タッチ決済の普及状況についてVisaが報告

ビザ・ワールドワイド・ジャパンは12月17日に会見を開き、現在日本でも見かける機会の増えてきた「Visaタッチ」について最新状況を説明した。

Visaなどの国際ブランドのクレジット(デビット)カードを非接触リーダー端末に“かざす”ことで支払いが可能な「タッチ決済」の普及がスタートしたのは2015年から2016年にかけてのことだが、導入事例はごくわずかであり、日常使いにはほど遠い状況だった。

だが、ここ1-2年で大手チェーンや商業施設が対応するケースが急増しているほか、特にVisaブランドで発行されるクレジットカードやデビットカードで「タッチ決済」が必ず付随するようになってから、一気に利用場面が増えたほか、実際にタッチ決済で支払う場面に遭遇することも増えている。

きっかけの1つは、2020年に開催予定だった東京五輪の公式スポンサーであるVisaが積極的な普及策を国内で実践していたことに加え、新型コロナウイルスの問題が顕在化した2020年のタイミングで安全対策の一環として導入が加速したことにあると考えられる。

欧豪を中心にタッチ決済比率9割超の国も

諸外国の状況に目を向けると、欧州やオセアニアを中心に急速にタッチ決済が普及している。2010年代に一気に普及の進んだ東欧だけでなく、インフラ整備では最後発に近かったスペインが、対面決済におけるタッチ比率9割超を達成している。比較的早期からタッチ決済の導入が進んでいた英国やカナダなども6割超の利用率に達していることが分かる。

ただ、それ以外の国についてもここ最近になり大きく状況が変化しつつある。Visaによれば、直近の2020年4-6月期と7-9月期の比較だけで、タッチ決済比率が5ポイント以上上昇した国が50ヶ国に達している。さらに25%という割合でドラスティックに上昇した国もあり、2020年に入り状況が大きく変わりつつある。

対面取引におけるタッチ決済の普及率が過半数を超えている国。9割超の国も多い

ここ最近になりタッチ決済の利用比率は伸びており、普及ペースが加速している

Visaによれば、こうしたトレンドを牽引するのは普段使いでの利用増だという。例えばオーストラリアの事例でいえば、タッチ決済の導入開始が2006年だった一方で、実際に大きく普及に弾みがついたのは2012年の大手スーパーでの一斉導入だったという。それとともにATM利用回数が減少し、さらに現金決済比率が減少するという流れを生み出した。

オーストラリアの例。タッチ決済展開開始は2006年だが、2012年に大手スーパーでの導入が進んで利用が加速し、それとともにATM利用回数と現金利用率が減少していった

これを日本に当てはめると、普段使いでの利用シーンが増えることがタッチ決済の利用増ならびに、キャッシュレス比率拡大につながる可能性が高い。今年9月末時点のデータで、国内タッチ対応Visaカードの発行枚数は3230万枚と前年同月比2.3倍となり、タッチ決済もそれに乗じて伸びている。

セグメント別でいえば、スーパーマーケットやコンビニなど普段使いに直結する場所での決済回数が大きく伸びているが、その理由は今年2020年以降にタッチ決済に対応するチェーン店舗が急増したことにあり、利用機会が増えたことに起因する。つまり、タッチ決済だけをみてもキャッシュレス化へ大きく舵を切りつつある可能性が高い。

実際、コンビニでの店舗カバー率は70%に達しているとVisaでは説明しているが、具体的には大手ではファミリーマートを除く全チェーン店がタッチ決済に対応しており、やはりそれだけ利用機会が増えたということなのだろう。

日本におけるタッチ決済の状況。カード発行枚数と対応加盟店の増加とともに比率が上昇している

タッチ決済の利用をドライブしているのは日常使いに関するもの

加盟店での対応状況について

「NFC Pay」問題をどう解決するか

日本における“タッチ決済”導入黎明期に、従来の磁気カード(MS)やICカード(IC)決済と区別するために、POSやCCTなどの端末での決済手段の選択メニューに「NFC Pay」という項目が新たに追加され、タッチ決済時にはこれをあらかじめ選択する必要があった。当初は利用者も少なく、店員も不慣れなことからそこまで問題にはならなかったものの、利用者が増えたことで「タッチ決済」を明示的に利用者が選択することが難しくなってしまった。

