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総務省は10月27日、「モバイル市場の公正な競争環境の整備に向けたアクション・プラン」を発表した。

  •  eSIMの促進

  • 番号持ち運び制度(MNP)の利用環境整備

  • キャリアメールの持ち運び実現の検討

  • データ接続料の一層の低廉化

  • 改正事業法の着実な執行(通信料金・端末代金の完全分離)

などの具体的な取り組みが時期を含めて公表された。

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全体的にみると「ユーザーが乗り換えしやすくなる施策」ばかりであり、菅総理が掲げる「4割値下げ」に直結するものとはいえない。「アクション・プラン」と名前はかっこいいが、値下げに対する即効性はないに等しい。キャリア関係者は「総務省の毎度くりかえされる茶番に過ぎない」と手厳しい。

総務省という立場上、当然のことながら、キャリアに対して「4割値下げしろ」と圧力をかけることは不可能だ。総務省は市場の競争環境を整備することが役目であり、アクション・プランは今できることの全てをリストアップしたと言えるだろう。これらを着実に実行し、ユーザーが格安スマホに乗り換える際に、心理的、金銭的な負担を少なくなるようにしなくてはならない。

キャリアを契約しているユーザーが大挙して格安スマホに流れれば、それを阻止しようと大手キャリアが対抗値下げをしてくる可能性がある。結果として我々の家計に占める通信費の割合は下がっていくかもしれない。

消費者が格安スマホを「面倒臭い」「わからない」「手続きが複雑そう」と敬遠し、何十年も同じキャリアを使い続けるから、キャリアは甘え、あぐらをかいて、料金プランを値下げしようとしないのだ。

今回のアクション・プランを発表するにあたり、武田良太総務相は「ユーザーに自分がどう言ったスマホを使い方をして、どう料金プランを選ぶべきか、きちんと理解を深めてもらいたい」と話していた。

やはり、ユーザーは、自分が何に対して、どれくらいのデータ容量を使っているかをまず把握し、次にそもそも自分が使っているキャリアで、自分に合った料金プランを契約できているのか、無駄なオプションはないのかということを理解しないといけない。

もし、利用実態と合っていないのであれば、料金プランを変えたほうが賢明であるし、それでも高いと感じているなら、とっとと格安スマホに乗り換えてしまったほうがいいのだ。

今回のアクション・プランが効果を発揮し、乗り換えが加速するのには何年もかかるかもしれない。ひょっとすると、アクション・プランを実行しても全く乗り換えが増えない恐れもある。

KDDIとソフトバンクが値下げ新料金を発表

総務省のアクション・プランは自然にユーザーの乗り換えを促す取り組みなのだが、その足を引っ張っているのが、菅総理の発言のような気がしてならない。

菅総理は「日本の携帯電話料金は世界に比べて高過ぎる。特に20GBの大容量プラン」と、総務省が世界の6か国で比較している「内外価格差調査」をもとに20GBプランの値下げを迫っている。

この指摘に対して、キャリア幹部は「だったら、20GBで高くないプランを出せばいいってことでしょ」とささやいた。

それを受けてか、KDDIはUQモバイルブランドで、20GBで月額3980円の「スマホプランV」を発表。さらにソフトバンクもワイモバイルブランドで、20GBで10分以内の国内通話無料がついて4480円の「シンプル20」を投入する。

かつて、総務省からのイチャモンにより、キャリアは1GBからのプランを作ったが、今度は菅総理の要望によって20GBプランが新設されることとなった。政府の意向によってプランが増え、ユーザーにとって複雑でわかりにくい状況が作られてしまっている。

大手キャリアの寡占に逆戻りか

今回、大手キャリアのサブブランドが20GBで4000円前後のプランを投入してきたことで、見劣りしてしまうが格安スマホ(MVNO)のプランだ。IIJでは月間3GBに20GBのデータオプションを足して、月額4700円という価格をアピールをしていたが、UQモバイルやワイモバイルの新料金を前に、見事に霞んでしまった。

IIJでは、かつてキャリアが20GBで合計8000円という料金プランを出していたこともあり、それとの比較でお得さをアピールしていたが、UQモバイルとワイモバイルにポジションを奪われたことになる。

菅総理の意向により、UQモバイルやワイモバイルが強くなると、結局、MVNO(格安スマホ)陣営の経営が立ち行かなくなり撤退ということにもなりかねない。MVNOが撤退すれば、最終的には3キャリアのメインブランドとマルチブランドしか残らなくなり、寡占状態に逆戻り。料金は高止まりすることになる。

菅総理の値下げプレッシャーは総務省の「公正な競争環境」とは真逆の「ゆがんだ競争環境」につながりかねないのだ。