UQ Junya Ishino

KDDIが、低料金で小容量から中容量のユーザーをターゲットにしたUQ mobileに新たな割引や新サービスを追加します。対象になるのは、9月2日からスタートする5G対応の「くりこしプラン +5G」。割引は「自宅セット割」、新サービスは国際ローミング時の「世界データ定額」や「故障紛失サポート」です。いずれも、4Gにのみ対応している現行のくりこしプランには非対応ですが、新プランに切り替えることで利用が可能になります。

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▲UQ mobileは、5Gのサービス開始に合わせ、自宅セット割や世界データ定額などの各種サービスを導入する

1つ目の自宅セット割は、非常にシンプルな固定回線などとのセット割。KDDI自身で提供するauひかりはもちろんのこと、CATV事業者やオプテージのeo光など、非NTT系列の固定回線と幅広くセットが組めるのが魅力です。auでは、元々「auスマートバリュー」と呼ばれるセット割引が提供されていましたが、このUQ mobile版と考えれば理解しやすいでしょう。

UQ mobileならではなのが、「auでんき」や「UQでんき」でも、固定回線の代替になること。元々、UQ mobileでは、6月から「でんきセット割」を提供していましたが、ここに固定回線での割引が加わり、どちらか一方のコースを選べる形に割引がパワーアップしました。「でんき」と固定回線を重畳させて適用させることはできませんが、電気は別の事業者と契約していて動かしづらいといった場合に、割引の選択肢が増えるのはユーザーにとってうれしいサービスと言えそうです。

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▲自宅セット割が加わり、電気と固定回線のどちらかを選択できるようになる

ちなみに、自宅セット割適用時の料金はプランSが990円、プランMが2090円、プランLが2970円。UQ mobileのド競合とも言えるワイモバイルには同等の割引がなく、家族契約の場合も2回線目からしか割引が適用されないため、“1回線目から安く使いたい”というケースではUQ mobileに軍配が上がります。1GB以下が無料だったり、3278円で使い放題になったりするため、厳密には比較が難しいところですが、部分的には低料金を売りにする楽天モバイルよりも安くなる価格設定で、契約者数が伸びているのは納得できます。

新サービスとして加わるのが、世界データ定額や故障紛失サポート。特筆したいのが、前者の世界データ定額です。これは、24時間490円から、予約なしでも24時間980円でデータローミングを利用できるサービス。使ったデータ量は、ユーザーが契約しているプランから引かれるため、3GBのプランSなら3GBまで、15GBのプランMなら15GBまで使えることになります。元々のデータローミングは、大手3社とも、1日2980円を上限にしていていましたが、「高すぎる」との声を受け、auが2016年にいち早く導入していました。

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▲世界データ定額は、2016年に発表されたauのサービス。後に事前予約でさらに料金が下がる仕組みも導入された

対するUQ mobileは海外での利用が音声通話やSMSに限定されていたため、データローミングに対応したのは大きな進化です。海外ローミングがきちんとできるのは大手キャリアならでは。MVNOのほとんどが、海外利用時のデータローミングに対応していないため、大手キャリアのサブブランドとしての差別化要素になります。また、なぜかソフトバンクは国際ローミングサービスが手薄で、旧来の料金体系のままになっているため、対ワイモバイルの視点でも強みになると思います。今は海外渡航に大きな制限がかかっているため、すぐに魅力になるわけではありませんが、アフターコロナにぜひ期待したいサービスです。 

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▲UQ mobileでも、auと同じ世界データ定額や故障紛失サポートが利用できるようになった

では、なぜこうした新サービスは、「くりこしプラン +5G」にしか導入されていないのでしょうか。答えは「5G対応」にありそうです。一見すると、固定回線とのセット割や世界データ定額と5Gは、無関係のようにも思えますが、コアネットワークの設備という観点では強い関連があります。

これまでのUQ mobileは、自前の設備を持つMNOでありながらどこかMVNO的でもありました。通信速度はauと並びましたが、これは相互の設備を接続する帯域を無尽蔵に増やしたためでしょう。あくまでイメージですが、KDDIの建物とは別のところにあったMVNOの設備を、中身を変えずに丸ごとKDDIの母屋の中に入れてしまったようなお引っ越しをしたというわけです。

世界データ定額はおろか、データローミング自体ができなかったのもそのためです。MVNOの場合、音声通話は大手キャリアからの卸で丸ごと借りているだけなので、海外に持って行った場合でも大手キャリアの回線としてローミングできます。一方で、こうした仕組みが採用されているため、海外キャリアからはドコモのMVNOならドコモとまでしか判別できず、MVNO側の持つデータ通信の設備につなげることができません。これは、MVNOとしての設備を引きずっていたUQ mobileにも当てはまります。

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▲2016年10月に開催されたIIJ主催の「IIJmio meeting 13」で公開された資料。MVNOでデータローミングできない仕組みが解説されている

5Gの提供時期がauとズレていたのも、設備の差分があったからです。そこで、KDDIはUQ mobileの5G対応に合わせて設備を刷新したのと同時に、積み残しになっていた各種サービスへの対応を進めたようです。開始当初はSIMカードの変更が必要になったり、わざわざ同額の料金プランを4Gと5Gで分けているのも、これが理由だと思われます。

世界データ定額だけでなく、固定回線とのセット割や故障紛失サポート、YouTube Premiumのキャンペーンといったところまでauに合わせることができた背景には、こうした技術的な事情がありそうです。その意味で、UQ mobileにとっては5GのスタートこそがKDDIとの“真の統合”と言えます。深読みのしすぎかもしれませんが、「シンプルを、みんなに。」のブランドスローガンを掲げ、MVNO時代から続いていた三姉妹のCMを刷新したころにも、そんな意味合いが込められているような気がしています。

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▲5Gのサービス開始に合わせ、CMなどのブランディングも一新する