スマホ台頭で苦境のコンデジ、狙うはウェブカメラとVlog(佐野正弘)

オリンパスも撤退──動画特化のデジカメ登場

佐野正弘(Masahiro Sano)
佐野正弘(Masahiro Sano)
2020年07月24日, 午前 06:00 in sony pictures
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少し前のことになりますが、2020年6月24日にオリンパスが映像事業を投資ファンドの日本産業パートナーズに譲渡すると発表しました。

オリンパスといえば「OM-D」「PEN」など人気のシリーズを持つカメラの老舗としてよく知られる存在ですが、そのカメラ事業で赤字が続いていたことが売却・撤退に至った主因であり、新型コロナウイルスの影響が直撃してさらに業績悪化につながったことも大きかったようです。筆者もOM-Dを長く使っている1人だけに、このニュースは非常に残念なことでもありました。

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▲筆者も愛用している「OM-D」シリーズなどを提供しているオリンパスだが、日本産業パートナーズにデジタルカメラを含む映像事業を譲渡すると表明している

今後OM-Dなどカメラ製品がどうなるかは譲渡先の日本産業パートナーズ次第ということになりそうですが、同社はソニーからパソコン事業の譲渡を受けてVAIO株式会社を立ち上げ、一定の成功を収めるなどハードウェアにも知見を持っています。うまく事業を立て直して復活させてくれることを期待したいところです。

ですがオリンパスに限らず、デジタルカメラ業界は2010年頃をピークとして市場が急速に縮小しており、苦しい状況が続いているのも事実です。実際、デジタルカメラ市場の開拓者であり、「EXILIM」シリーズなどのコンパクトデジタルカメラで知られたカシオ計算機は、2018年にデジタルカメラ事業から撤退しています。

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▲カシオは2018年5月に、民生用デジタルカメラ事業から撤退することを発表。同社のWebサイトには生産終了のお知らせが掲載されている

そこまで急速に市場が落ち込んだ要因はスマートフォンに他なりません。デジタルカメラの販売が落ち込んだタイミングはスマートフォンの普及期と丁度重なっており、特にコンパクトデジタルカメラが強みとしていた日常的な写真を撮影するというニーズを、スマートフォンが奪ってしまったことは大きかったといえます。

しかもカメラはスマートフォンで最も人気のある機能であり、メーカー各社が開発に非常に力を入れている部分でもあります。それゆえメーカー同士の競争激化によって、スマートフォンのカメラ機能は著しい進化を遂げてきました。

例えば“一眼レフ風”といわれる背景をぼかして被写体を強調したポートレート写真の撮影も、被写体との距離を測定するカメラを追加したり、AI技術を活用したりすることで実現しています。また長らくスマートフォンカメラの弱点とされてきたズーム機能も、最近では潜望鏡のような「ペリスコープ構造」を採用したカメラを搭載することで実現し、デジタルズームも含めれば100倍ズームを実現する機種も出てきているほどです。

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▲スマートフォンの人気機能であるカメラは進化が著しい。「Galaxy S20 Ultra」は1億800万画素のカメラや、最大100倍のデジタルズームに対応したカメラなどを搭載している

そうした進化によってスマートフォンのカメラに多くの消費者が満足し、「デジカメがなくても困らない」という環境を作り出してしまったことが、デジタルカメラ市場の急速な縮小につながったことは間違いありません。

また、通信機能を持つスマートフォンの広まりによって、この10年の間にSNSが台頭し、写真をSNSに投稿することが日常的な行為となりましたし、「Googleフォト」のようにクラウドで大量の写真を保存できるサービスも増えています。スマートフォンが写真の残し方を紙からオンラインに変えてしまったことも、銀塩カメラから発展してきたデジタルカメラには不利に働いたといえるでしょう。

しかし、だからといって、デジタルカメラのニーズが完全になくなったのかというと、そうではありません。スマートフォンは常に持ち運ぶデバイスであり、なおかつカメラ以外にも多くの機能を備えていることから、搭載できるイメージセンサーやレンズのサイズにはどうしても限界があります。

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▲カメラ性能を向上させるほど、カメラのサイズが大きく目立ってしまうのがスマートフォンの弱点。Galaxy S20 Ultraのカメラ部分を見ると、カメラ部分の出っ張りがかなり目立つ

そこで最近のスマートフォンカメラは、AIなどソフトウェア技術をふんだんに活用し、シャッターを切るだけの簡単操作で綺麗な写真に加工することに力を入れるようになったのですが、それだけに「綺麗だけどちょっと現実離れしてる」と感じることも増えています。リアルで綺麗であることを求めるならば、やはり大型のイメージセンサーや性能の高いレンズなどを備えたデジタルカメラが必要ですし、そうしたこだわりを持つプロや愛好家などに向けた需要は引き続き残っていくでしょう。

ただそれだけでは市場が広がらず縮小していく一方なのですが、最近の動向を見ると新たな市場拡大の機会が生まれているように感じています。それは、「Vlog」(ブイログ)という言葉を耳にする機会が増えたように、ここ最近、動画投稿サービスの人気が高まってきていることです。

それらサービスに投稿される動画の多くは、もちろんスマートフォンで撮影されたものですが、動画人気の高まりによって画質にこだわり差異化を図るため、あえてデジタルカメラを使う人も増えているのです。以前、筆者はYouTubeのイベントを取材したことがあるのですが、その際、会場にいた多くのYouTuberがスマートフォンではなくデジタルカメラなどを使って動画撮影していたことに驚いた記憶があります。

そうした質の高い映像を求める人達を開拓できれば、市場を伸ばす大きなチャンスにもつながってくるでしょう。実際ソニーは6月19日に、Vlog向けとうたい動画撮影がしやすいことに注力した高級コンパクトデジタルカメラ「VLOGCAM ZV-1」を発売して話題となりました。さらに7月14日には、パナソニックがやはりVlog向けをうたったミラーレス一眼カメラの「LUMIX G100」を8月20日に発売すると発表しており、新たな需要を獲得しようという動きが積極化しつつあるようです。

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▲Vlog需要の高まりを受けソニーが「VLOGCAM ZV-1」を投入するなど、動画に注力し質の高い映像を撮影できるデジタルカメラに力を入れる動きは拡大しつつある

また最近ではコロナ禍の影響で、「Zoom」などを使ったオンライン会議やオンライン飲み会などが増えていますが、その映像の質を高めるため、デジタルカメラをWebカメラとして活用することが注目されました。実際そうした需要が増えたことを受け、いくつかのカメラメーカーがデジタルカメラをWebカメラとして活用できるアプリケーションなどを提供するに至っています。

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▲コロナ禍でビデオ会議の需要が高まり、デジタルカメラをWebカメラとして活用する動きが急拡大。筆者も取材の減少で出番が減ったOM-DをWebカメラに活用している

このように、映像という新しい領域へとデジタルカメラの活用が広がっていることが、カメラメーカーにとってチャンスとなることは確かでしょう。デジタルカメラならではの質を担保しながらも、新しいニーズに対応できる製品やサービスを素早く提供できるかどうかが、デジタルカメラ市場の今後を左右するといえそうです。


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