MSとIC、そしてタッチ決済などの非接触(CL)の3つの支払い手段を同時に受け付けることができる「3面待ち」が海外での主流だが、日本ではNFC Payが先行してしまったことで、利用者が決済時に3面待ちを利用できるか分からず、あらかじめ決済時にどの決済手段を利用するかを伝える必要が出てきてしまった。しかも「タッチ決済」では電子マネーと区別がつかず、「Visaで」と伝えても3面待ちでなければ「タッチ」か「IC」かをあらかじめ伝えなければいけない。Visaによれば加盟店には3面待ちの導入を推奨しているというが、既存店舗ですでにNFC Payで動作している端末は多く、混乱の基になっている。

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現状の問題として、普及初期段階で「NFC Pay」という専用メニューを作ったために、決済時にタッチかそうでないかを明示する必要があり手順が煩雑だった

タッチ決済を交通系サービス利用に

さかのぼること2012年、英ロンドンで開催されたロンドン五輪に合わせる形で、クレカやデビットなどの決済用カードを用いた交通系サービス利用の仕組みが導入された。当初はロンドン市内のバスに料金キャップ制度なしの形で導入が行われ、フェイズ2となる2014年のタイミングで地下鉄対応や料金キャップ導入が行われた。

ロンドン交通局(Transporf for London:TfL)では2000年代に交通系ICカード「Oyster」を導入し、料金半額制度や現金利用廃止を経て一気に普及を促した。後にOyster利用をクレカなどの“タッチ決済”へと切り替えることで、Oysterの発行コストを削減しつつ、利用者の利便性向上に努めた。

この仕組みはOysterのみが利用可能だった「クローズドループ」に対して「オープンループ」と呼ばれ、後に同じ仕組みがシンガポールや米ニューヨークへと拡大されることになった。このオープンループの試みは世界中に拡大しており、Visaによれば現在500のプロジェクトが走っており、2019年度だけで62の都市で利用されているという。

最大のメリットは、普段使いのカードがそのまま交通系サービス利用に使える点で、その地域で利用できる交通系ICカードをわざわざ入手したり、チャージ不足により出入場の際に残高不足でわざわざ悩む必要もない。特に外国人がその国を訪問した際には、素早く乗り物に乗り込み、残高を気にせずサービスを利用できる点で利便性が高い。

海外での交通機関のタッチ決済導入例

交通機関へのタッチ決済導入は現在世界で500のプロジェクトが走っているという

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英ロンドン(TfL)での導入例。現金取り扱いを止めつつ、タッチ決済を導入したことで交通系ICカード(Oyster)の発行コストも削減

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シンガポールでの導入例。国家のデジタル化プロジェクトの一環だという

では、日本の現状はどうだろうか。FeliCaをベースとした交通インフラの構築されている日本だが、オープンループの波は着実に近付いている。例えば今夏には国内初となるタッチ決済での高速バス乗車サービスを茨城交通が導入して話題となった。そして鉄道での区間乗車料金支払いでは、WILLER TRAINSが運行する京都丹後鉄道が今年11月に全線でのタッチ決済導入を行っている。乗車時と降車時に車内外に設置された専用リーダーにタッチするだけで、駅間の差分となる料金がクレカから引き落とされる仕組みだ。

ローカル鉄道というのもあるが、そうした状況でもストレスなく利用できる程度のスピードで、むしろ手軽さの方が大きいだろう。今後も導入ケースは増えるとみられ、機会があればぜひ試してみたいところだ。

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いわゆる「オープンループ」と呼ばれる決済用カードを交通系サービス乗車に利用する仕組みの日本での導入例

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日本で初の区間制運賃でのタッチ決済に対応した京都丹後鉄道。宮津駅にて

加盟店や交通機関ごとのオーソリの仕組み