Engadget
中世の城下町で繰り広げられるお祭りのようなワールドデザイン

ソーシャルVR、メタバースという言葉に注目が集まってきている2021年夏現在、もっともユーザーが多く数多のコミュニティが存在し、時間を問わず活発におしゃべりが繰り広げられているのがVRChatです。

2021年6月28日にBUSINESS WIREで公開されたプレスリリースによれば、数百万人のユーザー、数十万のワールド、1000万以上のユニークなアバターを有する巨大ソーシャルVRプラットフォームとして君臨しています。

Engadget
ワールド内には様々な展示物があります。Engadgetのポスターもあります

現在、VRChat上では様々なオンラインイベントが開催されています。私がアドバイザーとしてお手伝いをしたバーチャル展示会パラレルマーケット(以下パラケット)もその1つ。

9/4(土)から9/12(日)までの9日間、独自設計のワールド上に個人ブース、企業ブース、そしてイベントステージが並べられ、3Dデータのショッピングを楽しんだり、ブース内に置かれているアイテムを手にとって記念写真を撮ったり、ブースのイメージに合わせてロールプレイするなど、様々な楽しみ方ができるイベントです。

もしこの記事を読んでパラケットに興味を抱いた方は、PCのブラウザを用いてVRChatの公式サイトでアカウントを作成。SteamよりVRChatをインストール。VRChatを起動したら「WORLD」→「Search」を選び、「paraket」で検索してお越しください。

Engadget
Engadget
3Dクリエイターが作り上げたブースはお店風のものもあれば、ジオラマを思わせるものもあります

イベントのコンセプトは「みんななかよく」。パラケットは様々なイベントのコミュニティと共存して、お互い楽しく活動して、VRChatというプラットフォームの成長となることを目的としています。

個人ブースを手掛けているアバター・アセットデザイナーさんの作品、スポンサーである企業ブースの訴求アイテム、ステージ上で様々な催しをしてくれるパフォーマーの皆さんと、パラケットに遊びに来てくれた来場者の皆さんとの出会いがいいものとなってほしいという想いから、「みんななかよく」というテーマを定めました。

Engadget
VRChat友達と、広いワールドのなかを散策するのも楽しい時間の過ごし方です

Engadget
メインのイベントスタッフは20人。自分たちでVRイベントを開催したいという気持ちを持って、有志として集まったチームです

日本企業が開催するバーチャル展示会の1つにバーチャルマーケット(Vケット)があります。2020年12月19日から開催されたバーチャルマーケット5では来場者人数がのべ100万人を超えたほどの大規模なバーチャル展示会で、回を重ねるごとに存在感を増し、仮想空間上の大きなお祭りとして、VRメタバースの発展の下支えをしています。

Engadget
ワールド内のフォトジェニックなスポットでの記念写真が集まって盛り上がっているフォトコンテスト

反面、ワールドが広くなり、多くの出展企業のきらびやかなブースを前に、一般クリエイターのブースに光が当たりづらい、という声が一部からでてきました。

そこでパラケットは、有志で進めるイベントとして、まず一般クリエイターの存在を重視することでバーチャル展示会とのシナジーが生まれるのではないかという発想に至りました。

具体的には、一般クリエイターブースや小ぶりな企業ブースが目につきやすいように、ワールドのデザインを控えめかつ、夜のお祭りをイメージした暗めの空間に構築する、などの施策をしています。またスポンサーの数を絞り、このコンセプトに共感いただける企業に参加いただきました。しかし、今回の方法がベストだとは考えていません。

Engadget
スポンサーのShiftall (シフトール)は、最新作のVRフルトラッキングデバイス「HaritoraX」(ハリトラックス)のデモブースを展示。大きなアバターの動きから足や膝、腰の動きの自由度が高いことがわかります
Engadget
HHKBを展示しているPFUのブース。3Dモデル化されたHHKBから、しっとりとした鳴り方のHHKB打鍵音ことHHKB SOUNDが聴こえてきます

Engadget
プラモデル・フィギュアメーカーのコトブキヤブースには、3DCGデータブランド「アバターちゃん」シリーズのアバターが勢揃い
Engadget
実際に安らぎの音が聞こえてくるリラクゼーションガジェット「Sleepion3」の3Dモデルが置いてあるCheeroのブース

バーチャル展示会の未来はどこに向かうでしょうか。

現状、有志で作られるバーチャル展示会においては、クリエイターやパフォーマーが部活動の一環のような形で無償で自分たちのスキルを提供する文化が出来上がっており、クリエイターやパフォーマーの善意と労力で成り立っているといえます。

そのため、これから来るであろうバーチャル空間で生活できる時代の到来を見据えると、経済活動を意識しなくてはなりません。イベント運営側としては収益を得て適切に分配し、スタッフ・クリエイター・パフォーマー・スポンサー、そしてコンテンツを求めてやってくる来場者全員にとって利がある環境を作る必要があります。

しかしスポンサー頼りの方法論でいくと、スポンサーにとってかけた費用と広告効果が見合っているのか、メディア露出を加味しても、判断が難しいところがあります。ところが企業ブースのアピールをもっと増やすべきという選択肢をとると、やはり一般クリエイターのブースに光が当たりづらいという状態が生まれかねません。

日本においては資金決済法をどう解決するかという問題はあれど、ユーザー間・コミュニティ間で金銭をやりとりできる投げ銭システムなどがあれば、入場料という形で収益を作ることができるでしょう。企業ブースと一般ブースの露出バランスを取るためにも、プラットフォーム側の課金システムの実装が待たれます。

写真:東智美、堀正岳