーションズに対するKDDIの出資比率はあくまで3割程度。KDDIの連結子会社ではあるものの、ほかの株主もいる手前、無尽蔵に帯域を増強するわけにはいきません。

高速で通信できると言っても、相互接続を介している以上、今の形態ではau回線に並ぶことはできません。同じau回線を使う他のMVNOから見たとき、ミルク補給はないと言われても、モヤッとした気持ちになるはずです。

UQ Junya Ishino

▲UQコミュニケーションズはKDDIの連結子会社だが、出資比率は3割程度で、あくまで別会社として運営されている

KDDIに統合すれば接続料は必要なく、帯域の幅は無限に増やせる

KDDIに統合すれば、少なくともこうした問題は解消されます。設備的には変更を加えず、イメージとしてはUQ mobileのものをそのままKDDIが引き継ぐ形になるようですが、同じ会社の設備同士を接続するのであれば、いわゆる接続料は必要なく、帯域の幅は無限に増やせます。

今でも十分通信速度の高いUQ mobileですが、構造として安定した速度が出しやすくなるのは、ユーザーにとってもメリット大と言えそうです。

統合後は、料金プランにも何らかの変化があるかもしれません。KDDIの決算説明会で、代表取締役社長の高橋誠氏は、「両ブランドの特色を生かし、ニーズに合った分かりやすい料金を提供する」とコメントしています。

具体的な金額については言及を避けつつも、「安心して大容量を使っていただくお客様をau中心で進める。低料金でも品質が安定しているのがいい方はUQをお選びになる」と語りました。

UQ Junya Ishino

▲料金プランによる住み分けを示唆する高橋社長(写真はKDDI提供)

UQ mobile上で使えるauのサービスはさらに増えると予想

現状の料金プランを見ると、すでにある程度住み分けはできていると言えますが、auがソフトバンクばりに大容量プランに振り切っているかというと、そうではありません。

1つの会社で運営することで、統合後は、auとUQ mobileの差が今以上にしっかり出ることになるかもしれません。当然ながら、オープン化したau IDを軸に、UQ mobile上で使えるauのサービスも、さらに増えることになるでしょう。

UQ Junya Ishino

▲現状でもauのサービスの一部は利用できるが、統合後はこの動きが加速しそうだ

楽天モバイルがMVNOの新規募集を停止したのに続き、UQ mobileがKDDIに統合されることで、MVNOの競争環境も再び大きく変わりそうです。

UQ mobileがMVNOではなくなると、最上位の2社の座が空くことに

2019年9月時点でのシェアは、楽天モバイルが1位でUQ mobileが2位(MM総研調べ)。楽天モバイルはすぐにMVNOを停止するわけではありませんが、徐々にMNO側にユーザーを移行させていくため、ユーザーが減ることはあっても、増えることはありません。その上で、UQ mobileがMVNOではなくなると、最上位の2社の座が空くことになります。

とは言え、ユーザーはサブブランドとMVNOを区別して契約しているわけではなく、割安な通信回線として選んでいるため、あくまで見かけ上のシェアが変わるだけの話。

UQ mobileがKDDIとの統合を果たせば、店舗での展開など、営業力も強化されるので、実態としては、MNOやMNO傘下のサブブランドと、そこに対抗しきれないその他MVNOの差がますます開いてしまうおそれもあります。IIJやNTTコムは、フルMVNOやB2B、B2B2Cに活路を見出そうとしていますが、コンシューマー向けのMVNOはますます苦戦を強いられる可能性がありそうです。

サブブランドを持たないドコモはどう戦うのか

3キャリアの内、唯一サブブランドを持たないドコモがどう対抗していくのかも、気になるポイントです。ドコモは常々、サブブランドは持たず、ドコモとしての料金プランで戦っていくことを表明していました。

UQ Junya Ishino

▲サブブランドには段階制プランのギガライトで対抗していくというドコモだが……

一方で、競争環境は日々変化しています。ソフトバンクに続き、KDDIもサブブランド戦略を本格化するとなれば、従来通りの方針では対抗し切れないかもしれません。

結局、実現はしませんでしたが、2018年には、NTTコムの持つOCNなどのコンシューマー事業をドコモに寄せるNTT再編案も報じられていました。サブブランド競争という観点では、こうしたアイディアを再検討する時期に差し掛かっているのかもしれません。


TechCrunch 注目記事「新型コロナのソーシャルディスタンス(社会的距離戦略)を強力に支援するビデオチャットアプリ8選

関連キーワード: uq, kddi, au, MVNO, MNO, Mobile phone, smartphone, network, docomo, Softbank, iijmio, ocn, ntt, news, gear
0シェア

Sponsored Contents